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LOOP連載を終えて - シリコンバレーの重鎮が考える未来

2004/04/23 09:15
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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残念ながら『ダイヤモンドLOOP』が休刊になり、連載中だった「米国ハイテクワールドに学ぶ破壊的創造のマネジメント」というインタビューシリーズも自動的に終わることになった。しかし、同誌編集部のご好意で、この連載内容を、CNET Japanに転載してアーカイブとして残すことができた。僕の手元には、インタビューした人達の肉声をテープから起こしたファイルもあるので、これからも本欄で、必要に応じて、原文(肉声)も合わせて参照しながら考えていくことにしたい。

- レスリー・ヴァデス 前インテル・キャピタル代表

- マイケル・ラムジー ティーボCEO

- ロジャー・マクナミー インテグラルキャピタル パートナーズ/シルバーレイク・パートナーズ 共同創設者

- ラリー・プロブスト エレクトロニック・アーツ会長兼CEO

- オミッド・コーデスタニ グーグル 業務開発・営業担当副社長

- ミッチ・ケイパー オープンソース・アプリケーション財団代表

- マーク・ベニオフ セールスフォース・ドットコム会長兼CEO

- ウィリアム・ハンブレクト WRハンブレクト会長兼CEO

- アン・マルグリーズ MIT オープンコースウェア エグゼクティブディレクター

- リード・ホフマン リンクトイン CEO

- ブルース・シュナイアー カウンターペイン・インターネット・セキュリティ創業者兼CTO

と、ここ1年の間に、全部で11人の話を聞いたが、本当に勉強になった。特に、こういう機会でもなければ、会ってゆっくり話など絶対に聞けなかったであろうシリコンバレーの重鎮中の重鎮、レスリー・ヴァデスとウィリアム・ハンブレクトから話が聞けたことは、得がたい経験であった。

この60代の重鎮2人に共通する話し方の特徴は、余計なことはいっさい話さない、言葉は簡潔・明瞭で無駄が全くない、ということ。CEOたち(マイケル・ラムジー、ラリー・プロブスト、マーク・ベニオフ、リード・ホフマン)が、自分が話したいこと、話すべきことを、ビジョンとして延々と語るのとは好対照だった。

オープンIPOを採用しなかったGoogle

結局、ウィリアム・ハンブレクトが提唱する「オープンIPO」

「投資銀行界の重鎮、ウィリアム・ハンブレクト氏が5年前に提唱した「オープンIPO」という考え方がシリコンバレーを中心に再評価を集めている。機関投資家へのヒアリングではなく、オークションで公開価格を決めるメカニズムが、公開予備軍の心をとらえた。グーグルも採用を検討中といわれる。ハンブレクト氏は、オープンIPOでこそ企業は顧客ベースに近い安定的な投資家ベースを確立できると説く。」

を、Googleは採用しなかったわけだが、そのあたりのことを彼はこんなふうに話していた。

「グーグルについてはコメントできません。いえるのは次のことです。オープンIPOに敵対するのは、まず従来の引受け銀行。彼らは、オープンIPOには機関投資家が参加しないと説いて、会社側の関心を挫こうとしている。だがそれは嘘です。現に過去2件のWRハンブレクトのオファリングには、70の機関投資家が参加しました。思うに、J.P.モルガンにしてもゴールドマン・サックスにしても、変化するのが難しいのでしょう。彼らには長い歴史がある。エスタブリッシュメントを重んじる法律事務所やベンチャーキャピタルとの深いつながりがある。目には見えないプレッシャーがかかるのではないでしょうか。」

インタビューの文章は「ですます」調でLOOP編集部がまとめたものだが、ウィリアム・ハンブレクトの話し方は、「だ」を繰り返す断定口調に読み替えていただくとより感じが出る。

シリコンバレーは今後も知財ビジネスの心臓部であり続ける

そして、シリコンバレーの今後について、彼は、迷いもなくこう語った。

「I personally think that Silicon Valley has produced the culture and a combination of circumstances that will probably allow it to continue to be the heart of the intellectual property business in the United States. It still attracts the brightest, smartest people. I mean, just look at any of these successful companies. They have really bright people from all over the world. You know, it isn’t just the U.S. I mean the really bright technology minds are attracted here. And I think that’s probably more important than anything, that there’s sort of a critical mass of bright people that attract other bright people. And as long as that keeps going, I think it’ll always be the place where the leading companies develop. Application’s spread out, but the real thought leaders, the real basic breakthroughs seem to happen here.」

シリコンバレーは米国における「intellectual property business」の心臓部であり続ける。シリコンバレーは「the brightest, smartest people」を依然として惹きつけている。成功した会社を見てみるがいい。全世界から本当に頭のいい連中を集めている。「the really bright technology minds」はここに呼び込まれている。そして、何よりも大事なことは、頭のいい連中のクリティカルマスが、頭のいい連中を呼び込むことだ。それが続く限り、最先端を走る企業(the leading companies)が生まれる。アプリケーションは世界中に広がるだろうが、本当の「thought leaders」、本当の「basic breakthroughs」はここで生まれるように思える。

ウィリアム・ハンブレクトの言う「the really bright technology minds」というのはなかなか言い得て妙だが、シリコンバレーにはそういうテクノロジーに関する世界中の最も尖がった才能だけが残り、シリコンバレーは「the heart of the intellectual property business」となり、「the leading companies」と「the real thought leaders」と「the real basic breakthroughs」を生み出すが、「Application’s spread out」、その応用分野の開発は世界中に広がっていく。彼のビジョンは、「ものすごく少数の尖った才能と彼らが生み出す圧倒的な付加価値」以外にほとんど重きを置かないという、かなり過激な部類に入るシリコンバレー観である。本欄で、シリコンバレーには目に見えない階層構造があり、その頂点に「殿堂入りした重鎮たちのネットワーク」があるというような話をしたことがあるが、ウィリアム・ハンブレクトのこのビジョンは、この小さな殿堂コミュニティ(テクノロジー・エスタブリッシュメントとでも呼ぼうか)の感覚を代表するものと言っていいだろう。

来週3日間はゲストブログ

さて、連休直前の来週月曜日から水曜日までの3日間は、シリコンバレーに日本からやってきた「the really bright technology minds」の1人、石黒邦宏さんにゲストブロガーをお願いした。石黒さんについては、「天才プログラマーの身体」という文章を以前に書いたが、僕が尊敬する年少の友人の1人である。最初にゲストブログをお願いしたときは、「僕はプログラムによって自分を表現することができているから、文章は特に書く必要はない」というようなことをおっしゃっていたが、何とか引き受けていただけることになった。

石黒さんのこれまでの経験の中で特筆できる点は、(1)自作した約5万行からなる「シスコシステムズのルータと同じ機能のソフト」のソースコードをオープンソースとして公開し、(2)そのコードの質がシリコンバレーのテクノロジストたちによって高く評価されたことが発端になって、(3)日本からシリコンバレーに移り、自ら創業者としてベンチャー「IP Infusion」を創業し、(4)現在も同社CTOとしてベンチャーにおけるソフトウェア開発のリーダーシップを取っている、ということである。もともとは文学や哲学書を耽読し続けるという学生時代を送った「根っこは文系の人」であるというのも、彼の人間としての面白さの1つ。どうぞお楽しみに。

僕のエントリーは、5月6日の連休明けから再開します。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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