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米ホームエンタテインメント市場のトレンドセッター

2004/09/10 10:05
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umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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車の中でラジオを聞いていたら、「詳しいことは明らかにされていないけれど、TiVoとNetflixが提携するらしい」という話が耳に飛び込んできた。東京でラジオを聞いていても、IT産業やネット産業の新興企業の提携なんてきっと報道されることはないのだろうけれど、シリコンバレーローカルのニュース局にとっては、けっこう大きなニュースなのだ。

米ホームエンタテインメント市場で唯一面白い2社が提携

ニュースを聞いて、この提携のこれからの道のりは険しそうだが、言われてみれば当然の、筋のいい大型提携だなと思った。TiVoとNetflixについては本欄でも何度かご紹介してきたわけだが、逆に言えば、Home Entertainment Service分野で「面白いな」と思える企業が、この2社くらいしかなかったから、というのも事実だったのだ。

サンノゼ・マーキュリー・ニュース(AP発)「Netflix, TiVo reported huddling」の冒頭

「Home entertainment trendsetters Netflix Inc. and TiVo Inc. hope to link up on a service that will use high-speed Internet connections to pipe DVD-quality movies into the homes of their mutual subscribers. The recently drooping stocks of both companies perked up Tuesday as investors embraced the prospect of an alliance between two pioneers that have changed the way millions of households rent DVDs and watch television.」

で、この2社を称して「Home entertainment trendsetters」(トレンドセッター)と称し、何百万もの家庭がテレビを見る方法、DVDを借りる方法を変えた「two pioneers」(パイオニア)と称している。

米国の巨大な家庭向けテレビ・映画市場

娯楽に溢れる東京のような大都市と違って、大都市比率が小さく、全体で見れば「ど田舎」ばかりのアメリカで、娯楽に占めるテレビ、ビデオ・DVDレンタル、映画の占める率はものすごく大きい。近所にある娯楽施設はせいぜいショッピングモールと映画館だけとなれば、勢い、住宅への投資がカネの使い道の大きな部分を占め、ホームビデオシステムを充実させる人たちも多く、テレビや映画に費やす時間が余暇に占める割合は大きい。

「Los Gatos-based Netflix has attracted 2.1 million subscribers to its $21.99-per-month service, which mails up to three DVDs at a time after customers place their orders on the Internet. The service, which draws upon Netflix's library of 25,000 DVD titles, doesn't charge late rental fees -- a concept that has forced video rental giant Blockbuster Entertainment to change its ways.

Alviso-based TiVo makes digital video recorders that let viewers easily record TV shows onto hard disks, skip commercials and pause live broadcasts. About 1.9 million subscribers pay a $12.95 monthly fee for TiVo's service, which has inspired a variety of clones.」

NetflixとTivoのサービスとその対価は、ここに要約されている通りである。それぞれ200万人前後のHome Entertainment分野のアーリーアダプターを顧客として持つに至り、それまでに存在しなかった新しいサービスを提供することで成長してきた。

この提携話は、ニューズウィーク誌のスクープで、まだ2社とも正式コメントは控えている段階だが、目指すは「映画のダウンロードサービス」である。ダウンロードにはまだまだ時間がかかるから、「映画オンデマンド」とはまだ言いにくいのではないかと思う。ただ、Tivoユーザからすれば、「テレビ局が提供する映画を録画しておいて好きな時間に鑑賞する」ことの自然な延長線上に「見たい映画を少し時間はかかってもダウンロードさせておいて、見たいときに見られる」というサービスをイメージできるのだろうし、Neflixユーザからすれば、月額定額のDVDレンタル郵送サービスの延長線上に、「ダウンロードに少しは時間がかかっても、郵送を待たなくてもいいサービス」がイメージできるわけだ。

市場で評価されるイノベーションの実績

「The investor enthusiasm largely reflects the two companies' track record for innovation, said Sean Badding, a digital entertainment analyst for The Carmel Group.

``There haven't been too many companies that have come up with more disruptive technologies than Netflix and TiVo during the last five years,'' Badding said. ``They have become the best-of-breed services in their respective markets.''」

この提携話に市場は好意的に反応したが、それはこの2社の「track record for innovation」(イノベーションのトラックレコード)ゆえだと、アナリストは述べている。過去5年の間に「companies that have come up with more disruptive technologies」(もっと破壊的な技術を引っ提げて登場した会社)はたくさんあったけれど、この2社だけが、Home Entertainmentを求める顧客の期待レベルにぴったり合わせて心を掴むサービスを、これまで提供してきた。そのことをトラックレコードと評価しているわけだ。

CNETの記事「Picture imperfect for Netflix, TiVo」は提携の難しさ(ハリウッドとの関係など)をもっと詳しく報じているし、もともとこの提携をスクープしたニューズウィーク記事「I Want a Movie! Now!」も無償で読めるので、このニュースに興味を持った方はあわせてこれらの原文もお読みください。

ブロードバンドのキラーコンテンツが待たれる米国

少しマクロな意味合いを追記するとすれば、日本や韓国などに比べて勢いが止まっている米国ブロードバンド普及がこれからどういう道筋をたどるのか、その道筋の中で最も重要な「ブロードバンドの米国におけるキラーアプリケーションは何なのか」という文脈に、この提携話を置くことが重要である。

もう10年も前から言われ続けていて実現されない「ビデオ・オンデマンド」「映画オンデマンド」こそがやっぱりブロードバンドのキラーアプリなのだろうという期待が、米国では相変わらず根強いということなのである。それは冒頭で触れた米国の娯楽事情における特殊性ゆえのものと言えると思う。

ご承知のように、バブル崩壊からもう既に4年以上が経過するというのに、米国ブロードバンド普及は実にゆったりとしたペースでしか進展していない。それはバブル崩壊後の米国が、「インフラを先に敷けば、アプリケーションは後からついてくる」という発想では産業全体を動かせない国になってしまっているということだ。情報スーパーハイウェイ構想からインターネットバブルを引き起こした90年代後半までのようには、また、現在の日本や韓国のようにはいかない状態にあるということ。よって、事業開発の王道とも言うべきキラーアプリケーション待望論、キラーアプリケーション創出への期待が、日本以上に強いということなのである。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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