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Amazonのサーチサイトが狙うものは?

2004/09/16 09:16
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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Amazonのサーチサイト「A9」が今週火曜日夜、正式にローンチされた。A9はAlgorithmのこと。Aで始まる9文字の言葉というのがA9の意味だ。

「A9」については渡辺聡さんが「情報化社会の航海図」で今日から詳述し始めているので、ここでは、業界や技術についての「大きな枠組み」にあたる部分だけを、今週書かれた記事から抽出して、簡単な感想を付すことにしよう。

A9についての記事では、渡辺さんも取り上げているBusiness 2.0誌にJohn Battelleが書いた 「Watch Out Google! Amazon Gets Search」と、New York TimesにJohn Markoffが書いた「Amazon to Take Searches on Web to a New Depth」。2人のJohnが書いた記事が参考になる。両方とも、今のところは無償で読むことができる。

A9の本質はサーチのUI

A9の本質というのは何なのだろう。

John Battelleは、

「Search, as we’ve come to know it, has for years been stuck in what many call the "C Prompt" phase. Like DOS before the graphical user interface, search’s user interface is pretty much command driven: you punch in a query, you get a list of results. Many companies have attempted to address this shortcoming (Groxis, Vivisimo, for example), but they lack the key element necessary to truly make an interface breakthrough in search.」

記事の冒頭でこう書いている。サーチのユーザ・インタフェース(UI)は、OSの進化のアナロジーで考えれば、まだまだDOS段階にあるが、まだブレークスルーが生まれるに至っていない。そんな視点が提示されている。

「That key element, I believe, is your clickstream, or what A9 calls your "history." By tracking not only what searches you do, but also what sites you visit, A9 builds a real time profile of your interests and past web use. It then folds that profile into both your search results and the search interface itself, making for what can become, with regular use, an entirely new approach to searching. 」

サーチには「Recovery」、つまり「ああ、どこかで見たことあるな」というものを探すことと、「Discovery」、全く新しく発見することに大別できると、Batteleは言う。そして前者については「History」という機能が、後者については、

「But new to this version of the site is a feature A9 calls "Discover," which finds sites you might be interested in based on your clickstream and -- here’s the neat part -- the clickstream of others.」

という「Discover」という機能が用意される。こんな諸々の機能をこれから充実させていくだろうA9というのは、今のところ、Google(+その他のサーチ機能)の上にかぶせたユーザ・インタフェースだと考えるのがわかりやすい。サーチ技術自身がこれからもし仮にコモディティ化していっても、ユーザに近いところでのイノベーションは確実に残ると、Amazonは考えているに違いない。

Amazonのサーチに対する野心

「What Manber and company have built with A9 is more of a web information management interface, with search as its principle navigational tool. 」

そして、この文章から思い出すのは、インターネットの初期は、ポータルが主役でサーチは脇役だというのが業界の常識だったということだ。そしてGoogleの登場とともにサーチが主役に躍り出た。Amazonは再びサーチを脇役に置くだけの、Batteleが言うところの「a web information management interface」を実現することができるのだろうか。いやいや、そういう道を標榜するのはただの隠れ蓑に過ぎず、実はもっともっとサーチ自身へのAmazonの野心が大きいのだ、と考えることもできる。

「All this begs a larger question: What is Amazon’s long term plan for A9? What’s the business model? Sure, for now A9 is playing the happy Google affiliate, running Google’s paid search links that appear on the same page as the web results. But that certainly is not the end game. Were A9 to scale, far larger opportunities present themselves.」

A9自身がもし大きく成功すれば、Amazonの既存事業強化のためのサーチという位置づけと、サーチという新事業という位置づけの間にコンフリクトが起こってくるものと思われる。前者であれば、Googleとの提携関係を維持してGoogleと棲み分けられるが、後者となると競合関係に入る。

John Markoffは、

「"They've downplayed the idea that they're going into search," said Danny Sullivan, editor of Search Engine Watch, an industry Web site. "They say, 'we're not competing.' But at the same time you have to wonder why they're doing it, and it's likely they're doing it because they see some potential in search."」

というサーチエンジン評論家のコメントを引用し、Amazonのサーチへの野心がかなり大きいことを示唆する。

スタートアップとしてのA9の可能性

最後に、これから注目すべきなのは、A9という組織がどう進化していくかということかもしれない。

いまや、Googleも、Yahoo Search Technology(YST)も、A9も、皆、シリコンバレーに集結した。シリコンバレーはサーチ戦争のメッカへと変貌を遂げようとしている。確かにサーチはComputer Scienceにおける本筋のテーマだから、シリコンバレーが有する人材や経験の層の厚みから考えて、自然な流れと言える。

GoogleがIPOを終えた今、3社の「人を惹きつける」という意味での条件は同じになった。YahooもAmazonもGoogleも公開企業だから、成功可能性の高いスタートアップほどのインセンティブはもう提示できない。ただA9は、John Markoffが記事の中で「A9.com, a start-up owned by Amazon」と表現するように、「Amazonによって(今のところ)所有されているスタートアップ」である。Amazonはわざわざ別会社の形でシリコンバレーにA9を作ったので、これからA9をどう大きくしていくのかについて、理論的には、資本政策も含めて大きな自由度がある。

Amazonのサーチへの野心がかなり大きいものだとすれば、A9の今後の組織的進化がどうなるのかがカギを握るかもしれない。やはりシリコンバレーという地の遺伝子として、スタートアップの形でハイリスク・ハイリターンの枠組みを用意して、エスタブリッシュメントたる公開企業に戦いを挑むという構造を作ったときに、ベスト・アンド・ブライテストを集めることができるからだ。そしてこのことは、Googleが「最高の人材」を組織にひきとめ続けることができるか(これはYahooのYSTにも同じことが言える)、大企業になってしまったAmazonがそれだけ思い切った組織的な賭けに出られるか、ということとセットで考えるべきことだろう。

公開後しばらくして、そこそこのexitを果たしたGoogleの連中が新しい挑戦を求めてGoogleを離れだしたときに、サーチをめぐるさらに面白いイノベーション創出競争が活気づくだろう。そのときに、もしもA9が「Amazonによって所有されているスタートアップ」から「本当のスタートアップ」に変身していれば、そういう人材の「受け皿」になることができる。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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