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ある米国スタートアップ企業のセールスマンの日常

2004/07/29 09:31
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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ある生活をイメージするとき、「その生活において24時間365日がどんなふうに流れていくのか」という「時間の流れ方」を、じっくりと頭の中で考えてみることが大切だ。たとえば職業を考えるとき、その世界での「時間の流れ方」は自分に向いているのか、その「時間」を果たして自分は楽しめるのか、その「時間の流れ方」に耐えられるのか。こうした問いは、自らの適性を考える上で、とても重要である。

ある生活における「時間の流れ方」がよくわかる文章に出会うと、僕はふと気になって立ち止まる。今日は、そんなBlogを1つご紹介しよう。アメリカという広大な国で、ハイテク製品のセールスやビジネス開発の仕事をするという日常には、どんな時間が流れているのだろうか。

CEOからのメール

BeyondVCの「How startups succeed」を読んでみよう。このBlogは、ベンチャーキャピタリストである筆者Ed Simが、投資先ベンチャーのCEOがその会社の社員全員に出したメールを紹介したもの。

「If you ever wondered what it takes for a startup to succeed, please read the email below sent from the CEO of one of our portfolio companies to his whole staff. Sure, startups don't have the cash, the people, the distribution channel, and brand to compete with the established players but passion, drive, and an insanely great product can take you a long way.」

こうEdが書くように、このeメールを、ベンチャー成功要因の教訓として読むこともできるのだが、むしろ「時間の流れ方」という観点で読むほうが、僕には面白かった。

「I want to share with all of you, an extremely powerful example of sincerity and commitment, shown by one of our fellow team members. I am sure that each one of you will feel proud of him after reading what he accomplished this week!」

とCEOが書くように、このメールは、そのベンチャーのある社員の活躍ぶりが紹介されている。

ある社員の活躍の様子

「On Tuesday, July 13th, after finishing a bunch of very successful presentations in the Washington DC Area, John Smith (aka Mad Dog from his army days) took a flight for Memphis, TN where he had to do a presentation in the morning on Wednesday, July 14th.」

7月13日(火)、ワシントンDCでいくつかのプレゼンテーションを成功させたあと、ジョンはメンフィス(テネシー州)に向けて飛んだ。メンフィスで翌14日の朝、ジョンはまたプレゼンテーションをしなければならないのだ。

「John had to change flights in Atlanta on the way to Memphis. Due to extremely bad weather on the east coast, his flight into Atlanta got delayed and he missed his connecting flight to Memphis. The next available flight to Memphis was the next day at noon, which would cause him to miss his morning presentation.」

悪天候で飛行機が遅れて、ジョンはアトランタでの乗り換え便に乗り遅れてしまった。次の便は翌日の昼まで出ないから、翌朝のプレゼンテーションに間に合わないじゃないか。こういうことは、アメリカでは日常茶飯事だ。

「So John asked the airline if they would reimburse him for a rental car to drive from Atlanta to Memphis, thinking that it would be a few hours drive. The airline agreed, so John rented a car and started driving to Memphis from Atlanta.」

2-3時間のドライブでアトランタからメンフィスに行けると踏んだジョンは、エアラインとの交渉後、レンタカーを借りて、メンフィスに向けて車を走らせた。しかし調べてみると、メンフィスまでは400マイル(640キロ)。7時間もドライブしなきゃならないことがわかる。

「But Mad Dog did not stop or turn around, he kept driving (with a few coffee breaks to help keep him awake at the driving wheel). He reached Memphis at 5:30 AM, rested for an hour at his hotel and went on to do his presentation – which was very well received. Folks, this story does not end here」

でも彼は走り続け、朝の5時半にメンフィスに到着。14日の朝のことだ。ホテルで一時間ほど休んで、プレゼンテーションに向かい、とてもうまくいった。でも話はここじゃ終らない。ジョンは空港にとって返して、ジャクソン(ミシシッピー州)に行かなくちゃいけない。夜通しの顧客トレーニングをするために。

「John then took a flight from Memphis to Jackson, MS where he was scheduled to train 30 users for one of our major customers THROUGH THE NIGHT of Wednesday, July 14th! He got into Jackson, slept for a couple of hours and then went to the customers offices to conduct training for these 30 users from 10 PM to 5:30 AM!」

彼はジャクソンに到着。2時間くらい眠って、顧客のオフィスに行き、午後10時から朝の5時半まで30人のユーザへのトレーニング・セッションをやった。この朝の5時半というのは、15日の朝だ。

「The training was extremely well received (I have received e-mails from the Company X Sales managers giving kudos to John for his quality of training that night). Today morning he flew from Jackson, MS back home to Dallas, TX.」

ジョンのトレーニングはとても好評のうち終了し、彼はジャクソンからダラスに、15日午前中の便で戻ってきましたとさ。

というわけで、これは、アメリカという広大な国で、ハイテク製品のセールスやビジネス開発の仕事をするという日常を、よく現している。

アメリカ的セールスの日常

どこにいくにも、飛行機とレンタカー。飛行機はよく遅れるし、乗客が少ないと平気でフライトはキャンセルされる。顧客は東京のように密集しておらず、全米でバラバラに点在している。このベンチャーは、たぶんIPO直前くらいで、製品は完成し、顧客をどんどん増やしている最中だと推察できるが、そんなときの顧客は皆、Early Adoptor。顧客はそのベンチャーにとっての何よりも大切な資産であるから、ベンチャーはどんな難題だって聞かなくちゃならない。どんなに遠くても駆けつけるし、深夜のトレーニング・セッションだって引き受ける。

こういう「時間の流れ方」というのは、見る人によって感じ方がきっと違うのだろうと思う。ジョンの肉体的疲労をイメージして、それだけでげんなりしてしまう人もいる一方で、「アメリカのセールスって、車の中や飛行機の中でずいぶん1人で自由な時間があるんだな、好きな本を読んだり、好きな音楽をたくさん聴いたりできそうだな」なんて感じる人もいるだろう。いろいろな場所を飛び回って、たくさんの人に出会う楽しさを直感する人もいるだろうし、一箇所に落ち着いて自分の仕事を積み上げていけないことに不満を覚える人もいるだろう。うまくいっているときのベンチャーの連帯感みたいなものを感じて羨ましく思う人もいれば、ジョンは体よく搾取されているのではないかと感じる人もいるだろう。

そういう直感はだいたいの場合とても正確なので、職業選択の際に、その職業に流れている「時間」について思いを馳せるのはとても意味がある。読者の皆さんは、ジョンの生活についてどんな感想を持ちましたか?

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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