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2007年の完成を目指して進むMITのオープンコースウェア

2004/06/18 09:27
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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その開発の進み具合を定点観測しているものがある。MITのオープンコースウェア(OCW)だ。

オープンコースウェアについては本欄でも何度か取り上げてきたが、初めての読者の方は、Wired誌の「MIT Everyware」という長文記事を2回に分けてご紹介した、昨年9月の「無償公開で世界に広がるMITの授業」、「MITの試みはノーベル賞に値する?」をご一読ください。

オープンコースウェアが先進的IT活用のアワードを受賞

さて、まずは「Sapient and MIT Named Finalists for Computerworld 21St Century Achievement Award」というニュース。

「Sapient (NASDAQ: SAPE), a leading business consulting and technology services firm, and the Massachusetts Institute of Technology (MIT) will be jointly recognized as one of five worldwide finalists for the Computerworld 21st Century Achievement in Education and Academia Award at a ceremony to be held later today. The Computerworld Honors Foundation, which is composed of leading chairmen and chief executive officers from the world's foremost IT firms, universities, libraries and organizations, established the 21st Century Achievement Award in multiple industry categories to identify organizations that are breaking new ground in the use of IT to improve society.」

MITのオープンコースウェアとその実装開発者であるSapientが、「Computerworld 21st Century Achievement in Education and Academia Award」を受賞したとのことである。「organizations that are breaking new ground in the use of IT to improve society」、社会をよりよくするためのIT活用の新地平を開いた組織、そしてそれも教育・アカデミアの世界でというのであれば、ダントツでMITオープンコースウェアが選ばれたのであろう。

「MIT OCW currently offers free and open access to the educational materials from 701 MIT courses, spanning MIT's five schools, and all 33 of its academic disciplines.」

とあるように、ゴールは全2000講座の公開だが、701講座まで到達してきたようである。

半年前からの進捗は

約半年前に、Anne Margulies(MIT オープンコースウェア エグゼクティブディレクター)に話を聞いたときは、

「現在すでに500講座の教材がウェブ上に公開されていますが、これを最終的には2000講座、つまりMITで年間に行なわれる講座数と同等のレベルまで増やす予定です。」

とのことだった。このLOOP誌連載でAnneと話をする前に、僕は、オープンコースウェアの今後の課題として、(1)オンラインコミュニティの発展、(2)ビデオ教材の充実、の2つが極めて重要という問題意識を持っており、その点をきちんと議論したいと考えていた。その部分のAnneとのやり取りを再掲し、半年後の現在、どんなふうにその開発が進展しているのかを、今日は見ていきたいと思う。

オンラインコミュニティの発展

まずは、(1)オンラインコミュニティについて。

「Q MITの学生は、キャンパスで教授や他の学生とのインタラクションがあるわけですが、OCWの成功もオンラインコミュニティの発展に大きく依っていると思いませんか。

A 同感です。じつは今、ある大学の研究者が学習にかかわる効果的なオンラインコミュニティとは何かを探るために、OCWの講座を調査しているところです。広く分散した学習コミュニティを発展させ、それが自己運営していくのをMITがどうサポートできるのかを考える。MITは人材を投入してコミュニティを実際に運営する責任は担えませんし、コミュニティ内で間違いが起こらないように監視することもできませんが、学習コミュニティが生まれる契機づくりにはかかわりたい。

Q そのためのツール開発も行なう?

A そうできればと思っています。まだ先になるでしょうが、OCWのサイト上に利用者がダウンロードできるようなツールを用意する。そして、調査の結果を掲載したりして、オンラインコミュニティ運営のベスト・プラクティスとは何かが理解できるようにする。実際のところ、学習意欲の高い個人のモチベーションには驚くばかりで、OCWで優れた教材にアクセスすることができてどんなに嬉しいかを、胸を打つような便りにして知らせてきます。そうした利用者の多くが、発展途上国、政治的紛争にまみれた国、あるいは図書館など学問のためのリソースがない国に住んでいるのです。」

さて、半年後の2004年6月現在での本件についての進展は、ユタ州立大学との連携によるオンラインラーニングコミュニティ作りの実験である。

今のところ、7講座でパイロット・プログラムが動いているだけだが、たとえば「Introduction to Algorithms」という講座の中の解説部分を読んでみよう。

「MIT OpenCourseWare (MIT OCW) has embarked on a pilot research project with the Open Sustainable Learning Opportunities Research Group in the Department of Instructional Technology at Utah State University. This course, “6.046J: Introduction to Algorithms,” is one of seven MIT OCW courses that will offer links to Open Learning Support (OLS) learning communities where individuals around the world can connect with each other, collaborate, form study groups, and receive support for their use of MIT OCW materials in formal and informal educational settings.」

MITのオープンコースウェアから、「Open Learning Support (OLS) learning communities」にリンクされ、そこで、同じ教材で学ぶ世界中の人たちがコミュニケーションを取ったり、教えあったりすることができるという実験である。

「OLS is a research project that is focused on building “social software” that enables informal learning communities to form around existing open educational content.」

このOLSは、オープン化された教育用コンテンツの周りで、インフォーマルなラーニング・コミュニティの実現を助けるソーシャル・ソフトウェアを作ろうとする研究で、MITのオープンコースウェアとは独立に運営されている。「a space where individuals can connect to share, discuss, ask, answer, debate, collaborate, teach, and learn」を目指すOLSプロジェクトは、MITオープンコースウェア自身がヒューレット財団とメロン財団からの資金拠出で作られているのと同じように、

「Open Learning Support is funded by a grant from The William and Flora Hewlett Foundation」

ヒューレット財団からの資金で賄われている。まだ始まったばかりの試みだが、まずは正しい試行錯誤の第一歩だと思う。

ビデオ教材の充実

さて、(2)ビデオ教材の充実について、Anneはこう語っていた。

「Q 講義のビデオ記録が掲載されている講座はまだ少ないですね。

A OCWの利用者は教員と個人とに分かれますが、個人は特にビデオを要望します。「線形代数」と「磁気学」という二つの講座には完全な教材セットが用意されていて、それぞれ35時間にも及ぶビデオも掲載し、MITのスター教授の授業だということも手伝って大変な人気を呼んでいます。

教授によっては講義をビデオ撮影されることを嫌う人もいますので、すべての講座にビデオを付けることはできなくとも、ビデオの数は今後大幅に増やす予定です。特にMIT教育のユニークさを見せられるような講座、有名教授の講義はそうしたい。また、シミュレーションやフィールドワークなどをビデオクリップとして掲載することも考えています。」

ビデオ教材についても、少しずつではあるが充実しているようだ。いくつか例を挙げよう。

学部の物理学の講座「8.01 Physics I」は、35回の講義のビデオがすべて公開された

誰でもネットから何の制約もなしに見ることができるから、興味のある方は、ぜひどうぞ。やはり「百聞は一見にしかず」で、アメリカの大学の授業の雰囲気が伝わってきます。

同じく学部の授業で、「18.085 Mathematical Methods for Engineers I」も、32回の講義のビデオがすべて公開されている

また、Anneの言葉の中に出てくる「シミュレーションやフィールドワークなどをビデオクリップとして掲載」の具体例は、こんなところで実感できる。

着々と、2006年ないし2007年の完成に向けて、MITオープンコースウェアの開発が進んでいる。素晴らしい営みなので、2-3年後の「完成」をゴールと考えず、そこをスタートポイントにより凄いものへと進化していってほしいと思う。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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