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モトローラ復活の決め手は「Execution」

2004/08/02 09:08
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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先週金曜日に引き続き、Motorolaの新CEOの話。BusinessWeek誌の「Reinventing Motorola」と、「For Motorola's Zander, "It's Execution"」が題材である。

新しいCEOが不振の会社に来てすることは、(1)会社全体に緊張感を漲らせること、(2)即効性のある施策で経営数字をよくすること、(3)重要顧客を訪ね、問題の所在を明らかにすること、(4)会社が抱えている問題点をすべて掌握して、ただちに打てる手はすぐに打つこと、(5)自前のマネジメントチームを組成すること、(6)事業ポートフォリオを見直して組織改革すること、(7)中長期的な成長ビジョンをセットすること、・・・・・仕事のリストは延々と続いていく。

日本の大手総合電機級の大企業を任されたZander

Motorolaの第2四半期の数字は、

「On July 20, the company reported that second-quarter sales surged 41%, to $8.7 billion, while operating income rose five-fold, to $845 million.」

と出ているが、年間売上高は320億ドルから350億ドル規模で、時価総額が売上高をわずかに上回る程度だが、それでも400億ドル弱もある。事業規模からいけば、日本の大手総合電機、大手エレクトロニクスと同じくらいと考えればよく、とにかく巨大企業である。

そういう会社のCEOという仕事は、その巨大な組織の内部の現実と外部を取り巻く環境のすべてをできるだけ広く深く掌握し、どのボタンを押すとどういう効果があるかを把握し、日々の環境変化に応じて、そのさまざまなボタンを押し続ける仕事だ。1日は24時間しかないのは誰にも同じだが、優れたCEOの時間は濃密に流れ、短時間におそろしい量の仕事をして、会社を変えていく。

たとえば、「(3)重要顧客を訪ね、問題の所在を明らかにすること、(4)会社が抱えている問題点をすべて掌握して、ただちに打てる手はすぐに執行すること」のいい例が、「For Motorola's Zander, "It's Execution"」の冒頭に出てくる。

「Last January, a couple of weeks into his new job as CEO of Motorola Inc. (MOT), Ed Zander paid a visit to his biggest customer, Nextel Communications (NXTL ). Motorola had long been the sole supplier of phones and network gear for Reston (Va.)-based telecom. But by delivering phones after promised deadlines and at prices Nextel considered too high, Motorola had made the relationship as rocky as Virginia's Stone Mountain.

So, Zander sat and talked with Nextel CEO Tim Donahue for two hours. "We had real serious issues," Donahue says. Zander listened and then assured Donahue that he would usher in a new responsiveness at Motorola. "I was taken aback," Zander says. "I got angry. I won't tolerate anything but great customer delight."

He assigned Motorola Chief Information Officer Sam Desai to patch up the relationship. Desai now meets with Nextel monthly, and Motorola delivered five new phones during the second quarter to its key customer. "It's not just rhetoric, it's being demonstrated in actions," Donahue says of the renewed commitment Zander is bringing to Motorola. "We have seen an absolute sea change in the attitude and service."」

CEOに就任してまもなく、Zanderが大顧客であるNextelを訪ね、顧客がMotorolaに対して大きな不満を持っていることを知り、すぐに手を打つくだりである。さらに、(1)から(7)で列挙した項目についての具体的な話は、興味のある方は原文をどうぞ。

「Execution」が勝負の決め手

ところで、このインタビュー記事のタイトルには、Execution(執行、実行)という言葉が出てくる。

少なくともIT産業の経営についていえば、この言葉が頻繁に使われるようになったきっかけは、90年代半ばにIBMのCEOだったGerstnerが、この言葉を前面に押し出した有名なスピーチを、どこかでしてからだったように記憶している。

そのGerstnerのスピーチに刺激されたこともあって、97年(もう7年も前だ)に、僕は「Execution」ということに関連してこんな文章を書いた。

その一部を引用しよう。

「今、シリコンバレーで盛んに使われる言葉に「Execution」というのがある。「執行、実行」という意味だが、英語では、「裁判が結審して判決が下った後の法執行」とか、極端な場合「死刑執行」というイメージも喚起させるような言葉である。「有無を言わさず、何が何でも、どんどん執行していく」といった意味の言葉である。なぜ今そんな言葉がよく使われているのか。理由は簡単だ。「やるべきことははっきりとし、何をやるべきかをそれほど悩む必要もなく、やると決めたことを粛々と実行していくだけ」という時代に入ったからである。」

おそらく今は、7年前以上に、この「Execution」という言葉が活発に使われている。それはIT産業全体が成熟し、「Execution」能力の差で勝負がつく領域が増えてきているからだ。

「Execution」はカルチャーの問題

Ed Zanderは、Executionを、ビジネスカルチャーの問題ととらえて、こう言う。

「Execution to me is a cultural part of the business. This is the touchy-feely, qualitative part. Do the employees, does your management team, does everybody here understand the importance, the priority, what it is when we say execution? It's meeting your customer expectations, delivering on your numbers, quality, and being held responsible and accountable.

I know it all sounds so obvious. When people say what's on your mind? It's execution. What's execution? It's doing what you say you're going to go do when you say you're going to go do it. It's customer delight. It's making your numbers on the quarter, delivering on your expectations, and its holding people accountable.

Pretty simple stuff, but they've got to hear it over and over from me, and then my staff has to got to deliver that same message. That's how I get up in the morning. I'm thinking about: How are our products being received in the marketplace?」

「Execution」は、日本語でよく使う「当たり前のことを当たり前にやることの徹底」という言葉のニュアンスに近いかもしれない。企業の足腰にあたる部分と言い換えてもいいだろう。優れた戦略を企業の足腰が支えるわけで、足腰が弱っている会社ではまず足腰を強くすることが先決。それだけでも、経営数字はうんとよくなる。創造的な優れた戦略云々は、足腰がしっかりした上で初めて意味が出てくるのだから。ゆえに、Zanderも「I know it all sounds so obvious.」とか「Pretty simple stuff」という言葉を繰り返すわけである。

余談になるが、Apple ComputerにJobsが復帰する前、Gilbert Amelioが一時期CEOだった。Appleに当時勤めていた友人は、「アメリオがアップルの足腰をきちんと鍛える仕事をした上で、創造的なジョブズが戻ってきたから良かったんだ、アメリオの期間がなかったら・・・」みたいなことを言っていた。賛同するアップル・ファンは少ないかもしれないけれど。

そして、Zanderはインタビューをこう締めくくる。

「What I'm trying to do is get the commitment levels up. It's not just about products. It's the tone of: If the phone rings on this floor [slams his hand on the table], I want it answered in two rings. We have responsiveness problems. I want everybody to start waking up and saying who do I serve? I want them to be very externally focused and be able to measure and hold people accountable. The first part is changing the cadence of the company. The sense of urgency, speed, execution, decision-making.

Look [sighs], the leadership of this company has to set the example because it's going to be hard to move this ship. It's a big ship. My expectation, therefore, is it's going to take some time. But if I can empower, and measure, and hold the senior team accountable, and put in the right cadence to go do it, I can change some things around here...which we are.」

この文章に出てくる「responsiveness」という言葉は、Nextel訪問のくだりでも出てきた。「感応性」。会社に入ってくるありとあらゆる刺激、シグナル、自社を取り巻く環境変化に対して、どれだけ敏感に反応して行動に移すことができるか。そういう意味だ。組織に緊張感が漲っているかどうかで、この「responsiveness」は大きく変わり、社員の目の色が変わって「responsiveness」に改善が見えることで、巨大企業は息を吹き返すのである。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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