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Googleの歴史的役回り

2004/12/27 08:42
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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Googleについての今年の総括はFortune誌の記事をベースに「Googleをめぐる2004年の総括」を書いたのでもうそれでいいかなと思っていたら、年末にかけて続々とGoogle総括記事がさらに出てきたので、まず簡単にご紹介しておこう。

まだまだ続くGoogleの総括記事

Technology Review誌2005年1月号の「What's Next for Google」(By Charles H. Ferguson)。ウェブ上で9ページにわたるもの。NewsWeek誌12/27-1/3合併号の「Google's Two Revolutions」(By Steven Levy)。そして、TCSの「Is Google God?」あたりを読むとGoogleが今アメリカでどんな議論の対象になっているかがよくわかるだろう。今日はこれらの記事の解説はしないので、興味のある方は原文を当たってください。

「What's Next for Google」を書いたCharles H. Fergusonがあまりに懐かしかったので、ちょっと彼をめぐって話をしようと思う。

PC産業の構造を理論化した論客によるGoogle評

なぜ懐かしかったかと言えば、彼が1990年7月にHarvard Business Reveiw誌に書いた論文「Computers and the Coming of U.S. Keiretsu」を思い出したからである。この論文のサマリーは、

「U.S. and European information technology companies face a choice: cooperate or become design and marketing arms of their Japanese competitors. As digital technology ushers in an era of inexpensive personal systems built from standard, mass-produced components, industries are converging to form a huge information technology sector. Companies able to manufacture components are gaining ground. This trend plays to the strengths of the Japanese; embedded in industrial combines known as keiretsu, they invest in technology and manufacturing, command the supply chain, and coordinate strategy to block foreign competition and penetrate world markets. McKinsey Award Winner.」

となっている。1990年といえばアメリカに日本脅威論がはびこり、日本企業は絶頂期にあった。

当時僕は29歳。まだ駆け出しのコンサルタントで、「いずれは日本の大手エレクトロニクスメーカーからコンサルティングの仕事を受注できたらなぁ」などと夢想するものの、当時の日本企業の「誰からも何も学ぶものはない、帰れ、帰れ」と言わんばかりの姿勢の前で、「自分の将来はどうなるんだろう」と暗澹たる気持ちになることも多かった頃だ。

新たな何かを求めて、当時勤めていたコンサルティング会社のサンフランシスコ事務所に一年間勉強にいかせてもらえることになったのが、1991年末のことだった。

90年代初頭の拠り所となった論考

そのときに自分の勉強の拠り所として考えていたのが、このFergusonの「Computers and the Coming of U.S. Keiretsu」という論文と、その1年後(1991年)に書かれた「The Computerless Computer Company」(by Andrew S. Rappaport and Shmuel Halevl)という論文だった。ちなみに、「The Computerless Computer Company」のサマリーは、

「By the end of the century, the most successful computer companies will be buying computers rather than building them. Defining how computers are used, not how they are built, will create real value. Three new rules will guide the computer industry's strategic transformation: 1) compete on utility, not power; 2) monopolize the true sources of added value; and 3) maximize the sophistication of the value delivered, while minimizing the sophistication of the technology consumed. McKinsey Award Winner.」

となっている。

この2つの論文が共に「McKinsey Award」を取っていたというのは今日この文章を書きながらはじめて知ったのだが、この2つの論文は、今となっては当たり前に思える「ウィンテル支配構造」「PCをはじめとするハードウェアのコモディティ化」といったコンピュータ産業のパラダイムシフトを、米国でもかなり早く取り込んで書かれた論文だったのだ。

サンフランシスコでの1年間は、赤字転落したIBMや苦境に陥りつつあるDECの経営について、そして台頭するMicrosoft、Intel、Apple、Sunといった新勢力の経営について、新勢力台頭の下地となるベンチャー創造システムやシリコンバレーメカニズムについてずっと勉強しながら、日本企業のことを考えていた1年だった。

