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分散型組織を検討するための考え方

2004/04/20 09:12
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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本欄3月25日「ITが可能にする個人の自由と組織の効率の両立」でご紹介したMITスローンスクール教授・Tom Malone氏の近著「The future of work」の抜粋が、HBS Working Knowledgeサイトに掲載された。「Making the Decision to Decentralize」を読んでみることにしよう。

「Author Thomas Malone, a professor at MIT Sloan School of Management, says that the cheap cost of communication—e-mail, instant messaging, the Internet—is making possible a new type of organizational structure.」

が本書の根底にある問題意識である。冒頭は、IBMのガースナーが就任したときに、前任者が決めていた会社分割方針をひっくり返した話が出てくるが、それは有名な話なので省略。その次あたりから。

「You may never face choices about centralizing or decentralizing on the scale Gerstner did, but if you're like most managers, you face such decisions on a smaller scale all the time. How should you make them? How can you tell whether your situation is one for which decentralization makes sense? And if you're going to decentralize, how can you know which kind of decentralization will work best?」

この抜粋は、組織の分散化についての意思決定をどのように行うべきかについての考察である。

分散型組織を考えるためのモデル

「Table 8-1」と書いてあるところをクリックすると、本書で使われている図表を見ることができるが、これが分散型組織を考える上でMaloneが使うモデルである。

「As Table 8-1 shows, centralized hierarchies and the three basic types of decentralization—loose hierarchies, democracies, and markets—each have strengths and weaknesses.」

図の縦軸は、(1) Centralized hierarchy、(2) Loose hierarchy、(3) Democracy、(4) Marketの4つに分類され、横軸には、(a) Communication cost、(b) Individualization and Ability to Use Many Minds Simultaneously、(c) Ability to resolve conflicts、(d) Autonomy, Motivation, and Creativity、とそれぞれの組織形態が持つ特性を考える上での視点が並べられている。この表を眺めて、自分の仕事をこの表の中にマッピングしてみるだけでも、何かの発見があるかもしれない。

従来型の(1) Centralized hierarchyは、(a)(b)(c)(d)の中で、(a) Communication costが安くてよく、そして、(c) Ability to resolve conflictsに長じた組織である。(a)のコストそのものが低下している今、中央集権型組織の意味は(c)の部分にのみ残るということである。

「When you need to economize on communication costs or when resolving difficult conflicts of interest is critical, centralized hierarchies may be best.」

がその部分の説明だが、「when resolving difficult conflicts of interest is critical」という部分は、ある事業において「非常に難しい利害相反問題を解決するということこそがクリティカル」なのであれば、それは司令塔が一本で、その命令でぴしっと動く組織のほうがいいという意味である。

「When you need to maximize employee motivation and creativity or tap into many minds simultaneously, markets are especially attractive. When aspects of all four dimensions are important, the two intermediate structures (loose hierarchies and democracies) may work well.」

しかし、従業員のモティベーションを高め、創造性を最大限発揮させる必要があるのなら、または、たくさんの人のminds(頭脳、精神、知力)を同時に引き出したいという場合、分散型組織の最も過激なもの、つまり(4) Marketが最適。横軸で並べた4つの項目のすべてが重要であれば、中間的な解である(2) Loose hierarchy、(3) Democracyのいずれかがワークするかもしれない、としている。

日本企業で分散化が進まない理由

たとえば日本企業の場合などで、組織の分散化が進むようでいて進まないのは、「when resolving difficult conflicts of interest is critical」という部分のリスクを実際以上に過大評価し、(b) Individualization and Ability to Use Many Minds Simultaneouslyと(d) Autonomy, Motivation, and Creativityの価値を、無意識のうちに過小評価するからではないかと、これを読んで思った。

「In many cases, however, the best solution is to create a custom system that combines elements of more than one basic structure. You can, for instance, use different structures for different types of decisions. That's what often happens in internal markets: The basic operational decisions are made through the decentralized market, but hierarchical managers choose the participants, set the ground rules, and intervene when the market would otherwise fail to do what is best for the organization overall.」

