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企業から個人へとシフトするITトレンドの決定力

2004/09/03 09:56
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umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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[ゲスト] 村山尚武 Naotake Murayama
8月26日(木)〜9月3日(金)までの間、梅田望夫さんの代わりに村山尚武さんがゲストブロガーとして登板します。村山さんはシリコンバレーのあるベンチャー企業でBusiness DevelopmentのDirectorを務められており、ご自身でも「Sotto Voce」というBlogを運営されています。村山さんの経歴についてはこちらをご覧下さい。

今日はまず、Jonathan Schwartzのブログより、「Who Picked Your Search Engine?」というエントリーをご紹介したい。

この1文の主張は、冒頭の以下の文章にある。

「In that period, the technology in your personal life has had a massive impact on enterprise infrastructure - and there's no sign it's abating. The most interesting trend is that it's moving to an even younger generation than the one likely reading this blog.(中略)And that's been my thesis for a while: true power in the IT industry is moving out of the enterprise, and into the hands of ever younger consumers.」

Schwartzがいう「period」は過去20年、という期間であるが、彼がここで提起している のは、この20年の間に、IT産業において「どのテクノロジーが使われるか」は企業ユーザーでなく、個人ユーザーの行動により決定されるようになりつつある、という仮説である。企業内において、情報処理の主たるプラットフォームがメインフレームからクライアント・サーバーシステム、そしてインターネットを介して繋がったPCへと移行するにつれ、かつて経営者からIT部門が掌握していたテクノロジー採択権が、エンドユーザーが何を選ぶか、に大きく影響されるようになってきているのである。

サーチエンジンやモバイル機器はCIOが選ばない

「…who picked the search engine you use most often? It wasn't your CIO. Yet is a search engine a part of your business toolbox? Certainly, yes. And who picked your cell phone? Likely not your CIO, either - yet do you use it for business purposes? Surely, yes. (中略)And there's no doubt mobility will have a growing impact on IT infrastructure (accelerated by its security attributes, in my mind, but that's a separate blog).」

上では、この影響力のシフトの最も顕著な例として、ビジネスにおける重要なツールとなりつつあるサーチエンジンや携帯電話を始めとしたモバイル機器の採択は、多くの場合は企業の経営陣やIT部門(ここではそれをひっくるめて「CIO」という表現をしている)によってではなく、各社員が個人として「何を使うか」と決めたかによって決定されている、という例を挙げている。また、違うパラグラフでは、今や多くの企業が活用している「Eコマース」も、ユーザーが(名前は出ないがAmazonやeBayに代表される)をこぞって使うようになったからこそ導入されたものである、ともしている。

そして、エントリーの最後の1文で、

「Which is all to say - the enterprise technology industry is now being balanced by a need to appeal to, follow and embrace consumers and consumer preferences on the internet. 15 year olds have a bit more sway today than 50 years ago.」

ビジネスに用いられるITインフラが個人によるテクノロジーの採択に左右されるようになってきているのであれば、若年層がどのようなテクノロジーを用いているかに十分な注意を払い、この層に追随し、訴えかけなければならない、と結論づけている。そうした若年層こそが、将来の顧客でもあり、労働力でもあるからである。

今日最終日にこのSchwartzのブログを取り上げたのは、先週木曜日のゲストブログ第1回の「企業ブログ」の話、そして今週火曜日の第4回で取り上げた「ユーザーサイドからのITキャリア」と絡むところがあると思ったからである。

情報収集のアンテナとしての企業ブログ

まず「企業ブログ」との関連において言えば、Schwartzの述べた「ITトレンド決定力の個人ユーザーへのシフト」という現象は、第1回で述べたインターネットを介した「個人」の情報伝播力・知見形成力の強まりによりさらに加速しているのではないかと思う。そうなると、企業にとって、この個人間の「情報伝播・知見形成」ネットワークに企業ブログという「ネット上の人格」を介して加わり、情報収集のアンテナ代わりとするばかりでなく、自らの(IT採択に関する)アイディアを積極的に発信し、そのフィードバックを受けることの重要性はますます高くなるのではないだろうか?そこで実現されるのは、「企業」とネットによるつながりで力を得た「個人(の集合体)」間の対等なコミュニケーションとなるのではないだろうか?

