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世界中どこにいってもやっていけるたくましさ

2004/09/14 09:39
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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第2回JTPAシリコンバレーツアーも無事完了。20名の参加者の皆さん(すべて20代。12名が学生、8名が社会人)にとって、得るものも大きかったことと思う。いくつかのセッションでのスピーカーと参加者との真摯な議論を聞いて、僕自身、久しぶりに奮い立つような気分を抱いたのだから。

中でも感動したのは、「アメリカに留学し、卒業後、同世代のアメリカ人たちや留学生たちと同じ条件で、いわばアメリカビジネス社会の下積みから、一歩一歩キャリアを構築する」という経験を約10年、20代から30代にかけて積んだ人たちの凄みであった。彼らが身体から発する何かとは、一言でいえば、「世界中どこにいっても、身一つ、体一つ、頭一つでやっていけるだろう、たくましさ、自信」である。さまざまな事情が許せば、僕も20代から30代にかけてそんな10年を送ってみたかったな。自分にはない輝きを感じて、とても羨ましかった。

20代から30代にかけてアメリカでキャリアを作ってきた人たち

1人は、大手ソフトウェア企業にソフトウェアエンジニアとして勤める松原晶子さん。もう1人は、DPRという建設会社に勤める戸谷茂山(もざん)さん。以前本欄でもご紹介したPostiniで働く小村尚子さんからも同じ雰囲気を感じるなぁ、と思った。

ところで、松原さんと戸谷さんは、それぞれJTPAサイトに2つずつコラムを寄稿している。

松原さんについては、「私の一日」というコラムと、「シリコンバレー テレコミュート(遠距離通勤)事情」というコラムをお読みいただければ、彼女の日常がよくわかるかと思う。松原さんは、ウィスコンシン大学の修士課程(言語学)を修了したあと、シリコンバレーに移り、1998年に大手ソフトウェア企業に入社し、以来、ソフトウェア・エンジニアとして活躍されて、現在に至っている。

戸谷さんについては、「こんなに違うアメリカの大学と日本の大学」というコラムと、「私が米国の建設会社で働いている長い経緯」というコラムをお読みいただければと思う。戸谷さんは、筑波大学芸術学科建築デザイン学部を卒業し、何年もの実務経験を日本で積んだ後で、アメリカを知るには学部から入りなおすべきだと考えて、既に20代半ばだったのに大学院ではなく学部から10代の学生たちに混じって勉強しなおして、卒業後、建設マネジメントの仕事をしている。

成功と失敗の表現に関する日米の文化的違い

松原さんは、セミナーの中で、司会者の質問「アメリカ企業に勤めて、最初に感じた、最初に困った、大きなハードルとは何だったか」という質問に答えて、

「最初に感じたハードルでもあり、今でも相変わらずその難しさを感じていることは、日本との文化的な違い。それは2つあって、1つは、自分の功績をどうアピールするかという問題で、もう1つは、間違いをどう認めたらいいのかという問題に尽きる」

と語った。日本人は謙虚を美徳とするから、自分が100やったとしても、自分の貢献を70か80しかアピールしない。自らが言わずとも周りが見ていてくれるだろう、というような期待を抱きがちだ。しかしアメリカ人たちは、小さな貢献でも、針小棒大に、自分の貢献だと主張する人たちだ。また何かミスを犯したとき、日本人はまず謝ることで和解に持ち込もうとしがちだが、アメリカでは誰も謝らない。ミスを認めない。「ミスを認めたらそれで終わりだから、絶対にミスを犯しても、それを認めてはいかん」と子供の頃から叩き込まれている連中(ハイテク移民たちに多い)も多い。

前者に関しては、自分の功績については徹底的に自己主張して自らを認知させていく「プロとしての生き方」を、そして後者に関しては、「誰も謝らない、ミスを認めない」環境下でも、「誰かのミスの証拠を集めて、徹底的にその人を追い詰めてはいけない。自然に落ち着くところに落ち着くのだから」というある種の寛容を、彼女はさまざまな経験から学んだのだという。

僕の要約ではなかなか伝わるべくもないのだけれど、彼女のこのあたりの話には迫力があった。

また、自己主張が強く謝らない人たちの、ともすればとんでもない環境とも見えるアメリカ企業社会に、離れがたい魅力を感じる理由は、

「特に女性にとって、キャリアに関してこんな居心地のいいところはない。アメリカほどキャリアに平等なところはない。性別、年齢、人種に関わらず、問われるのは実力だけ。実力さえあれば、昇進も速いし、成功できるチャンスに満ち溢れている。」

