お使いのブラウザは最新版ではありません。最新のブラウザでご覧ください。

CNET Japan ブログ

データの重要性を指摘するO'Reilly

2004/09/22 09:06
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

プロフィール

umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
ブログ管理

最近のエントリー

今日も引き続き、Tim O'ReillyのOpen Source Conventionでのキーノートスピーチを取り上げる。今日は5ページ目から。講演のタイトルに「Radar」とあるように、ここからはTim O'Reillyのレーダーが感知した重要な事象が次々に語られていく。最初が「データの重要性」という問題。

オープンソースでもデータはオープンではない

「First of all, in this new world we're moving into, free and open source software doesn't guarantee freedom because the fact is that applications and the success of applications and the success of platforms depends on network effects and there are various opportunities for data lock-in that are much bigger than the opportunities for lock-in via APIs. People can open up their APIs, they can open up their source code and they can still have everybody locked in because of the increasing returns that come from network effects.」

利用者のネットワーク効果によるロックインにデータ・ロックインを加えることで、アプリケーションやプラットフォームの成功が規定される時代がやってくるという認識である。だからAPIもソースコードもオープンでいい。つまり、我々が向かっている新しい世界は、「free and open source software doesn't guarantee freedom」。フリーソフト、オープンソースソフトがフリーダム(自由)を保証するわけではないと、Tim O'Reillyは警鐘を鳴らす。このあたりの議論は、5ページから7ページを参照。データを独占するGmailの潜在的脅威についての言及もある。

続いて、「オープンソース・ソフト世界のデル・モデル」の可能性に話題が移る。

「I think one of the lessons for Linux vendors like Redhat is that we have to think beyond Linux because it's the whole stack and right now we actually have a bunch of component suppliers now where we've got Linux, we have got Apache, we've got MySQL, we've got PHP; we have vendors associated with each one and there really is a big question is who is going to be the Dell if you like of open source who is going to integrate all that stuff and make it works well together, because that’s going to be critical for getting to the “corporate nirvana” that I think a lot of open source people think we’re headed for where Linux and the like are really a contender in the corporate world.」

これについては、問題提起のみということで、言及は、ここに引用したこの部分だけである。オープンソースが企業IT活用のメジャーストリームになっていくとすれば、PC産業でデル・モデルが生まれたのと同様なことがあり得る、というのがTimの持論だ。本欄でも以前何回か、Progenyという会社をご紹介して、その議論をしたことがあるが、Timが注目するのはこういうアプローチの延長線上にあるオープンソース世界での新しいサービス・イノベーションである。彼が利用しているスライド(PDF) をあわせて参照すると、Timがなぜ「オープンソース・ソフト世界のデル・モデル」の可能性に注目しているかがよくわかる。全部で56枚あるスライドの9ページ目。デスクトップ・アプリケーション時代の付加価値のとり方と、インターネット・アプリケーション時代の付加価値の取り方が対比されて示されている。前者における「System Assembled from Standardized Commodity Components」という層(これはPC周辺のさまざまなコモディティ・コンポーネントのこと)と、後者における「Integration of Commodity Components」(これがLinuxだったり、ApacheやMySQLだったりのオープンソースのこと)が、彼のイメージの中でちょうど対になっているのがわかる。だからデル・モデルなのである。

マイクロソフトのSNSの可能性

続いて、「ソーシャルソフトウェア」。SNS(Social Networking Service)という言い方をしていないのは、意識してのことである。彼のSNSへの認識は「この概念はまだおそろしく未成熟な段階にあるけれど、大きな可能性を秘めている」ということだろう。だからFriendstarやOrkutをはじめとする第一世代のSNSについてはそこそこに、話題はMicrosoftの研究プロジェクト・Wallopに転ずる。

「There's a very interesting Microsoft research project called Wallop -- I wonder why they call it that -- which actually is plugged into Outlook and lets them visualize what the real social network looks like. So here are two different visualizations, that is one and here's another. This one is a really cool one. They have this little interface where you can pick an axis and say, “Well, who do I communicate with around this kind of topic?” So it organizes people.」

スライド(PDF)の23-24ページあたりを見ると、Wallopのイメージを見ることができる。

「So my point is there's lot of people now hacking at this social software idea. How are we going to build tools for creating networks and for managing our contacts? What it could end up with is that either Microsoft takes Wallop and adds it to Outlook and that becomes very powerful source of lock-in because then of course they're owning all this data about the social network and in order to access it you've got to use their tools, or it could go the direction of something like Gmail. Suppose Google put Gmail and Orkut together. All of sudden it becomes a very powerful tool but the data is all owned by someone else.」

ここが、前述したデータ・ロックインの脅威とソーシャルネットワーキングの関係が、MicrosoftやGoogleの潜在的戦略と重ねて言及されている部分である。今はたくさんの人が「ソーシャルソフトウェア」のアイデアをハッキングしている状況にある。それは、我々のコンタクトのネットワークを作り管理していくツールをどう構築するかという問題だ。MicrosoftがOutlookに「ソーシャルソフトウェア」機能を統合していく方向と、GoogleがGmailとOrkutを統合していく方向が示唆される。

P2Pでソーシャルソフトウェアの再構築を

そしてギークたちが集まっている会場に向かって、

「So the alternative is a challenge that I want to put out to the open source community, which is we have to Napsterize the address book and the calendar. We have figure out how to make these things peer-to-peer applications so that we own the data; we own our data about our social network; we own our data about who we communicate with and why, but we're able to do things like query our friends for people that we might want reach, or people that we might want to know, or how do we get those contacts. We have to rethink the address book so that we say, “Wait this is a private contact; this is public contact; this is one that I share with this group.”」

と檄を飛ばす。MicrosoftやGoogleにデータを全部所有されてしまう世界ではなくて、オープンソース・コミュニティが、アドレスブックとカレンダーを「Napsterize」(ナップスター化)してしまい、我々サイドがデータを所有できる世界を、P2Pで実現してくれよ、と。どのくらい成算があって語りかけているのかは知らないが、こういう刺激を会場に向けて発するわけである。

「So we need to rethink E-mail and IM as social software. We need to look as what were people try to accomplish with Friendster and say, “Hey, can we built that in a way that’s more interesting?”」

eメールやIMも「ソーシャルソフトウェア」ととらえなおして、もっと面白いものをどう作れるか考えるべきだと、Timは主張する。

結局、Googleという会社はそういう諸々を統合することをずっと考えてきたのだろうな、とあとになって気づくわけであるが、eメール、IMといった旧来からのコミュニケーション・アプリケーションに、ソーシャルネットワーキング(SNS)、サーチ、Blog、RSSといった新事象を融合させてどんな新しい価値を生みだせるのか、というあたりが、いま最もホットなバトルフィールドになりつつある。

さて、今ここまでの解説で、テープ起こしされた記録の8ページ目にさしかかっている。講演時間では始まってからわずか25分くらいのところである。質の高い講演内容や論考内容をきちんと消化しようとするとけっこう時間がかかる、ということを実感していただけたであろうか。

ここから先には、iTunesとiPodの歴史的意味から始まるAppleのイノベーションについての言及がある。それからアフィリエートの話、・・・・、と彼のレーダーに引っかかった重要事象の話が続いていく。ここから先の話題については、もし読んで感想をBlogなどに書かれる読者がいれば、ぜひトラックバックを打ってください。

また取り上げることもあるかもしれないが、とりあえず、Tim O'ReillyのOpen Source Conventionでのキーノートスピーチについてはここまでとする。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
運営事務局に問題を報告

最新ブログエントリー