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ユニークさゆえに賛否分かれるGoogleの人材戦略

2004/10/06 09:01
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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現代におけるGoogleの人材戦略の新しさ、ユニークさは、80年代におけるMicrosoftの人材戦略と並べて論じられるべきものだと思う。ただ、名著「マイクロソフト・ウェイ」が90年代半ばになって書かれたように、Googleの人材戦略についての相当たくさんある切り口や論点を網羅的に論ずる書は、相当先まで出ることはなかろう。本欄では、このテーマについての断片的な印象や感想を、これからもときどき取り上げてみようと思う。

Googleの人材採用は「テクノロジースマート」偏重

TechDirtが「Is Google Focusing On The Wrong Kinds Of Smarts?」という短いけれど切れ味のいいBlogを書いている。何よりもタイトルがいい。「Wrong kinds of Smarts」。つまり頭がいい(smart)のを集めるというのはわかるけれど、間違った種類の「頭のいい連中」を雇っているんじゃないのか? というのは本質的な問題提起である。

「Google has done an excellent job hiring a lot of very, very smart people, and giving them quite a bit of freedom to come up with new ideas for the company. However, some are beginning to wonder if the company is starting to get too focused on technical smarts, without the corresponding business smarts.」

「ものすごく優秀な連中を集めて自由度を与える」というのがこれまでのGoogleのやり方だった。そこを疑問視する人も出始めている、ということで参照されているのが、「The Google Way – Will Its Next Steps Lead to a Smarter Company? The Jury Is Out.」というコラムである。「The Google Way」というタイトルは、冒頭でご紹介した「マイクロソフト・ウェイ」を意識したものであろう。興味のある方は原文をあたっていただきたいが、Googleはいま過剰に「テクノロジースマート」採用に傾斜し、それもパズル的な数学的難問を解くようなタイプの才能を重用しすぎているのではないかという問題提起だ。

このコラムに出てくる話は、既にCNET Japanでもこんなふうに報じられているし、つい最近では、Google Blogで、「Google Labs Aptitude Test」(GLAT)という21問からなる適性テストが公開されている。

「We're a little obsessive about digging into hard computing problems, and we love finding more people like us.」

自分たちは「hard computing problems」を掘り下げていくことに取り憑かれすぎているのかもしれないけれど、自分たちと同じような人材をもっともっと探しているのだ、とAlan Eustace (VP of engineering and research)は書く。GLATに興味のある人は、このGoogle Blogからリンクをたどってテストの問題を見てください。「フラットシェアリングin Tokyo」というBlogによれば、もともとは

「購読しているアメリカのプログラミング技術誌(DDJ)に、GLAT(Google Labs Aptitude Test)という袋閉じテストがついてきた。検索エンジンの Google が、「この問題を解いて送ってくださいよ」と、読者に挑戦しているようだ。」

1カ月前くらいに雑誌の付録として添付されたものらしい。

自分たちを分りすぎている故の行き過ぎは?

さて、この「The Google Way – Will Its Next Steps Lead to a Smarter Company? The Jury Is Out.」の筆者Eric Jacksonの過去の文章を読んだことはないのだが、

「There are many kinds of smart. Frequent readers of this column know my own bias here – I am convinced that long-term success demands a diversity of strengths.」

彼は自分の過去のコラムも読んでくれていればわかるだろうけれど、自分は「長期的成功は、強さの多様性に依存する」ということを確信しているので、そういうバイアスでGoogleを見ている、という表現をしている。

「Sometimes success requires that a company recognize and return to its core competencies, most often after it has extended itself into too many new areas and has lost touch with who it really is. I don’t think this is the case with Google. More likely it is in the stage when the opposite approach is the more useful – to figure out how to diversify, to break out of the narrow confines of its original existence to find a sustainable identify.」

この部分はとても難しい問題を含んでいる。

月曜日はJobsのBusinessWeek誌でのインタビューを取り上げたが、この文章の前半部分は、JobsがAppleの過去を振り返って語っていた

「自分が戻ってきたとき、Appleは自分たちが何者であるものかをすっかり忘れていたのだ。あの広告キャンペーンは、我々のヒーローというのは誰なのか、我々は何者なのかということを、思い出すためのものだったんだ。企業はときにそういう本質的なことを忘れる。幸いなことに、我々は目覚めた。」

という部分と重なる。筆者は、「Googleにそういう心配はない」、つまりGoogleはいま「自分が何者か」ということについてわかりすぎるほどわかっていて、そこにフォーカスしているから。でも、それが「行き過ぎ」ではないか、と筆者は問うわけだ。Jobsは他人事ながら、きっと猛烈に反論することであろう。

Googleにはビジネスサイドの才能も集まっているはず

このコラムについてのTechDirtのコメントは、バランスが取れている。

「Almost all of the talk about hiring at Google focuses on hiring the smartest engineers around. As the article suggests, Google appears to be acting as if their technology innovation will keep them ahead, and paying less attention to the need for business model innovation. That may or may not be true.」

いま、Googleの採用についての議論は、Googleが「the smartest engineers」に集中していることばかり論じられ、Googleがビジネスモデルイノベーションに関心が薄いように言われる場合があるけれど、それは、正しいかもしれないし、間違っているのかもしれない。

「Certainly Google does get a lot of publicity for its ways of hiring engineers, but that's because there are ways to give tricky engineering/math problems to candidates to see how they perform. It's not so easy to do the same thing with prospective business employees (though, you could ask some basic business model questions, and some still believe that consulting style interview questions are good for showing business sense as well).」

以降の部分。数学的、パズル的難問を解かせるやり方で頭のいいエンジニアを集めるというのは大きな話題になっているけれど、同じようにわかりやすいやり方でビジネスサイドの才能を集めるのは難しいんじゃないのかな。実はエンジニア採用方法ほどの話題性はないやり方ではあるけれど、しっかりとビジネスサイドの才能も集めているんじゃないかなぁ、というのが、TechDirtが「That may or may not be true.」と言う所以だ。人材に関するこういう深いレベルでの裏話は、かなり時間が経ってからでないと表には出てこない。

「While Google may lean a bit heavily towards the engineering side, it still seems like they have plenty of people with strong business sense as well. In fact, many of the decisions they've made so far have suggested Google's done an especially good job on the business side as well. They tend to make business decisions that make better long-term strategic sense, rather than the short-term, desperation moves so many companies make when their business staff can't think more than a single step out.」

TechDirtは、Googleのビジネスセンスを高く評価し、Googleが相当のレベルのビジネス的才能の持ち主を集めているのではないかと推察する。いずれが正しいか。コラムのタイトルの通り、「The Jury Is Out.」(陪審員はまだ外にいて裁判所に戻ってきていない、つまり、結論はまだ出ていない)という状況にある。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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