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CNET Japan ブログ

ペプシとiTunes Music Store(ほか2本)

2004/02/05 08:00
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プロフィール

umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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[ゲスト] 村山尚武 Naotake Murayama
2月2日(月)〜2月10日(火)までの間、梅田望夫さんの代わりに村山尚武さんがゲストブロガーとして登板します。村山さんはシリコンバレーのあるベンチャー企業でBusiness DevelopmentのDirectorを務められており、ご自身でも「Sotto Voce」というBlogを運営されています。村山さんの経歴についてはこちらをご覧下さい。

今日は普段のブログっぽく、異なるトピックをいくつか。

いただいたTrackBack、コメントから

まず、これまで頂いたTrackBack、コメントへの対応から。

第1回「マイクロソフトのiPod論争に見るBlogと企業の関係」に対する、「会長日記」さんのTrackBackは、Scobleの「公人」としての自覚と責任感に対し、以下の感想を述べている。

「特定の会社に関して意見を書くこともプロフィールが明らかになってしまうと仕事に影響があるからだ。そういう意味で身元を明らかにしてブログをしている人はえらいなあ、というか公人としての自覚ができている人間なのだな、と思う。」

自分の身元どころか、「今日はどこに行って、誰と食事した」「今日は私の誕生日」といったかなりパーソナルなことも書いている。おかげで、パロアルトに「チーズケーキファクトリー」の支店ができ、そこの従業員はタブレットPCを使いこなしている、などということも知ることができるのだが、自分のみならず他人の情報までさらすということは他人に迷惑をかけた場合責任をとる覚悟があるのだろう。そういう立場を、自ら選んだとはいえ背負い込んでいるので、疲れるのも無理はないか。

同じ第1回目に対するNeons Wired SymphonyさんのTrackBackは、DRM規格を通じたデジタル家電の「囲い込み」の可能性へと話を発展させ、家電メーカーに対する警鐘を鳴らしている。

「もしこのNGSCB構想がうまく行った場合、デジタル家電に盛り上がっている家電メーカーが一気に危険な状態に陥ることになる。A社のホームサーバを買うとすべて他の機器もA社で揃えなければならない・・というのでは、次期PCの巨大な波に飲み込まれてしまうだろう。」

そしてまた、「家電メーカーは単独のメーカーに閉じた仕様でなく、Wintelに依存しないDRMを国際規格としてきっちり規定するべきだ」と提言している。

私としては、コンソーシアム主導での共通規格作りは利害関係の調整などで時間がかかりすぎ、その間に何かのヒット製品を持った企業がその普及台数を利用してデファクトスタンダードを作る、というパターンに陥りはしないか、という危惧を感じる。(アップルのAV機器進出、などというアイディアもこの場合冗談でなくなる)また、PC業界に対抗した独自規格などを作るとPCと家電の融合を求めるユーザーにとってはは、互換性を考慮しなければいけない規格がまた1つ増えることになるので、かえって不便な世界が展開するのではないだろうか。

代替案として、世の中のDRM規格の全てに対応できるような機能を作りこみ、利便性を確保するとともに、IT業界側で複数のプレーヤーが共存し、一方的な交渉力を与えないようにする、という戦略を採り、デジタル家電市場の急拡大(=既存家電からの買い換えの促進)を狙う、という手もあるように思う。Neonsさん、いかがでしょう?

第2回目の「文科系のためのナノテクビジネス入門」に対しては、「ななす」さんより以下のコメントを頂戴した。

「インテルはファウンダリを持ってるし、Google だって巨大なデータベースを自前で運用してるはず。“固定費負担を避け、身軽なままでテクノロジー開発に特化”というと、ARM のようなファブレスが頭に浮かびますが。」

