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「キャズム」流、エンタープライズ市場の構造変化

2004/10/13 08:45
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umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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先週は色々なコンファレンスが開催されていたようで、英語圏のBlog世界ではそういう報告がやたらに多かった。

今日はその中から、「キャズム」の著者Geoffrey Mooreが行なった講演のスライド(PDF)と、その話を聞いた人(Jeff Nolan)のメモBlogが見つかったので、今日はそれらを題材にしようと思う。この講演はVortexというコンファレンスで、Mooreの講演タイトルは「Orchestrating the Stack」。テーマはエンタープライズ市場の構造変化についてである。

「キャズム」の著者が見たエンタープライズ市場の構造

講演スライドからではなく、Jeff Nolanのメモを引きながら解説していくほうがわかりやすいかな。

「- the stack consists of business layers (services and applications), compute process layer (app platforms), and compute engines (hardware)

- each layer in the stack has gorillas and chimps. Gorillas are dominant vendors with high switching costs, chimps are significant vendors who are powerful but are not dominant vendors

- of the 13 categories, 7 have gorillas while the remainder do not.

- "openings and instabilities" are abundant, meaning that investment opportunities are prolific」

このメモを見ながらPDFファイルを開いてもらうといい。

ここでいうスタックというのはエンタープライズ市場を構成する層のこと。スタックは全部で3つある。1つ目が「business layers (services and applications)」で、これは、「Consulting Services」、「Transaction Applications」、「Analytical Applications」、「Communications & Collaboration Applications」の4つのカテゴリーからなる。2つ目が「compute process layer (app platforms)」で、「Application Server Infrastructure」、「Systems Management Infrastructure」、「Database」、「Operating System」の4つのカテゴリーからなる。3つ目が「compute engines (hardware)」で、「Mainframes」、「Servers」、「Storage」、「Network」、「Microprocessor」の5つのカテゴリーからなる。

Mooreは、エンタープライズ市場をこう分類した上で、持論であるゴリラ・チンパンジー理論をここにあてはめていく。ゴリラとはそのカテゴリーを支配するプレイヤーで、チンパンジーは強くて生き残ってはいるが支配的ではないプレイヤーのことだ。13個のカテゴリーのそれぞれが具体的に何を意味しているかは、PDFの3ページ目、カテゴリー内のゴリラとチンパンジーの表を見るとわかりやすい。13カテゴリーのうち、ゴリラが支配しているのは7カテゴリーで、その7匹のゴリラたちとは、SAP、Microsoft、Oracle、IBM、EMC、Cisco、Intelである。

さて、ここまでが、現在のエンタープライズ市場の構造である。Mooreはこの構造が近々崩れてくるので、その大転換期でどう勝機を見出すべきかをこれから説いていくわけである。

米国テクノロジー産業の精神文化

ちょっと余談になるが、先週の「Amazon、Yahoo!、eBayと楽天は何が違うのか」などで行った楽天・田中さんとの議論について、人気BlogのARTIFACTが「ネット産業の比較論」として取り上げていて、トラックバックをいただいた。

「田中氏が、

《そういう意味では、Googleは、「Apple、SUN、Netscape」という、「テクノロジーで世界を変えたい」「テクノロジーは社会を正しい方向に導く」というような、カリフォルニアカルチャー?の系譜がゆえに、テクノロジー産業だというのが、実は正しいのかもしれない。》

 こう指摘していて、確かに社会を変革してやるぜー!という意志を感じる会社はアメリカに多いよなーと思いました。ヒッピーというか西海岸文化? ただ、この辺りには梅田氏が反応してないのが残念。見解が読みたかったんですが。」

一言だけ今日のテーマとも関連するのでコメントするとすれば、精神的に「カリフォルニア・カルチャー」というか「シリコンバレー・カルチャー」というか、「テクノロジーで世界を変えたい」「テクノロジーは社会を正しい方向に導く」という思いを持っている人たちがこの地に多いことは確かだ。Googleの人たちも間違いなくその系譜に連なる。

