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年を取ってから後悔しない人生デザイン

2004/03/16 09:15
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umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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JTPA(Japanese Technology Professionals Association)主催の第1回シリコンバレーツアー(キャリアパスが主要テーマ)が無事終了。日本からの参加者(北海道から鹿児島まで広く分布)は、いちばん若いのが20歳になったばかりの大学2年生君。いちばん年上が28歳か29歳の社会人。つまり、全員20代の20人で、学生比率は6割くらいでした。朝から夜までのみっちり詰まったアジェンダに加えて、JTPAの有志たちと参加者の皆さんとは、セミナー終了後も、ホテルのどこかの部屋に集まって、反省会と称して、深夜まで、飲みながら話をしていたらしいです。元気だなぁ。僕たちも楽しかったけれど、きっと参加者の皆さんも充実した時を過ごすことができたのではないかと思う。

記憶に残るリアルな経験

何よりも、ツアー期間中の天気が最高に良かった。今年に入ってからずっと雨模様だったので心配していたのだが、ツアー開始日の数日前から、これ以上ないというシリコンバレーらしい天気が戻った。参加者の皆さんは、こちらでの数々の話の中身は忘れても、朝や夜の空気のすがすがしさ、日中の陽射しの強さや空の青さだけは、きっと長く記憶にとどめることになるだろう。

いずれツアーの詳細についてはJTPAサイトにアップしますので、ご興味のある方は、JTPAメーリングリストに登録しておいてください。これからも、できれば半年に1回はこのツアーを開催していきたいと考えており、その告知もJTPAサイトで行なう予定です。

ネットでのコミュニケーションというのも相手が誰だかよくわからないゆえスリリングで面白いが、やっぱり直接会って言葉を交わすことは本当に大切だと、今回の経験を通して痛感した。何が直接会うことの意味か。突き詰めて言うと、やっぱり顔である。言葉でのコミュニケーションに顔がついている。人の顔というのは恐ろしいほどの情報量を持っていることに、改めて驚いた。緊張が和らいだときの笑顔、真剣に何かを問いかけてくるときの表情、質問に答えて自分の悩みを話してくれるときの眼。皆、本当に、「いい顔」をしていた。そしてその中でも、特に「いい顔」をしている人が何人か居た。ここのところ少し疲れ気味だった僕も、そんな「いい顔」をたくさん見て、とても元気が出た。

ところで、僕が渡辺千賀村山尚武両氏と一緒に担当したセミナーは、「年取ってから後悔しない人生デザインの戦略発想」などといういい加減なタイトルでの、特に何の準備もしない、3人が好き勝手なことを言うリラックスした会だった。まぁ、よく準備したプレゼンテーションよりも、こういういい加減な会のほうが概して面白くなるものだが、特に渡辺千賀JTPA代表の毒舌風話術には、会場全体がどよめくほど、皆が楽しんでいた。

一流の仕事をする人に共通する特徴

どこまで伝わったかわからないけれど、僕が話したかったのはこんなことだった。

一流の仕事をする人に共通する特徴というのは、10年・20年・ずっと毎日1日中みたいな、おそろしく長い時間、1つのことをやり続ける才能だと感ずることが多い。他人から見ると「わぁ、大変そうだなぁ」と思うようなことを、本人は大変だなんてまったく思っていない。そういうのを半ば冗談で「解脱状態」と僕は呼んでいる。そして「解脱状態」にある人は、成功とか失敗とか、そういう外から見た評価尺度などまったく頭にない場合が多い。自分が世間的に見て、成功しているように見えるのか失敗しているように見えるのかなんてことにはぜんぜん頓着していない人が、実は大きな仕事をしている。競争が激化してビジネスのプロスポーツ化が進んでいるとか言われる現実の中で、勝ち残っている人を眺めてみると、その人の心の中には競争という概念などほとんど存在していないことが多い。

