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人々をゆるやかにつなげるウェブの本質と行方

2004/03/12 09:53
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umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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3月8日(月)〜3月12日(金)までの間、梅田望夫さんの代わりに川野俊充さんがゲストブロガーとして登板します。川野さんは梅田さんと同様シリコンバレーでコンサルタントをされています。P2PソフトのGnutellaの日本版を開発するJnutella.orgでの活動で知られるほか、テクニカルライターとしても活躍しています。川野さんの経歴については川野さんが運営するAbacus::blogをご覧下さい。

Guest Blog最終回の今日は、JOHO the BLOG!を運営するDavid Weinbergerが書いたSmall Peaces Loosely Joinedをご紹介したい(最初の3章はオンラインで読む事が可能)。

この本でWeinbergerはウェブの本質とは何かについて、平易な言葉でその定義・意味について語っている。出版はもう1年半ほど前になるが、そこに散りばめられているメッセージは機知に富みかつ的確で、まるで今おきているさまざまなネット上の変化を予見していたかのようだ。

「And, most important, the Web is binding not just pages but us human beings in new ways. We are the true “small pieces” of the Web, and we are loosely joining ourselves in ways that we're still inventing.」(Preface)

この引用はその本の序章で述べられている彼のウェブの定義であり、構成要素を(人間を含め)「小さな断片」と表現した上で、「それらが緩やかにつながっている状態の事」をウェブだとしている。

副題が「a unified theory of the web(ウェブのための統一理論)」とあるように、かなり思い切った抽象化をしているが、それが自然な言葉でウェブの本質を考えさせてくれるきっかけになると高く評価されているようだ。この本を議論しているBlogも結構あり、その中の1つ、Boxes and Arrowsの「Small Pieces, Big Thoughts」を少しずつ引用させてもらいながらWeinbergerの主張を汲み取ってみよう。

「Weinberger explains how the metaphors of “document” and “building”become conflated (or even mutated) into a single concept on the Web, saying “with normal documents, we read them, file them, throw them out, or send them to someone else.」

彼は「書類」と「建物」というメタファーが融合してウェブになったことで、空間が無いはずのウェブに空間の概念が生まれたとする。「普通の書類は読んだり整理したり捨てたり誰かに送ったりするが、そこに出かけて行ったり、訪れたりはしない。そこがウェブの特徴だ。ウェブには訪れる『場所』があり、興味の度合いと関連性で2点間の距離が定義される空間がある」

「In a very fundamental way, “the Web is a social place”(p.166)」

そしてその場所があるウェブとは「社会的な場所」であるとも述べている。混沌としているし、つながりが固い訳ではないが、ウェブを通じて私たちがつながる相手が「書類」ではなく「人間」だからだ。

「It teaches what it might mean to “replace the faceless masses with face-ful masses.” (p. 100) The Web has begun to change how we think of being public and having fame.」

しかし、現実世界と異なるのは、その緩やかな人とのつながりが「膨大」であり、極端に「個人的」であるところだ。「顔の無い大衆を個別認識できる大衆に置き換えてしまう事で、公衆とは何か、有名になる事とはどういうことかという定義をウェブは変えようとしている」。

「One change, Weinberger argues, is that the Web has actually returned us to a more community-based way of relating to one another.」

また、例えば、奇病に悩む人たちがお互いの存在を認知し、情報交換を行い、助け合うコミュニティを形成したりする例を挙げる事で、人間の関連性もウェブによって大きく変わり、それが「私たちの他人との関わりをよりコミュニティベースなもの」へと変化させたとしている。

つまり、思い切って彼の世界観を一文で表現すると、「ウェブとは、関心を共有する個人どうしが緩やかにつながる空間である」ということになる。

曖昧になる現実と仮想空間の境界

最近私が気になっているのは、この空間が現実空間なのか、仮想空間なのか、その境が実に微妙だということだ。

例えば、最近流行りのソーシャルネットワークサービスorkut.comでも友達リストやコミュニティーリストから様々な人を辿って行くと、思わぬところで思わぬ人と共通点がある事が分かり、実際にリアルな世界でもお近づきになれた、なんていうことが私は結構ある(業界人としては有名で会った事が無い人が、実は共通の友達が沢山いて、ビジネススクール時代の後輩のお兄さんだった、なんてことが判明して、実際に会いに行ってしまったりなど)。この場合、そこで私が得られたつながりは現実空間のものだと言える。

その一方で、orkut.comの中には架空の人格を装っていると思われる人も結構いて、どこからか盗んで来たモデルの写真などを貼付けて人気を集めようとしていたりする輩の存在もそれとなく分かったりする。よーく見ると何かがおかしいと気がつくのだが、明らかに気がついていない人が大勢群がっていたりするのを見ると、彼らにとってはリアルな世界とバーチャルな世界の境目が曖昧になってしまっているんだなと感じてしまう。他人に成り済ましている人は単に自己満足でそうしているのか、他人の個人情報を盗もうとしているのか、意図は不明だが、目を奪われている側は可哀想なものである。

もっと極端な例をあげると、ケータイ電話でデート相手を捜すいわゆる「出会い系」サイトなどでは女の子たちの写真を並べてあるけれど、向こう側でメールの受け答えをやっているのは実はアルバイトの男性だ、なんていうことはよくあるらしい(実際その仕事をやっている自称「ネットおかま」の暴露サイトを見た事がある)。ひどい場合は、お誘いのメールが送られてくるといくつかのパターンのメッセージを返信したりして、しばらく自動応答で相手した後、断りのメッセージを送るエージェントプログラムが稼働していて、利用料金をただ取りするという悪徳業者もいたりするとのことだ。

こうなるとサービスに加入してお金を出して、女の子たちを誘おうとせっせとケータイ電話にメッセージを打ち込んでいる人はそれこそ「マトリックスの電池」である。ウェブの向こうにいるのが現実の人だと思い込んでいて、その相手を「関心を共有する個人」だと見なし「緩やかにつながる」ためにおカネを払ってしまうのだ。

もちろん、こうした仮想現実を体験させることでビジネスを行う事は別に珍しくなく、電子ゲーム業界の究極のゴールはまさにこれだ。リアルな画像、リアルな音声、リアルなインターフェースを追求し、人に仮想現実の世界で快感を感じてもらうことを商売とする。もちろん、上記の悪徳業者のように顧客をだましている訳ではないが。Massively Multiplayer Game(膨大な数の人たちで1つの世界を共有するネットを通じて遊ぶゲーム)にハマりすぎて15時間飲まず食わずで連続プレイをした挙げ句、ショック死してしまった韓国の高校生のニュースを聞いたりすると、本人が自覚しているからといって、仮想空間と現実空間の境が見えるとは限らないことを思い知らされる。

さて、こんな話をしたところで、現実の世界を見てみると、やっぱり朝起きたら、顔洗って朝ご飯作って食べて出かけなければいけないのである。現実からは逃れられないという現実がそこにある。それは確かに実感のある安心でもあるのだが、まだインターネットが普及して10年足らず。これから10年後、20年後もやっぱり自分はウェブを使っているだろうし、そのときに自分がどのくらい仮想/現実を自覚できているだろうかということを考えてみると、攻殻機動隊、マトリックス、Avalonの世界は空想の世界だよと言い切れないのも確かなのである。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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