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ソーシャルネットワーキング体験記II

2004/03/26 09:57
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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今日は、1月29日本欄「ソーシャルネットワーキング体験記」の第2弾。遅ればせながらOrkutGreeを体験してみたので、後半でその感想も書こうと思う。

ソーシャルネットワーキングは大手が買収する?

ところでソーシャルネットワーキングは、この3-4カ月くらいで一気に、ネット・リテラシーの高い人々の間では常識になりつつある。伝播速度はものすごい。たとえば、米国最大手Friendsterの会員数は500万人を超えたらしい。Business 2.0誌の「What's Friendster Selling?」は、無料サービスで会員登録500万人を超えたフレンドスターが、これからどういうビジネスモデルを組み立てるのかという記事を書いている。

「A year after making its public debut, Friendster has attracted, according to Abrams, a whopping 5 million users. At the same time, it has yet to generate a dime of revenue. Of all the lessons of the Internet bubble, maybe the most incontrovertible is that metrics such as site traffic and pageviews are meaningless in and of themselves; they matter only in conjunction with a credible plan for turning eyeballs into cash flow.」

これはしごく真っ当な問題提起である。トラフィックやページビューがいくらあっても、それ自身では意味がない。そういうアイボールをキャッシュフローに結びつける信頼できるプランこそが重要なのだ、と。ただ、この記事でこのあとに書かれているフレンドスターがカネを生み出すための構想は、どれもぴんと来ない。結局は、無料サービスを続けて会員数を増やしたところで大手に売却、という可能性が高いのではなかろうか。

「Certainly his company would be an attractive acquisition candidate for Yahoo, InterActiveCorp, Microsoft, or AOL.」

「But either way, it seems probable to me that Abrams and his backers will reach the conclusion that it makes less sense to try to be the next Google or Yahoo than it does to be the next ICQ or Hotmail -- Internet software phenomena whose founders decided that what they had on their hands were features, not companies, and happily sold to the highest bidders.」

がポイント。ソーシャルネットワーキングは、会社(company)ではなくて機能(feature)なのではないか。だからGoogleやYahooを目指すのではなく、ICQやHotmailを目指し、買収金額に最高値をつけた会社に売ればいい、というわけである。

僕がこれまで試してみたソーシャルネットワーキングは、LinkedInとOrkutとGree。そのわずかな経験だけからも、それが単体の会社になるのではなくて、ネット大手の一機能を担いながら成長していくタイプのものではないかという印象を持った。それは、ソーシャルネットワーキング単体ではビジネスモデルが描きにくく、「他のサービスとの組み合わせ」によって付加価値を高める一機能と見たほうがわかりやすいような気がするからだ。その「他のサービスとの組み合わせ」を考えるとき、全く新しい機能を組み合わせるのであれば、ソーシャルネットワーキングが主になって他機能を取り込んで膨らんでいける。しかし、従来からの機能(たとえば検索)を組み合わせるのであれば、ソーシャルネットワーキングをそちらの(たとえば検索)の一機能としてみたほうがわかりやすい。そしてそうであるなら、ネット大手の一機能を担うという役割、という位置づけが正当となる。

また、2月17日「ソーシャルネットワーキング、ビジネス化の視点」でも詳述したように、ソーシャルネットワーキングのゴールは、「a huge relationship map」(人と人の関係についての巨大マップ)を作り、そこから付加価値を抽出するPagerank+αのようなアルゴリズムを実装することである。そして、このゴールの実現はかなり先になる。よって、かなり先にあるこのゴールに到達できるまで、どういう体制で試行錯誤を繰り返せばいいのか、どういう種類のカネでその試行錯誤を続けるのか、ということが本質的だ。その意味でも、Deep pocketのネット大手の一機能として成長していくのが筋ではないかと、思うのである。

ネット・リテラシーと伝播スピードの相関関係

では次に、OrkutとGreeを体験して何を感じたかを、少し書いてみようと思う。

まず、現在のソーシャルネットワーキングの会員は、既に自分でホームページを持っていたり、Blogを書いていたり、1日のかなりの時間をネットで費やす、ネット・リテラシーの高い人たちである。そして、その人達の間でのサービスの伝播はものすごく速いし、一気にネットワークができる。

たとえば、僕の場合で言えば、OrkutやGree上の友人たちの多くは、(1)シリコンバレーの友達<上の世代、同世代も含めネット・リテラシーが高い>か、(2)日本の若い友達のいずれかである。

この(1)(2)の人達の間でのサービス伝播速度は確かにものすごく速いのだが、いったんそのネットワークを作ってしまったあと、あんまりやることがなくなってしまった。いったんネットワークを作ったあとは、頻繁に活用するというよりは、そのまま置いておいて気になったときだけ使うという感じ。別の機能(たとえば検索)をよりよくするためにこのソーシャルネットワークにたまったデータが使われるというのであれば意味があるが、ソーシャルネットワーク単体としてのトラフィックはあまり生まれていない。

そして面白い発見は、僕が本当にやりたかったことはできなかった、ということ。やりたかったのは、僕と同世代、僕よりも上の世代の日本の友達<これを(3)タイプと呼ぼう>を、このサービスに引っ張り込んで、彼ら、彼女らを、(1)(2)タイプの友人たちに紹介することだった。

僕が声をかけた(3)タイプの典型的プロファイルは、

「40代、50代で、日本企業や外資系日本法人で要職についていて、個人的にもたいへん魅力的な人。でも、ものすごく忙しい。その企業内及び仕事関係でのネットワークは膨大。メールは自分で見て、自分で書く。でもプロアクティブにネットを散策するなんてことはほとんどしない(する時間がない)し、ネット上でカジュアルに何かをするという習慣は根付いていない」