たとえば、シリコンバレーで起業して奮闘中の渡辺誠一郎さん(僕が彼について以前に書いた文章に加えて、最近の彼の講演を聴いての感想Blogもご参照)の例を出そう。もちろん彼は起業した半導体ベンチャーを立ち上げるための厖大な量の仕事を何年もし続けているわけだが、趣味は壊れた機械の修理、運転していて突然動かなくなってしまったクラシックカーを路上で修理するのがストレス解消法、そして時間があれば自分で蕎麦も打つ。奥様曰く「何か動かなくなっちゃった機械があったら主人を呼んであげてくださいね、本当に修理が大好きなの」。暇さえあれば「モノ」と戯れているわけで、「モノ」に関わっている状態というのは、彼にとって仕事なのか何なのか、もう区別がつかない境地にあるわけだ。大食い選手権で優勝するには、次の大食い会場へ移動するバスの中で、胃を休めるのではなく持参したお菓子をおいしそうに食べるくらいでなきゃならん、というのと全く同じ。Linuxのリーナス・トーバルズにとってのプログラミングだってそうだし、多くの一流オープンソース・プログラマーも同じであろう。仕事でプログラムを書き、家でもプログラムを書く。はたから見て信じられなくても、当人にとってはごく自然な状態なのである。

このことは技術者、研究者に限らない。成功している連続起業家というのは、いつも新しいアイデアを考えるのが自然体で、自分が作ろうとしている事業における試行錯誤や失敗をネタにああでもないこうでもないと一日中やっていて楽しくて仕方ない人だし、ロイヤーやアカウンタントで一流な人というのは、とにかく細部に徹底的にこだわりを持つ、緻密な仕事を愛する人だ。CEOというとんでもなくタフな仕事をまっとうできるのは、会社経営そのものが大好きで、会社のすべてのディテールを把握してパワーを行使するという行為を愛している人だけだ。

こういう「解脱状態」の人と、「その仕事がそこそこできるからやっている」普通の人が、同じ土俵で競争したら、普通の人に絶対に勝ち目はない。僕がシリコンバレーにやって来て学んだエッセンスはこれだった。

「できること」より「好きなこと」を

特に日本の場合、そしていい大学に入った学生ほど、専門として選ぶ領域を「好きだから、やりたいから」ではなくて「そこそこできるから」選んでしまうケースが多い。そしてそのままあまり深く考えずに職業を選び、何の疑問も抱かずに10年、20年と同じ仕事を続けて、ふとある日、「自分が心からその仕事を好きなのではなかった」ということに気づいて後悔する、でももう遅すぎて動くことができない、というような例を多く見る。年取ってから、こういう後悔だけは、してほしくないなと思う。こんなもったいない話はないからだ。

自分の本質とは何なのか、どういう状態にあると自分は幸福と感じることができるのか、他人の成功を見て嫉妬しないですむためにはどういう状況に自分があることが必須なのか。むろん簡単な問いではないが、問い続けるのをやめちゃダメだ。

「自分の好きなことは何?」「やりたいことは何?」と曖昧に問いかけるだけで、実は深く考えぬまま何かを思い込んで職業を選択しないこと。

自分の能力を勝手に低く規定して、自分の可能性を限定しないこと。

真剣に自分の本質を抉り出すべく意識的な試行錯誤を若いうちから繰り返し、自分にとっての最優先事項の明確なイメージを作ろうといつも考え続け、他人の言うことに左右されず自分の感性を信じて、そのイメージに向かって職業選択の試行錯誤を繰り返していくこと。できるだけ視野を広く、先入観を取り払いながら。

ぬるい仕事の仕方だとその仕事が本当に自分に合っているかどうかはわからないから、就いた仕事では、2-3年は限界に近いところを目指して挑戦してみること。

20代で意識してやらなければならないのは、こういうことなのである。20代ならば、まだ遅くない。試行錯誤の時間的余裕があるから。天職を見つけて「解脱状態」に至ることができる人は稀でも、こういう意識を早い段階で持つか持たないかで、その先の展開はうんと違ってくる。これからの厳しい競争を勝ち抜くカギは、えっそれって競争だったの? 自然にやっていたから知らなかったよ! と言えることなのだ。そういう対象は簡単には見つからないことを肝に銘じて、できるだけ若いときから、試行錯誤を意識的にすることが本当に大切なのだ。そんな試行錯誤の1つとして、またぜんぜん違う視野で世界を見る経験として、シリコンバレーという日本とは全く違う環境を一目見て、何かを実感してもらいたかったのです。

こうして文章に書いてしまうと、かえって何だか恥ずかしくなってしまうのはなぜだろう。陳腐な話を偉そうに書いているような嫌な気分になってくるからかな。でもいいや、ボツにはせずにアップしよう。僕はツアー期間中、こんなことを、20代の皆さんに伝えようとしていたのです。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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