次に「ユーザーサイドからのITキャリア」であるが、Schwartzの議論は「CIO」という存在を否定しているようでもあるが、私としては、ここで力を失うのは旧世代の「管理者型CIO」であり、世の中にあまたあるテクノロジーの中から何がイノベーションに繋がるかを見極め、事業部門と共に導入を推進していく存在である新世代CIOという存在の重要性・キャリアとしての面白さには何の影響も無いと思う。(「企業ブログ好き」「電池系」である私の個人的意見かつ手前味噌な議論であるのは百も承知で書けば)むしろ、企業ブログの中核となったり、あるいは個人間のテクノロジートレンドが形成される中にどっぷりとつかるような個人ブログなどを通じた活躍の機会があるので、かえってエキサイティングなものになるのではないだろうか?

企業ブログの話ついでに書けば、第1回ではワーナーの失敗談を取り上げたが、マーケティングプロフェッショナル向けのウェブサイトMarketingProfs.comでは「Ten Companies that Missed Blog Opportunities」と題された記事で「ブログを活用すればもっと効果があったかもしれないマーケティング」10社の事例を挙げている(要登録、但し無料)。

ブログを使えばよかった企業キャンペーン

わかりやすいところで、StarbucksがNew York市出店10周年記念として行った「何か良い事をする」キャンペーンの例を取り上げよう。

「Starbucks celebrated its 10th anniversary in New York City with a summer campaign, surprising New Yorkers with random acts of kindness. For example, it gave a free tank of gas and a hot cup of coffee to customers at a Manhattan Mobil station; eventually, it gave away 690 gallons of gas, 12 gallons of coffee and 2 gallons of Frappuccino.」

このキャンペーン、市内のあるガソリンスタンドに来たお客に満タンのガソリンとコーヒーを一杯奢る等、NYのあちこちで同社の感謝のしるしとして「善行」を施すというものだったが、この記事では、このキャンペーン用の写真付きモブログを開設し、その「善行」をお客の体験談として、映像付きで残せばもっと効果があったに違いない、としている(下記参照)。

「The company missed a perfect marketing opportunity by not having the events on a moblog. What's a moblog? It's a mobile blog that allows people to post their own photos and first-hand accounts. Right now, the promotion is invisible; it's not even mentioned on the company Web site.」

このキャンペーン、同社のウェブサイトにすら乗せなかったため全く認知されていないが、モブログを使えばもっと効果があったのに、という主張である。

話題さめやらぬiPod

さらにエントリの振り返りついでとして、昨日のエントリーで取り上げたアップルの新型iMacの発表について補足。

発表後1日経った今日も、ブログ界ではこの話題で盛り上がっている。こちらでは「一目惚れした、待ってて良かった」とまで言い切っているし、こちらでは「iPod効果に乗っかって、絶対売れる」と断言している。

こういった良い方の意見もあれば、CNET News.comのこちらの記事では、「Appleは新型iMacにテレビチューナーとワイヤレスを搭載しなかったことにより、(Windows Media Center PCの対抗馬として)家庭用デジタルメディアセンターとしてMacを位置づける機会を逸した」というForrester Researchのコメントを掲載している。

「The lack of this connectivity means that Apple has missed an opportunity to build on its AirPort Express foundations and rule the roost in bottom-up networking.(中略)In the new iMac, Apple presents us with a fabulous living-room-compatible unit with an excellent display and lots of storage designed for digital media--but doesn't allow for connectivity to the broadcast network.」

高性能のディスプレイと、大容量のHDDを搭載し、しかもすっきりとワンボックスにまとめたのに、WiFiも使えなければ、TVネットワークへの接続手段も欠いているため、最高にエレガントなホームネットワーキングのハブ兼Tivoのようなデジタルビデオレコーダーという製品になる機会を逸した、という主張である。

これはひょっとして昨日の後段の話が本当で、「デジタルメディアダウンロード規格独占」こそがAppleの最終目的であって、iMacで上のような機会を逸しても痛くはない、という発想の現れなのかもしれない(?)。もっとも、そちらの計画、今日発表になったこちらの話により障害が立ちふさがったことになるが…。

Appleの話を始めるとまたとりとめが無くなるのでこの位にしておきたいが、今回のゲストブログも今日で最終回である。

この場を借りて、おつきあい頂いた読者の皆様、そしてトラックバック、コメントしていただいた皆様にお礼を申し上げたい(いただいたものは返事こそできませんでしたが、ちゃんと消化しておりますので、どうかご容赦を…。)。

それでは、またどこかでお会いしましょう。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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