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Pixarの経営者としてのSteve Jobs

2004/10/26 09:11
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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「Coming to a screen near you on Nov. 5 will be "The Incredibles," a melding of superhero action and PG-rated comedy.」

Pixarの新作「Mr.Incredible」の公開が11月5日に迫っている(日本公開は12月4日)ということで、PixarとSteve Jobsについて、New York Timesに面白い記事が書かれた。

経営者としてはAppleよりもPixarのJobsの方が上

Pixar's Mr. Incredible May Yet Rewrite the Apple Story」である。最近はiPodの成功が大きく取りざたされているけれど、Apple創業者・経営者としてのJobsと、Pixar経営者としてのJobsを比べると、後者の実績のほうが圧倒的に優れているのではないかという視点をこの記事の筆者は持っている。

映画の世界に詳しい方には当たり前のことかもしれないが、Pixarのこれまでの軌跡を簡単に振り返っている部分からご紹介しよう。

「None of this was in view, however, in 1986, when Mr. Jobs acquired the computer graphics division of Lucasfilm for $10 million. The shop had invented a four-processor computer designed for displaying graphics. The technology was the answer, but no one knew what the question was. It could be used for creating very short animated novelties, but anything longer seemed impractical. Mr. Jobs initially thought that the best course was to market the $122,000 machine as an accoutrement for a radiologist's office, providing three-dimensional displays of CAT scans.」

なるほど、JobsとPixarの起源は1986年。18年前に遡る。Lucasfilmのコンピュータグラフィックス部門をJobsが1000万ドルで買い取ったのが始まりだったのだ。当時、この部門は「a four-processor computer designed for displaying graphics」を発明していた。隔世の感がある。

設立当初に今のビジョンはなかった

18年前、この技術ではいまのPixarから想像できるようことは何もできなかったから、Jobsは、この技術を1台10万ドル以上の放射線医向け装置に仕立て上げることを初期には構想していたくらいだった。

「Mr. Jobs had had the good judgment to name John A. Lasseter, formerly of Lucasfilm, as a Pixar co-founder, and to permit him to work unimpeded as the company's creative force. But even five years later, in early 1991, the prospects for the company were anything but bright.」

Jobsは、買収した部門を率いていた(のであろう)John A. Lasseterを共同創業者と位置づけ、自由にさせておいた。これはいまとなっては正しい判断だったということになるけれど、5年経過した1991年時点で、Pixar部門には明るい未来など全く見えていなかった。

Jobsはこの頃、Nextの経営に没頭していて、きっとPixarのことは心の中であんまり大きな位置づけではなかったのではないか。そしてきっとそれがよかったんだろうとも思う。

そして1991年、つまり13年前、PixarとDisneyが出会うあたりから、現在に至る流れが始まる。

「The year 1991 would be important. Mr. Lasseter felt that Pixar was ready to try an hourlong television special and made a pitch to Disney.」

コンピュータの性能が上がり、Pixarの技術もようやく進化して、1時間くらいのテレビ番組くらい作れるようになったので、PixarがDisneyに売り込みに行く。Disneyから映画にしてみないか、と逆提案されて、結局それが1995年、その4年後の「Toy Story」のヒットにつながった。でもここでも4年という長い歳月がかかっている。

ビジネスモデル確立後の急成長

しかし、いったんビジョンが見えたあとのJobsは凄かった、というのがこの記事の筆者の考えだ。

「It was Mr. Jobs who figured out what Pixar would need to realize its vision. It was Mr. Jobs who, in 1997, renegotiated the Disney deal to secure an equal share of profits, excluding distribution costs. And it was Mr. Jobs who has guided Pixar to its current position, in which it no longer needs a partner to help finance future productions.」

1997年には、Disneyとの契約を更改して興行収益を折半するビジネスモデルを確立し、これまでの5作品で、立て続けに大ヒットを出し続けた。

「The run began in 1995 with "Toy Story," the first animated feature generated entirely by computer, a multiple award winner and the highest-grossing movie of that year. From then to now, Pixar has a perfect record. It has released five features to date. All five were critical successes, and all five were commercial blockbusters.」

Pixarのサイトに行くと、これまでの5作品「Toy Story」、「A Bug's Life」、「Toy Story 2」、「Monsters, Inc.」、「Finding NEMO」と並んで、11月5日公開の「The Incredibles」のポスターが並んでいる。まぁ、これだけが製品、つまり成果だというのは、1986年当時Jobsが想像した1台10万ドル以上の医用装置事業とは、何と異なるビジネスであることか。

10年後に芽が出る技術を見守る余裕

1986年に仕込んだ技術が、想像していたのとは全く違うビッグビジネスに10年後に化け、18年後の現在も、それが成長しているわけで、こういう「時間の堆積」の重要さをPixarの成功は教えてくれている。

またその間のJobsという経営者の「緩急」も見事だ。ただ、やいのやいの言っても仕方ない時期は放っておいて、当事者に好きなことをさせておく「余裕」が、その「緩急」につながったのであり、最近はこういう「余裕」が日本企業から失われているような気がしてならない。

「Patience is the watchword at Pixar.」

という大切な文章がこの記事の途中に出てくる。
「patience」(忍耐、我慢、辛抱強さ、根気)こそがPixarの「モットー」であるというこの文章は、

「Patience is the watchword at Pixar. Over time, it has reduced the intervals between feature releases, but it has never cut corners to reach its goal of one film a year.」

Pixarが手抜きせず(DreamWorksとの対比で)に、一本一本の映画を手間をかけて作るという文脈で書かれているが、それはもっと一般化して言えるような気がする。つまり、Jobsが何かを仕込むとき、つまり「緩急」の「緩」の時期に開発者に求めることが「patience」なのだ、ということを意味しているのではないだろうか。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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