多くの場合、最適解は、いくつかの基本構造の組み合わせで実現される。違うタイプのデシジョンには、違うタイプの構造を使え、とMaloneは説く。たとえば、ベーシックでオペレーショナルな意思決定は分散marketを通して行われるが、階層的マネジャーが参加者を選び、グラウンドルールをセットし、Marketメカニズムがうまく働かない場合には干渉する、というような事例。

この事例で重要なのは、ここでいう「The basic operational decisions」を、単純労働における低レベルの意思決定だけに限定して読むべきではない、ということだろう。

「Assigning different decisions to different structures isn't easy; it requires a detailed understanding of your own specific situation and goals. But…there is a systematic way to think about the problem.」

そして彼は言う。「違うタイプのデシジョンを違うタイプの構造で」というのは決して簡単じゃないから、システマティックにモノを考えるやり方を提示しようと。そして、システマティックにモノを考えるために、Maloneはまず3つの質問をせよ、と言う。

(1) Are the potential benefits of decentralizing important?

(2) Can you compensate for the potential costs of decentralizing?

(3) Do the benefits of decentralizing outweigh the costs?

そしてこの3つの本質的な問いを発端に、さらに詳しい議論が続いていく。

分散化にともなう4つの懸念

Maloneは、分散化の潜在的利点を詳細に述べ、知識社会化が進行するにつれてその利点が大きくなると解説した上で、

「You may be thinking, "Sure, sure, all this decentralization stuff sounds great in theory, but…」

分散化についての「いい話」はよくわかったよ。でも、こんな懸念もあるよね。という意見に先回りして4つの懸念リストを挙げる。

(1) How often could it actually work?

(2) How can you make decisions effectively when no one is really in control?

(3) How can you guarantee quality or protect your company against catastrophic losses if no one is watching over things?

(4) How can you take advantage of economies of scale or knowledge sharing, if everything is so fragmented?"

この4つの懸念はとても重要であるゆえ、この懸念の存在によって分散構造が拒絶されて、堅い階層構造が維持されてしまうことが多い。

「These concerns are important—sometimes so important that they'll lead you to reject decentralized structures and stick with rigid hierarchies. Often, though, there are creative ways to deal with the potential downsides. Let's look at the four main problems with decentralization and the possible solutions.」

しかし、こうした潜在的欠点に対して創造的に対処する方法を考えよう、とMaloneは言う。

ここから先は、是非、原文を当たってみて、彼の論理展開を体験してみてください。

概念的論理展開と相いれない日本の現場主義

こういうモノの考え方は実に欧米流で、日本企業が不得意とするところである。何かインタンジブルで概念的な話に理論的構造を導入して、あれこれ議論するということを好まない。現場主義を体現した人がこういう議論に参加すると、「現場を離れた議論は空論」という一言で、こうした議論のすべてをぶち壊してしまうなんてことがよく起こる。

この文章の最後で、Maloneは、

「Once you've worked out the benefits and costs, you need to weigh them to decide whether decentralization will pay off. Here, again, however, there are no simple answers—much depends on your particular situation. But some simple rules of thumb can help you think through the choice.」

と書き、いくつかの経験則を提示している。その部分だけを引用すると、

(1) Decentralize when the motivation and creativity of many people is critical.

(2) Centralize when resolving conflicts is critical.

(3) Centralize when it's critical to have lots of detail—down to a very low level—united by a single vision.

(4) Centralize when only a few people are capable of making good decisions.

となる。気の早い日本の現場主義の人は「おい、その理論家は、結論を何て言っているんだよ、短く説明しろ」なんてよく言う。そしてこの4つを読んだら「何だ、結局、当たり前のことじゃないか。つまらん。お前たち、そんなくだらない議論ばかりしていないで、ちゃんと仕事しろ」

なんて言って、部屋を出ていってしまうでしょう。

しかし、重要なことは、Maloneの議論から、いきなりこうした結論めいた解は何なのかと探すことではなく、思考プロセス自身の意味を考え、そのシステマティックな思考プロセスを、自らの問題にあてはめてみることなのだと思う。

アメリカではよく、トップマネジメントの仕事は「To ask right questions」(正しい質問をすること)である、と言われる。Maloneが組織の分散構造について発する「right questions」と、「Right questions」を発するために導入するモデルや論理展開を、ぜひ味わっていただきたい。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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