考えて考え抜いた挙句のことだったが、アメリカの識者の一部にあった「日本の大企業が新時代の主役になり得る」という意見にはどうしても賛同できなかった。日本企業は放置すれば当時のIBM同様、苦境に陥ると思った。そして、サンフランシスコでの1年間の勉強の総まとめとして、帰国してすぐに書いた論文が「ハイテク日本 危機の構図」(中央公論1993年5月号)だった。今から11年半も前のことになる。

IBMのPC事業売却に見る時代の流れ

ところで2004年IT産業は、IBMがPC事業を中国企業に売却するというビッグニュースをもって暮れることとなった。1981年に「IBM PC」が誕生してから23年である。厳密に「パーソナルコンピュータ」という意味での「PC」の誕生はもう少し前、1977年くらいに遡るべきと思うが、そこから数えれば、早いもので27年という歳月が過ぎていったわけだ。

しかし1977年や1981年はおろか1980年代後半でも「PCはおもちゃ、企業では使えない」という意見が大勢を占めていた。ただそれから程なくして、つまり1977年から数えて13-14年目頃の1990年代初頭に、メインフレームのIBMが赤字に転落し、PC時代を体現する企業群の台頭が目覚しくなり、「Computers and the Coming of U.S. Keiretsu」や「The Computerless Computer Company」が書かれた。そして、その頃に「次の10年の産業構造はだいたいこうなるんだろうな」と考えたとおりに90年代は推移していき、結局2004年末にIBMのPC事業売却と相成ったわけだ。

次の時代の流れを示す論考

「IT企業の経営というのは、IT産業における時代の大きな流れを見据えて行われなければならない。そこが他産業の経営と全く違うところだ」というのが僕の持論なのであるが、パラダイムシフトが10-15年に1度起きて産業全体がガタガタに再編されていく中、叡知を集めてどうサバイバルしていくかというのが、実は「IT企業の経営」における醍醐味なのである。

今年から来年にかけて、つまり2004-05年は、1994-95年をインターネット元年とすれば、それから10年が過ぎる年である。

PC登場のインパクトが産業全体に現れた「1977年から数えて13-14年目頃の1990年代初頭」に相当するのは、あと3-4年先くらいではないかと思う。

ではそんな今、「Computers and the Coming of U.S. Keiretsu」や「The Computerless Computer Company」に相当する論考って何だろうと考えてみて、僕が推薦したいのは、Tim O'Reillyが今年6月に書いた「Open Source Paradigm Shift」である。本欄でもずいぶん詳しく彼の考えのエッセンスはご紹介したので、今日は解説しないが、年末年始の休みにじっくり精読されると何かTakeawayがあることと思う。

Googleは90年代初頭のMSやIntelのような役回りの会社

また、僕が本欄でしつこいほどにGoogleのことを書いてきたのはなぜか。それは、Googleという会社が、「1990年代初頭におけるMicrosoftとIntelのような役回りの会社」の現代版に違いないからで、そういう会社が水面下からぐっと我々の目の前に浮上してくるのは、産業全体が大きく動く前触れなのである。

冒頭でご紹介した「What's Next for Google」を、Charles H. Fergusonが久しぶりに書いた(その内容にはむろん賛否両論ある)ということは、Googleの勃興が、自作「Computers and the Coming of U.S. Keiretsu」を書いた頃(1990年)を思い出させたからに違いないと思う。

ちなみにCharles H. Fergusonは、「Computers and the Coming of U.S. Keiretsu」のあとに、1993年に「How Architecture Wins Technology Wars」という論文を書き、それが1994年に「Computer Wars: The Fall of IBM and the Future of Global Technology」という著作に結実した。日本語訳もされたから、読んだ記憶のある読者もいることかと思う。その後、彼は自らが予見した新しい時代の果実を得るべく、Vermeer Technologiesというベンチャーを創業し、2年以内に1億3300万ドルでMicrosoftに売却した。だから、「What's Next for Google」の最後には、こんな但し書きがついている。

「Disclosure: As the result of selling Vermeer Technologies to Microsoft in 1996, Charles Ferguson still holds a substantial quantity of Microsoft stock, a position which is partially but not completely hedged. He has no other financial interest relevant to this article. 」

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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