である。こういう(3)タイプの人たちへのサービス伝播速度は、(1)(2)タイプとは対照的にものすごく遅かったのだ。反応がとにかく鈍い。やはりネット・リテラシーが、若い世代とは比較にならないほど低いのである。ほとんどが反応なし。反応してくれた人でも、義理で入ったという感じが見え見え(写真なし、個人情報ほとんどなし、リンクは1か2程度)で、全く気乗りしていないのが明らか。こういう人たちとの連絡は、最近は全部メールですむようになったのだが、ソーシャルネットワーキングとなると、彼ら、彼女らには、どうしても敷居が高いようなのである。社会的責任も大きいため、個人情報の流出によりセンシティブになるという側面も強いのであろう。

持てるものと持たざるものを結びつける価値

僕がそれでも(3)タイプの人をソーシャルネットワーキングに誘いたいのは、(1)(2)タイプの人と異質であるゆえ、(1)(2)タイプとの出会いによって新しい価値が生まれると思うからなのだが、ぜんぜんうまく進まない。LinkedIn・CEOのリード・ホフマンに話を聞いたとき(LOOPからの転載「ビジネスマンの人脈をつなぐ米国版出会い系サイトの真価」参照)、ホフマンは、ソーシャルネットワーキングは、明らかにconsumer系とBusiness/Professional系の2つに分かれるとし(LinkedInは後者でOrkutやFriendsterやGreeは前者)、

「デートの相手やルームメートは、対照的な組合せです。二人の人間のパズルが合いさえすればいい。ところがプロフェッショナルのネットワークは、持てる者と持たざる者との間で成り立つ非対照的なものです。片方が投資する金を持っていたり、雇用ポストを抱えていたりする。だから赤の他人といっしょくたにされ、そのうえ見知らぬ人が次々とコンタクトしてくることを好ましく思わない。」

と語った。Business/Professional系のネットワークが「持てる者」と「持たざる者」との間で成り立つものという面白い考え方を披露してくれたわけだ。僕が誘っても入ってくれなかった(3)タイプの人は、ホフマンの言う「持てる者」というカテゴリーに極めて近い。こういう人たちが参加してくるか否かが、ソーシャルネットワーキングの「Crossingthe chasm」問題であるといえるかもしれない。

ところで、Esther DysonのBlogで「more on LinkedIn...and Orkut」というのがあって、「自分がイニシアティブを取って2人の人を結び付ける」機能がLinkedInにはない、と指摘していた。

「So now I'm using LinkedIn's new feature, LinkedIn for groups (for PC Forum)... www.LinkedIn.com and I realize there's one feature lacking (or I can't find it) that I've been wanting for a while...

Normally, the way it works is that Juan asks you to introduce him to Alice... but a lot of the time, *I* want to initiate the introduction. Juan doesn't even know about Alice, but I think they could really cook up a mean business, or relationship, or plot to murder the tyrant or whatever, if they could only meet. 」

僕も全く同じモティベーションを持って、(3)タイプの人をソーシャルネットワーキングに招待したのである。(1)(2)タイプの仲の良い若い友人に、(3)タイプの友人を紹介してあげたいなと思ったわけだ。Estherの場合は、ネット・リテラシーの高い人同士を結びつけようとしているので、その機能がLinkedInなどのサービスに実装されれば、それでOKなのかもしれない。でも僕の場合には、日本の(3)の人々がどうも簡単には参加してくれそうにないので、仮に機能が追加されても、今はできないなぁという感じなのである。日本のこの層の人達のネット・リテラシーの低さというのは、大きな壁だ。

Orkutのグローバルな価値

最後に、もう1つ感想としては、Orkutのグローバル性というのには価値があると思った。7-8年前に一緒に仕事をしていたドイツ人の友人<かろうじて彼とは年賀メール的付き合いが続いていた>をOrkutで招待してみたら、ネット・リテラシーの高い彼とは数時間後にリンクができた。そのあときっと彼は面白がって、友達にたくさん声をかけたのであろう。翌朝起きてみたら、7-8年前に一緒に働いて今は世界中に散り散りになって消息がわからなくなっていたヨーロッパの友達から、僕宛に、続々とメールが届いていた。これはなかなか楽しく、素晴らしい経験であった。むろんソーシャルネットワーキングがなくても、僕がそのドイツ人に「Reunionをやろう」と積極的に働きかければ、同じことがメールベースでも実現できたに違いない。でもそれだけのエネルギーを使ってまでは・・・、となり、何もしないのが普通。そういうエネルギーの壁を簡単に乗り越えてくれたのがソーシャルネットワーキングの価値であったわけだが、その価値をどの程度に見積もるかは人によって千差万別であろう。

ただ、膨大な会員数のグローバルなソーシャルネットワーキング・サービスを、GoogleとYahooとどこかが持って、それを誰もが無償でカジュアルに使うというのは、十分にあり得る未来だなと思った。音信がなくなった昔の友人を思い出し、「あっ、あいつは入っているかな」とソーシャルネットワークで検索しても、今はまだほとんど見つからない。でもその感覚が何年か後に変われば、サービスの意味は一変してくる。やはり、まだまだクリティカルマスにたどりつくには、莫大な時間が必要なのだろう。

それにしても、(3)タイプの僕の友人たちが、カジュアルにソーシャルネットワーキングを使ってくれる日は、果たしてやって来るのだろうか。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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