ただ、産業がこれだけ複雑に巨大化し、かつ成熟化してくると、そういう精神、カルチャーだけで「世界を変える」ことは難しい。少し大仰な言い方になるけれど、そういう精神やカルチャーのまわりにさまざまな過去の経験やそれに基づく理論めいたものが組み合わせられて、新産業創出のためのひとつの総合的な考え方にまで昇華していることのほうが重要だと思う。それだからこそ、突拍子もない新しい技術や新しいアイデア、希有壮大なビジョンに対して、多くの人が真剣になれるのである。ここにシリコンバレーの独特さがある。

技術による構造変化を利用せよ

再びJeff Nolanのメモに戻るけれど、これから話すことで、そのことを少しは実感していただけるのではないかと思う。

「Service oriented architecture, the next big thing

- current stack represents internet-enabled client/server dependent on large monolithic structures

- current leading technologies push the internet itself into the position of being the application bus

- with the internet as the bus, all of the stack elements become modularized as a shared service

- new stack will not happen overnight and it will privilege specific layers
Strategies for exploiting the new enterprise stack

- disrupter: exploit architectural advantage to exploit niches. Target gorilla status in emerging layers. Leverage Innovator's Dilemma」

SOA(Service oriented architecture)こそがエンタープライズ市場における「the next big thing」なのだ、というのがGeoffrey Mooreの論点である。冒頭で解説した「現在のエンタープライズ市場の構造」は、それぞれのカテゴリーに強力なゴリラやチンパンジーがいて実に強固な構造をしているが、それを「internet-enabled client/server dependent on large monolithic structures」と呼び、その構造が最先端技術によって大きく変化し、新しいスタックが、一夜にしてではないが生まれるのだ、と説いている。そして新しく登場する破壊者は、新しくやってくるゆえの「architectural advantage」を活かしてニッチ市場を獲得し、新しく生まれるレイヤーでのゴリラを目指せ。「Innovator's Dilemma」をレバレッジせよ、というのは、ゴリラやチンパンジーが構造的にできないことをせよ、ということ。それが破壊者の戦略なのだ。

「SOAなんてもう聞き飽きた」などと言うなかれ。もう一度、ゴリラとチンパンジーの表を見たらいい。この表は80年代から90年代にかけて、それ以前の「エンタープライズ市場の構造」(IBM支配垂直統合構造)を崩した破壊者たちによって全く新しいものに書き換えられたのだ、ということを思い出してほしい。

確かに「現在のエンタープライズ市場の構造」は強固だ。ちょっとやそっとのことでは変化しない。でも技術の流れをじっと見つめれば、大構造変化はいつか必ず起こる。いつか起こるものなら起こそうじゃないか。そう信じ続ける力がこの地にはある。

エンタープライズ市場の変化に賭ける人たち

本欄で何度もご紹介しているRoger McNameeもBusinessWeek誌最新号のインタビューに答えて、こんなことを言っている。

「We are between waves of enterprise technology. There are some interesting things percolating, but they are less apparent than the innovations in consumer technology. The next big wave will come in Web services. It will take a few years to get the technology right, though.」

我々は今、エンタープライズ技術の2つの波の間にいる。Googleのようなコンシューマー向けの技術に比べるとわかりにくいけれど、面白いことが起こりつつある。技術が正しいものになるまでまだ数年はかかろうけれど、次の大波はWebサービスだ。

キーワードは「SOA」でも「Web Services」でも「ユーティリティコンピューティング」でも何でもいいのであるが、そういう方向に向けてエンタープライズ市場がぐっと動き出すことを信じて、水面下で本気で勝負を賭けている人たちがかなりたくさんいるということが重要である。

先週金曜日にご紹介したSchwartz新社長のもと再建を賭けるSunもその中の1社だと言えよう。Jeff Nolanのメモでは、Sunについて、

「Sun

- be the SOA disruption accelerator

- evangelize next gen technologies like Java, SunTone and N1 that facilitate SOA

- architecture-focused consulting

- absorb lower cost infrastructures including x86 and Linux」

と記載しているが、「be the SOA disruption accelerator」、なかなかいい戦略名だと思う。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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