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グローバル化が進む分散開発体制の今

2004/02/12 09:10
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umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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村山さん、ゲストブログ7回、どうもありがとうございました。

読者の1人として僕もその内容から大変刺激を受けたので、週末も含めて少しよく考えた上で、来週改めてテーマとして取り上げたいと思う。

さて、1月15日の「IT産業の雇用とイノベーションの未来」では、オフショアリングの潮流と米国から海外への雇用流出の問題を取り上げたが、今日は、この潮流の前提となるDistributed Development(分散開発)の今について考えよう。ACMという学会の月刊誌「ACM Queue」の新年号は、「Distributed Development」特集である。無償で大部分が読めるようだ。

前にも書いたことがあるが、アメリカの学会は、IEEEもACMもきちんとタイムリーにいい仕事をしている。

グローバルスケールでのソフト開発

まずは編者Edward Grossmanの「New World Order」で、今日は、この特集を概観してみることにしよう。

「This is the new world order: software development on a global scale.」

これは、グローバルスケールでのソフト開発という新世界秩序である。そしてそれは、「numerous small teams here and there "sharing the pain" across time zones」、つまり、たくさんの小さいチームが、そこここに分散し、多くの時差を越えて「痛みを共有する」ことだ。

「Nowadays it's not atypical to have multiple teams on multiple continents working on the same project. It's not just financial pressures that come to bear and break developers into teams. The sheer size?raw lines of code?of many of today's projects means they're just too big for one group to handle on its own. And whether teams are spread across a campus or across multiple continents, distributed development affects the way that we write code.」

複数の大陸上の複数のチームが同じプロジェクトに関わることがもういまや異常なことではなくなった。それはコストを安くしようという動機ばかりでなく、プロジェクト・サイズが大きくなりすぎて、1つのグループでは対処できなくなったということも原因になっている。そこで分散開発の出番になる。

「How does this affect software development? How do we deal with it? Well, true to our mission, ACM Queue isn't going to answer any of those questions. Instead, we've put together a collection of articles on the topic that will help you reach answers of your own while facing the technical, and sometimes not-so-technical, challenges of developing software in a distributed environment.」

ACM Queueでは解などは提示できないまでも、物理的に分散した環境でソフトウェア開発を行なうチャレンジについての論考をとりまとめたので、何かの役に立つのではないか、と書いている。

シスコの経験から得られたもの

第1論文は、シスコのdirector of engineering であるMike Turnlundが書いた「Distributed Development Lessons Learned」である。

「Mike has taken stock of all past lessons learned as a way to explore what's hard about multi-team, multi-site development. Tool selection, architecture decisions, Mike's covered it.」

マルチチーム、マルチサイト環境で何が難しいのかについて過去の経験を披瀝している。ツール選択からアーキテクチャ決定まで、この論文でカバーされている。

この論文の第6章の結論で、

「In order to keep energy focused on the development tasks at hand, you will need to overcome hurdles in workgroup containment, componentization, development environment, and verification. Not only does distributed development add unique difficulties in all of these areas, but your own specific team makeup will present challenges all your own. It is my hope, however, that having looked at some of the common problems and lessons learned in these four key areas, you'll be better suited to develop solutions for your own distributed development projects.」

と述べられている通り、彼は分散開発の要所を、(1) containment(封じ込め)、(2)componentization(部品化)、(3)development environment(開発環境)、(4)verification(検査)と総括し、それぞれに1章ずつを費やしている。

オープンソースの開発体制

第2論文は、director of the Apache FoundationのKen Coarによる「The Sun Never Sets on Distributed Development」である。「managing the Apache project means managing a distributed development process.」(アパッチのプロジェクトというのは分散開発プロセスをマネジメントすることを意味する)というわけで、このテーマには適任の書き手である。今日ご紹介している、それぞれ長文の原文のなかで、どれかひとつ当たるとすればこれがとっつきがよいかもしれない。CNET Japan「末松千尋・オープンソース戦略を探る」連載の11月28日「Linuxとオラクルを組み合わせるミラクルの狙いは?」の後半で、ミラクル・リナックスの吉岡弘隆氏が、オープンソース世界でのコミュニケーションについて語っている部分があるが、その部分も合わせて読まれればと思う。

「Of course this begs the question, if distributed development is so hard, why aren't there better tools for it? Why can't we attach this instant message to that line of code as a comment?」

分散開発がそんなに大変ならば、どうしてもっといいツールがないの? どうしてインスタント・メッセージをコードにコメントとして添付できないの? こんな質問が当然出てくるだろう、というわけで、第3論文は、IBMのLi-Te Chengらの「Building Collaboration into IDEs」である。

カルチャーの問題

第4論文は、University of Michiganの Judy and Gary Olsonによる「Culture Surprises in Remote Software Development Teams」である。分散開発の難しさの源泉となるカルチャーの衝突の問題を取り上げている。

そして最後に、オラクルの東海岸開発拠点長Steve Haganインタビューがある。この開発拠点は、オラクルがDECから9年前に買収して、現在に至っている。アメリカ国内といえども、東と西のコラボレーションは色々な意味でけっこう大変だ。現在のグローバル分散開発には、米国内分散拠点でのノウハウが活かされているのだろう。

マスメディアでは、オフショアリングや中国・インドへの雇用流出といったキャッチーな話題ばかりが、あたかも簡単に実現できる話として喧伝されているが、その背景に、こうした分散開発に関するさまざまな視点での経験の蓄積が地道に共有されたり、新しい道具を開発することについての試行錯誤が行なわれている、ということを知っておくのも悪くなかろうと思う。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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