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IT世界市場は「次の10億人」争奪戦へ

2004/10/01 09:02
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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今日は、Business Week誌の長文記事「Tech's Future」を取り上げよう。テクノロジー市場は、「最初の10億人」から「次の10億人」の争奪戦に入ったというテーマの記事である。

「With affluent markets maturing, tech's next 1 billion customers will be Chinese, Indian, Brazilian, Thai... In reaching them, the industry will be deeply transformed」

日米欧とその他地域のハイエンド需要が「最初の10億人」で、そこの成長率が伸びなくなって成熟化してきた。「次の10億人」つまり、中国、インド、ブラジル、タイ・・・・と続く各国の市場に届くためには、「the industry」は大転換を遂げる必要がある、というわけだが、ここでの「the industry」とは、米国IT産業界のことだ。

米国一国支配構造の転換

30年前を振り返れば、日本という特異な例外を除き、どこの国のコンピュータ産業も、IBMの後ろに国の名前のつけた会社が産業全体を支配するという構造が、当たり前であった。PC革命によって、さすがにIBM支配の構造は崩れたが、それでも米国IT産業が圧倒的に世界をリードする時代が、90年代後半まではずっと続いていた。

「the industry will be deeply transformed」というのは、そういう米国一国支配構造が転換せざるを得ないということを意味している。

「For tech's giants, this is the equivalent of America's basketball stars playing Argentina in the Olympics under international rules.」

とは実に実感がこもった言葉だ。先のオリンピックで、四連覇を目指したアメリカの男子バスケットボールチームは準決勝でアルゼンチンに敗れて金メダルを逸したわけだが、NBA(米国プロリーグ)と国際ルールの違いについての言及も含めて、米国IT産業とバスケットボールチームを併置して、これからの戦略転換の必要性を指摘する。

日本は米国IT企業にとって鬼門

ところで、日本市場というのは、他国の市場に比べて、米国IT企業にとっては鬼門であり続けてきた。古くは、IBMが国産コンピュータメーカー構想に阻まれたところから始まり、Apple Computerは日本語処理の壁もあって、長く日本市場では低迷を続け、どんどん売れるようになったのは、株式公開からようやく10年が経った1990年代に入ってからだった。最近ではeBayが日本市場から撤退したし、Googleだって他国に比べて日本では苦戦していると聞く。その理由について書き出せばきりがなく、それは本稿のテーマではないので割愛するが、この「Tech's Future」という長文記事を読むときに、「なるほど、次の10億人という市場は、どこの国も、これまでの日本市場みたいに、米国企業にとって簡単に参入することができない世界なんだな」というような前提を持って読んでいただくと、わかりやすいのではないかと思う。

「The closest historical precedent for what's happening now is the PC revolution of the late 1970s and early 1980s. Before the PC, computers were the province of technical druids in giant corporations and government offices. Then with Apple Computer Inc. (AAPL )'s Macintosh and IBM's PC, the tech industry underwent a huge market-expanding shift. Computers began to show up on the desktops of everyone from schoolchildren to small-business owners. The result was seismic change. Microsoft, Intel, and Dell became the new champions, while dinosaurs like Digital Equipment lumbered off to the tar pits. Now, with rapid diffusion of technology into emerging economies, the industry is again reaching a gigantic new audience. And a new generation of companies will try to kick their elders in the teeth.」

次の変化をリードするのは

この変化は、PC革命以来の大激震ではないかとこの記事は書く。しかし旧勢力を蹴散らす「a new generation of companies」たちは、PC革命のときはMicrosoft、Intel、Dellといったやはり米国企業だった。でもこれからはどうなるのだろうか。PC-centricな米国的世界観に対して、携帯centricなアジア的世界観の台頭なども、そういう新しい変化の兆しだが、

「The challenges of succeeding in emerging markets are forcing the Western powers to come up with bold new strategies. They're under pressure to innovate like crazy, pioneer new ways of doing business, and outmaneuver their feisty new competitors. "The pattern in the past was to sell the same stuff to the same kind of customers. But that won't work, and it has to change," says C.K. Prahalad, business professor at the University of Michigan Business School and author of The Fortune at the Bottom of the Pyramid, a book about commerce in the developing world. "What's required is a fundamental rethinking of how to design products and make money."」

やはり事の本質は、発展途上国に向けてどんな製品を出し、どんなビジネスモデルが組めるのか、という点に集約されるのかもしれない。Prahalad教授は、「a fundamental rethinking」が必要だという。

この記事で紹介する「a fundamental rethinking」、「bold new strategies」の一例は、冒頭で書かれているHPのインド戦略である。電力事情の悪いインド、しかも顧客は貧しく、高い製品群をキャッシュでいっぺんには買えない。そんな環境において、デジタルカメラとプリンタに加えて、ポータブル太陽電池チャージャーを用意し、それらを売るのではなくレンタルするという新戦略だ。詳しくは原文をどうぞ。記事全体は、ここでご紹介した部分だけでなく、全体に内容豊富である。

日本企業は若さの回復がカギ

この記事を読んで、じゃあ日本企業は、この新興市場(emerging markets)で、大胆な戦略(bold new strategies)を取って、主役に躍り出ることができるんだろうか、と考えた。その可能性はあると思う。でも、すべては日本企業が70年代、80年代初頭の頃の「若さ」を、組織として回復できるかどうかということにかかっているように思う。

新興市場(emerging markets)の可能性に感激して興奮できる20代、30代の若い力に、大胆に権限委譲をして、思い切り自由にやらせたら、米国企業なんかよりももっと素晴らしい知恵と工夫と行動力が出てくるんじゃないかな。

松下電器「V字回復」の本質」(財部誠一著)という本の中に、松下の中村社長が若手を抜擢・権限委譲してある種の成功を収めた背景について語っている部分を思い出した。競争メーカーの若手営業マンが販売店の若い店員を集めて閉店後に勉強会を開いているのに対して、松下の営業マンが対照的だったことを発見し、中村氏は

「松下はベテランの営業マンがやってきて、ヤマギワの社員に「頼むよ」で終わってしまうというわけです。「もう若い人でなければダメだな」という、そのときの思いがいつまでも意識の中から消えませんでした。」(中村氏の言葉を引用)

と語っている。ほんのわずかのスーパーマン的例外を除き、人は年を取れば誰もが楽をしたくなる。経験を積めば新しいことができなくなる。ましてや生活環境の厳しい新興市場(emerging markets)で、日本企業が大胆な戦略(bold new strategies)を取るには、絶対に「若いエネルギー」が必要だよな。そんなことをこの記事を読んで思った。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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