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ピクサーはこれからどこへ行く?

2004/02/23 08:42
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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さて、アップルといえばジョブズ、ジョブズといえばピクサー。というわけで、先週金曜日の「アップルはこれからどこへ行く?」に引き続き、今日はピクサーに絡んだ話を。

アップルとピクサーにシナジーはあるか

金曜日に題材とした「Where Does Apple Go from Here?」の中で、Yoffie教授は、ピクサーのことについて、「Do you see a synergy in the future between what Pixar does and what Apple does?」という質問に答えて、

「No, other than they're both creative businesses in some way, shape, or form, but Pixar is basically a movie studio, which relies heavily on creative talent and computers to build their products. They're not selling computers and software to large numbers of people. Today Pixar sells a single product to a single company, and there is no underlying synergy with Apple. There is nothing that is meaningful enough to make an argument that these two things can make a CEO better by virtually doing the two of them together.」

アップルとピクサーの間にはシナジーはないと言い切っている。そして、

「There's the other obvious question. Can anybody really run two companies simultaneously, Apple and Pixar, in two different businesses without sacrificing something? Can you bring enough attention to both companies and really be running them? I doubt that anybody can really do that well.」

そういう全く違う2つの会社を、何かを犠牲にすることなく同時に経営できるものなのか、と疑問を呈している。

ジョブズにしてみれば、「大きなお世話だ」ということになるに違いない。

ソニーがピクサーを買収するという噂

さて、ピクサーについては、先週木曜日に、「ソニーがピクサーを買収するのではないか」という噂が流れて、一時、ピクサー株が上がったりした。

HollywoodReporter.comによれば、

「Shares of Pixar Animation Studies jumped amid high trading volume Thursday as they were buoyed in part by a market rumor that Sony Corp. could make a takeover play for the animation powerhouse. However, Wall Street observers were quick to call that scenario unlikely, and officials at both companies said they declined to "comment on speculation." Nonetheless, Pixar shares closed up 3.5% at 68.11 after going as high as 70.50 intraday. (Dow Jones)」

とのこと。ディズニーとの提携解消が発表された直後で、今はさまざまな思惑がうごめいている状況だと思われる。もちろん、ジョブズがディズニーとの提携解消を、Alternative構想なしに行なうはずがないのであって、色々なレベルでのシリアスな議論が、ソニーを含む各社との間で行なわれていることは間違いない。

この噂が流れる少し前に書かれたと思われるFortune誌最新号のジョブズについての記事「What Does Steve Jobs Want?」(有償)でも、しきりにソニーのことが書かれている。書きたいことがあるのだが何かの事情によって書けないのか、自信を持って書くには証拠が足りないのか、何が言いたいのかよくわからない不思議な記事になっている。

ソニーとジョブズの間の関係についての「ほのめかし」ばかりが目につく。

「Sony CEO Nobuyuki Idei, who proposed buying Apple back in the early 1990s only to be vetoed by Sony's elders, clearly admires Steve, and visits him whenever he can.」(90年代前半にアップル買収を提案したがトップに拒絶されたという経験を持つ出井氏は、間違いなくジョブズを尊敬していて、スケジュールが許せば、いつも彼を訪ねる)

とか、

「What's more, Idei recently restructured Sony into what is effectively a holding company, with separate units for each of its main businesses. Thus it doesn't take too much imagination to speculate that he might find it attractive to partner with, or perhaps even acquire, Apple and Pixar, and let them continue to operate as independent entities, meanwhile luring Jobs onto his board of directors. Sony officials don't deny the idea has been discussed. All Idei will say is "We would like to work more closely with Steve."」

ソニーの機構改革と引っ掛けて、「アップルやピクサーを買収しても、それらを独立して経営していけるように、またその場合にジョブズをソニーの取締役として迎えられるよう打った布石かもしれない」みたいな話や、出井氏はきっと「自分たちはもっとスティーブと密接に仕事をしたいのだ」と言うだろうというようなことも、書いている。でも最後まで、曖昧な表現に終始している。

ジョブズはどん欲すぎる?

さて、ピクサーとジョブズについては、エコノミスト誌の「Finding another Nemo」も、よくまとまっているので、参考文献としてご紹介しておきたい。この記事は、ピクサーのディズニーとの提携解消を受けて書かれた記事であるから、ソニーとのそういう生臭い話は出てこない。慎重なエコノミスト誌らしく、結論は、ディズニーとの提携解消はリスクが大きすぎるのではないか、さすがのジョブズもちょっと欲を出しすぎなのではないか、爪を伸ばしすぎなのではないか、というようなところに落ち着いている。明日は、ヨーロッパ的視点についてある題材をもとに触れようと思うが、これは、シリコンバレー的冒険的戦略を見たときの、ヨーロッパの典型的な反応である。

この記事の中には、ディズニーとピクサーが、どういう契約でこれまで仕事を続けてきたかについても言及がある。

「On January 29th, to the amazement of Hollywood, Pixar and Disney announced that they had broken off talks to renew a seven-year-old deal under which Disney funds half of the production costs of Pixar films and receives half of the profits plus a distribution fee.」

ディズニーとピクサーは制作費も利益も折半にしていたわけで、ジョブズが求めていたのは、これよりもさらに強気な契約なのだということがわかる。

いずれにせよ、ピクサーの今後にも要注目。アップルとピクサーという、世間をあっと驚かせ続ける2つのクリエーティブな会社を同時に経営するのは、確かに凡人(ハーバード大学教授を凡人と言っては身も蓋もないけれど)の目から見れば、両立させることなどできない無理な仕事に見える。しかし、それをやり遂げているところが、スティーブ・ジョブズの凄みなのである。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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