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Googleと楽天・ライブドアを比較することに意味はあるか?

2004/09/29 09:10
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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ふだんは雑誌の電話取材など、時差を理由にたいていは断ってしまうのだが、いくつかの理由が重なって引き受けた。ひとつはテーマが面白かったから。また、ライターの方からのメールがとてもきちんとしたもので、しかも本欄の先週金曜日と今週月曜日の内容を読んでくださった上での依頼だったから。つまり、この人とならしばらく話をしたら、こちらも学ぶものがあるんじゃないかな、と思ったからだった。テーマは、楽天とライブドアのプロ野球参入問題を端に発した日米ネットベンチャー比較論、その他あれこれ、という感じだった。

ふだんあんまり考えたことがないテーマだったので、電話取材を終えたあとも、頭の中が活性化されている。

どうも今日本では、楽天とライブドアのプロ野球参入問題を機に、ネットベンチャーとは何か、というようなことが広く一般の人々にとっての関心事になっているらしい。

日米ネットベンチャーの本質的な違い

最初10分くらい、雑誌記事を構想されているこの日本のライターの方の問題意識を伺った。ここ1〜2カ月の間に、米国ネットベンチャーをみれば、Googleの3兆円公開があったけれど、日本ネットベンチャーの雄・楽天とライブドアは、プロ野球参入で大騒ぎをしている。そんな事象をとらえて、日米ネットベンチャーの本質的な違いを考えてみたい、という問題意識のようであった。ジャーナリストらしい面白い切り口である。

話を伺っての僕の直感は、「りんごとオレンジを比べても仕方ないんじゃないかな」というものだった。りんごとオレンジの間に優劣とか序列はない。ただ違う種類のものだということだ。何か異質なものを同じ土俵で取り上げて比較した議論になっているときに、英語ではよく「りんごとオレンジ」みたいな表現を使うことがある。

じゃあ何が違うんだろう。
電話をしながら、あれこれと考えてみて、即興ながらこんな答えをした。

日本には起業家精神がなくてアメリカはあるとか、日本のネットベンチャーはたいしたことがなくてアメリカは凄いとか、そういう単純な構図で議論をしても仕方ないと僕はいつも思っている。

産業として連なる系譜が違う

たとえば、戦後の日本で、最も起業家精神溢れる企業群を輩出したセクターは、生活密着型サービス産業の系譜だと思う。エスタブリッシュメントは重厚長大の製造業を担い、生活密着型サービス産業は群雄割拠の世界となった。ダイエー、イトーヨーカ堂、セブンイレブン、ローソン、リクルート、ぴあ、コジマ、マツキヨ、ユニクロ、TSUTAYA・・・・。外食産業全国チェーンや、マクドナルド、ケンタッキーからスターバックスにいたる流れ。これらは皆、狭義のベンチャーとはいえないかもしれないが、皆、起業家精神溢れる経営者がほとんどゼロから築きあげたものだ。楽天やライブドアは、戦後日本の「お家芸」とも言うべき、人材の厚みや経験の蓄積のある「生活密着型サービス産業の系譜」の上に連ねるべき企業なんじゃないだろうか。

一方、Googleというのは、間違いなく、IBM、DEC、Intel、Microsoft、Apple、Sunといった、IT産業(昔はコンピュータ産業と言った)にパラダイムシフトを引き起こす「10年に1度」現れる「特別な企業」だ。こういうIT産業における破壊的イノベータは、これまでアメリカからしか現れていなくて、最も新しいGoogleも、ごく自然にアメリカから生まれただけのことである。

AmazonやYahoo!といった先発の米ネット列強は、Googleの登場によって、ネット産業というのはひょっとしたらテクノロジー事業なのかもしれない、という仮説を検証しなくちゃいけないことに気づいた。それがYST(Yahoo search technology)やA9につながり、シリコンバレーはサーチ戦争のメッカになりつつある。でも、楽天の三木谷さんやライブドアの堀江さんは、どうもテクノロジーへの関心が薄いように思える。これはどちらがいいとか悪いとか、そういう短絡的な問題ではなく、そもそも企業の成り立ち、系譜が違うのではないかと、問題設定をしなおすべきなんじゃないだろうか。

いやむしろ、消費者を主対象とするネット産業というのは、そもそもが「生活密着型サービス産業」と把握するほうが普通で、アメリカの、しかもGoogleだけがそれを「テクノロジー産業」だととらえなおした突然変異なのだ、と考えるほうがわかりやすいのかもしれない。

野球との関係で言えば、楽天とライブドアを「生活密着型サービス産業」の系譜に最も新しく登場した元気のいい企業だととらえれば、プロ野球参入はごく自然な経営判断だと思える。何せ、新聞社(読売、中日)、電鉄会社(阪神)、食品・小売・流通(ダイエー、日本ハム、ヤクルト)といった現在のプロ野球オーナー企業と同じ系譜の上に乗っているのだから。

なぜ日本からGoogleが出ないのか

「なぜ日本からGoogleが出ないのか」という問いは思考実験として意味がなくもない。しかしその問いは、楽天やライブドアに向けて発するべきものではなく、むしろ人材の厚みや技術の蓄積から考えれば、日立、東芝、富士通、NEC、ソニー、松下といった日本のIT産業、コンシューマー・エレクトロニクス産業を牽引してきた大企業に向けて、「半導体に飛びついて大変な思いをして電子立国・日本を達成し、PCにも飛びつき巨大なPC関連産業を日本にもたらしたのに、なぜインターネットには飛びつけなかったのか?」と問うべきで、そのほうが、より本質的な議論ができるのではないか。

まぁ、こんな話をした。続きはまたいずれ、考えがもう少し煮詰まってから、ということにしたい。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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