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フリーソフトウェア/オープンソースをメインテナンスするコスト

2004/04/28 09:20
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プロフィール

umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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[ゲスト] 石黒邦宏 Kunihiro Ishiguro
4月26日(月)〜4月28日(水)までの間、梅田望夫さんの代わりに石黒邦宏さんがゲストブロガーとして登板します。梅田さんの更新は5月6日(木)からになります。

石黒さんのプロフィール:1993年銀行向け大規模開発プロジェクトのシステム管理者としてキャリアをスタート。1995年にISPへ転職、国内外のインターネットバックボーン構築に携わる。1996年ウェブシステム作成会社へ転職。同年フリーな経路制御ソフトウェアGNU Zebraの開発を開始。1997年、日本ネットワークオペレーターズグループJANOGの設立に関わり初代会長に就任。1999年シリコンバレーにIP Infusionを吉川欣也氏と共同設立、CTOとして技術面のマネージメントにあたっている。

SCO関係の動きがあわただしい。まず昨年10月にSCOに出資したBayStar Capitalが、資金を引き上げると先々週にアナウンスした。

どうやらこの話は前振りのようで、そのあと先週金曜日になって、BayStar CapitalはSCOの経営陣の交替を求めているという談話がでた。NewsForgeによると

「BayStar spokesman Bob McGrath told NewsForge Thursday evening that BayStar asked in an April 15 letter to have its stock redeemed because "we wanted to get SCO's attention on the management problems we see," McGrath said.

"We have been pursuing this for some months with them (SCO Group), both verbally and in writing," McGrath said. "We're acting on behalf of our shareholders, as always, because they are entitled to a reasonable return on their investment. We think at this point, to create the value we need, that SCO Group will need to make some changes in senior management."」

「ここ何カ月かSCOに対して言い続けたことだが、投資家の利益を考えると、SCOのシニアマネージメントの何人かは交替すべだろう思う」ここで、特に誰をとは言っていないが、SCOは巨大企業というわけではないから、senior managementで示されている人間は限られている。ちょっと長いがさらに引用してみよう。

「McGrath would not be specific about which officers should be replaced, but SCO Group is not a large company, and there aren't that many executives. CFO Robert K. Bench, in an interesting bit of timing, announced this week that he is retiring in the fall, so he is off the hot seat. SCO Group's key brass include President/CEO Darl McBride, Senior VP Jeff Hunsacker, Senior VP Chris Sontag, and VP and General Counsel Ryan Tibbetts. By the way, Bench and Hunsacker both sold off a substantial amount of SCO Group stock last year.」

"off the hot seat" とか "key brass" とかちょっとふっと笑ってしまうユーモアのある書き方だ。意図は当然Linuxによる知的所有権の侵害をもとにした、IBMやその他の企業に対する訴訟があまりにいきすぎなので、抑制しようということだろう。そうすれば、SCO はなかなかいい製品を持っているのでもっと価値があげられるはずだと。

もともとこの投資には、Microsoftがからんでいるというメモを、オープンソースの提唱者のエリック・レイモンドが公開したりしているので、なかなかいい役者が揃っている。

IP=Intellectual Property(知的所有権)

SCOがIBMに対して、LinuxがSCOの知的所有権を侵害しているという訴訟を起こしたとき、正直われわれは「ああついに起きたか」という感想を持った。

何故なら、それ以前にフリーソフトウェア/オープンソースの知的所有権について、徹底した議論を弁護士チームとしていたからだ。

1999年にそれまで3年間かけて開発したフリーソフトウェアをもとに、シリコンバレーに会社を作った時、最初のビジネスモデルはソフトウェアサポートモデルだった。RedHat のような形である。ソフトウェア自体は無料で提供し、そのサポートに課金するというものだ。しかし、このモデルはOSには適用できるかもしれないが、経路制御ソフトウェアでは難しいだろうとの判断に落ち着いた。ソフトウェアをPC向けパッケージとして売るのも、経路制御機器は、通常専用のハードウェアが必要なため辛いだろう。ということで最終的にはソースコードを通信機器ベンダーにライセンシングする伝統的なビジネスモデルがいいのではないかということになった。

いろいろ議論した結果、もともとフリーソフトウェアとして開発してきたZebraはそのままフリーソフトウェアとしてライセンスし、商用版は別に用意することになった。

ここからが、シリコンバレーと日本との大きな違いかもしれないが、即座に弁護士と知的所有権のチェックとフリーソフトウェアのライセンスの検討が始まった。最初皆が頻繁に言うIP、IPというのでインターネットプロトコルのことかとおもっていたら、Intellectual Property(知的所有権)のことだった。フリーソフトウェアのライセンスはなにかと議論の多いGPLである。最初の弁護士の反応は「これは本当に契約書なのか?」というものだった。「こんなへんてこなのは初めて見た」という反応もあった。しかし、議論が進むうちに非常に重要な指摘を受けた。

「フリーソフトウェアとしてメンテナンスしていくのはいいが、その際の知的所有権のチェックはどうしているのか?」

「たとえば、誰かが自分がプログラムしたわけではないプログラムをコピーして貢献してきた場合それをチェックすることはできるのか?」

「あるいは、誰かが自分で書いたプログラムだとしても、知的所有権はたとえば、彼の雇用企業にあることも良くある。そうした時彼はそのプログラムを寄付する権利はないだろう」

といったことだ。こうした指摘から、フリーソフトウェアに貢献された過去のソースコードを全てさかのぼって知的所有権のチェックを行なった。膨大な作業であり、弁護士費用もかさんだが、これは会社と利用者を保護するためなので、全て会社で負担した。そのあとのフリーソフトウェアへの貢献についても社内のガイドラインを用意して、全て知的所有権のチェックをする体制を作った。

この際に参考になったのは、Free Software Foundationのプログラム管理体制だった。Free Software Foundationが知的所有権を保持してリリースするソフトウェアは、貢献されたコードも全て、Free Software Foundationへの著作権寄贈か、著作権のライセンシングがされなければ使用しないという原則を持っていた。

フリーソフトウェア/オープンソースをメンテナンスするコスト

フリーソフトウェア/オープンソースのコストを議論するばあい、通常利用する側がいかにコストを削減できるかということに終始しがちである。しかし、もちろん、誰かが作ったからこそソフトウェアがあるわけなので、リリースする側のコストについても考える必要があるだろう。

そして、実は一番コストがかかるのは、開発者のコストを別にすると(たいていこれは無料で提供される)、おそらく知的所有権のチェックにまつわる弁護士費用を含めた人件費だと思う。

SCO が主張するように本当に彼らのコードがLinuxにあるのかどうかは分からないし、また、そもそもコードの知的所有権がSCOにあるかどうかも議論されている。しかし、問題なのはそこではなくLinuxの開発体制に知的所有権のチェックを行なう手順が一切ないことだろう。この問題が解決されないと、SCO的な問題は何時でも起こる可能性があると思う。

フリーソフトウェア/オープンソースを作り、メンテナンスしようという方、あるいはそれをサポートしようという方は、是非このことを念頭に置いていただくとよいのではないだろうか。知的所有権のチェックにはコストがかかるが、それなしでは、フリーソフトウェア/オープンソースのメンテナンスは非常にリスクの大きなものになるだろう。

さて、3日と短い期間でしたが、こうして書く機会を与えていただいた、梅田さん、CNET Japan編集部の山岸さん。ありがとうございました。以前梅田さんが、「書いていると、だんだん長くなる」とおっしゃってましたが、その意味が少し分かった気がします。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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