「日本人は、特に年齢のことを意識しすぎる。何歳までに何をしなければとか、何歳になったからもうこれはできないと考えすぎる。いつになっても何でもできると考える自由さを持つべき。皆さん、間違っても、年を取れば取るほど可能性が狭まっていくというふうには考えないでほしい。年齢による制限を絶対に考えるべきではない」

と彼女は強調した。

ITに関係なく新しいことを求めるシリコンバレー

戸谷さんは、「アメリカに留学した頃は、ちょっと勉強してすぐに日本に帰るつもりでいたが、努力しただけ結果が返ってくる面白さゆえに、アメリカに居ついてしまうことになった」とセミナーの冒頭で話した。

彼がいまどんな仕事をしているかは、「私が米国の建設会社で働いている長い経緯」に詳しいが、日本人であるということを削ぎ落としたところで、日本市場も日本での人脈も日本語とも関係なく、彼は建設マネジメントの仕事を、米国で最も斬新な建設会社として知られるDPR社でしている。

彼は、建設業界という世界的に保守的な業界の中で、いつも新しい建設マネジメントのやり方を模索している人だ。シリコンバレーに来る前に、ワシントン州やテキサスでも仕事をしてきた経験から、彼なりのシリコンバレー観をこう語った。

「「新しい、誰もやったことのないこと」を提案しても、やろうやろうと言う顧客がたくさんいたり、その新しいやり方を大学で話してくれないかという話にすぐになったりする。こういうことはワシントンやテキサスのような保守的な環境では絶対になかった。あり得ない。保守的で閉鎖的な環境では変化の必要などないからだ。でも開放系であるこの地は、いつも「新しい何か」を探しているレーダーが地域全体に張り巡らされているのか、そこに察知されると、どこからともなく話がまとまるべくしてまとまって、新しいことでも、じゃあやってみろ、という話にすぐになる。リスクも負わなければいけないけれど、挑戦のやり甲斐がある。ITにもバイオにも関係のない建築の世界でもそうであることが、自分のような門外漢でもシリコンバレーに居ついてしまった理由だ」

これまた要約では伝えきれないのだが、「シリコンバレーとは何ぞや」というようなことを頭で考えているだけでは出てこない経験に根ざした言葉だ。「シリコンバレーに張り巡らされている新しい何かを察知するレーダー」の存在は、「新しい何か」を自ら提案して行動した経験を持つ人々にしか実感を伴っては見えてこない。ベンチャーとか大企業とか、そういう概念的な区別とは無縁の、イノベーションを育む環境についての、これは極めて重要な指摘である。

自分が学生ならアメリカでのキャリアを考える

3日間のツアーの最後の夕方は、JTPAボードメンバーの金島秀人氏邸でレセプション。ボランティアでツアー準備などに参加してくれたスタンフォード大学博士課程の樋口聖君(彼のコラム「私の一日」参照)に、留学するにはいくらくらいカネがかかるのかという話を聞いた。彼のように、日本で学部を卒業した直後に、修士課程からアメリカの大学に来る場合、最初の1年半分だけは学費・生活費を用意してこなければならないが、その後はRA(Research Assistant)やTA(Teaching Assistant)をしながら勉強すれば、生活はまわっていく。たとえ一年半分といえどもアメリカの大学の学費は高い。でも投資の価値はあると思う。

日本も昔に比べてずいぶん豊かになったのだから、若いうちにかじれる「親のスネ」があるなら、思い切りかじったらいいと思う。10年から15年できちんと利息をつけて返す約束をして、親や親戚から700-800万円投資してもらえれば(学校を選べばもっと安くできるし、奨学金の算段をする手だってある)、カネの問題は解決がつく。あとは意志の問題だけだ。

「アメリカに留学し、卒業後、同世代のアメリカ人たちや留学生たちと同じ条件で、いわばアメリカビジネス社会の下積みから一歩一歩キャリアを構築する」という経験を10年積んで、「世界中どこにいっても、身一つ、体一つ、頭一つでやっていけるだろう、たくましさ、自信」を身につけること。僕がいま大学生、大学院生だったら、そんな道を歩いてみたいと思う。15年後くらいに人生の勝負所を迎えるとき、こうしたたくましさが身についてさえいれば、その時点での日本の国力(為替レート、日本の安全保障上の環境、日本経済の状況、日本企業の実力、日本での雇用機会、日本への世界からの関心などなど)に依存しなくても、自分の人生を自由に切り拓いていけるからだ。興味を持った人は、今日リンクを張ったいくつかのコラムを読んでみてください。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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