これは私の言葉が舌足らずであった。私の書いた「固定費負担を避け、…」というモデルをもうちょっと明確にすると 、

「コアとなるテクノロジー(より広く、「IP」と言っても良いかもしれない)を形成したら、その維持と発展に必要な固定費(主に開発費=ヒト)はかけつづけるが、ビジネスオペレーションに必要な固定費はアウトソーシングやパートナーシップ、そしてコモディティと化したテクノロジーの活用で極力抑え、新たな製品・サービスを生み出す場合に追加的に(インクリメンタルに)発生する固定費を最小限にし、1つ1つの新規事業の売上規模は小さくても、高収益を実現する」

というものである。これはあくまでもGoogleをイメージしたものであり、インテルはあてはまらないつもりで書いたのだが、説明が不足していたようである。

このモデル、「カネのありすぎるのも考えもの、ベンチャーの成功要因」で梅田さんが書いておられた、「カネがありすぎるとミステイクにつながる」という考えとも通ずるものがあると思う。スタートアップの経営の端くれにいる身としては、バブル崩壊後のシリコンバレーで、潤沢なファンディングを受けることができず、「すぐ儲けを出さないといけない」というプレッシャーに身をさらし、「いかに無駄を省くか」「何がおカネを使うべき事で、何がそうでないか」ということを設立当初から考えることを迫られ、結果として景気の回復しつつある今、大化け直前に来ている会社も結構あるように思える。

「不況期こそ偉大な会社の創られる時」というのは以前スタンフォード大学でMarc Andreessenの講演を聞いて思ったことだが、それはこういう「引き締まった」ビジネスモデルの企業が登場する、というのも一因かもしれない。

ペプシのキャンペーンとiTunes Music Store

次はiTunes Music Store関連の話。

アップルとペプシがタイアップして、ペプシのボトルキャップ1億個にiTunes Music Storeから1曲タダでダウンロードできるコード番号をつける、というキャンペーンが開始された。

以前自分のブログでこのキャンペーンについての疑念を表明したが、日曜日のSlashdotのエントリで、iTunesユーザーでもないのにこのコードがあたってしまったユーザーに向け、コードの寄付を呼びかけるサイトが紹介されていた。

名付けて、 TuneRecycler.com

このサイト、どこまで正確なのかはわからないが、このキャンペーン絡みで、iTunes Music Storeの経済構造についていろんなデータを掲載している。

「USA Today reported that Pepsi expects only 10-20% of all caps to be redeemed. That means 80-90 million of them will end up in the trash. 」

まず、1億個のうち、10-20%だけが実際にiTunes Music Storeで利用され、残りはゴミ箱行きになってしまうという予想を紹介している。

「When a cap is redeemed, Pepsi pays Apple 99 cents for the song, and Apple passes along 65 cents to a record label. 」

キャップについているコードを用いて1曲ダウンロードされるたびに、ペプシからアップルに99セント(定価)が支払われる、ということである。すると、このキャンペーン、アップルがiTunesのプロモートをするためのものでなく、ペプシが自らの宣伝のためにアップルを利用した、ということか。私の思っていたのと逆である。

また、アップルからレコード会社に支払われるのが1曲34セント。先週号のBusinessWeekによれば(購読が必要なのでリンクは省く)、これまでの7カ月で3000万曲がダウンロードされたとのことなので、単純に計算しても1000万ドル少し、10億円少々がアップルの粗利ということになる。間接費がどのくらいかかっているかはわからないので何とも言えないが、開発費負担を考慮しなければ、「カミソリと刃のモデルの逆」というほど、曲の販売が「儲かっていない」わけでもないのではないだろうか。10億円は確かにアップルにとってはゴミみたいな金額であろうが。

「When you buy an iTunes song from a major label, there's a good chance the artist won't see a penny, because they're still recouping. If the artist does get a cut, it's only about 10 cents from the 99 cents you paid. But we can do better! 」

しかも、iTunes Music Storeで曲を買っても、アーチストの手元にはほとんどお金は渡らない、と主張している。その理由として「they're still recouping」というのは主語が曖昧だが、「レーベルがこれまでアーチストに払った契約金などを回収しているから」という意味だろう。「払ったとしても、10セントだ」ということは、良くてこれまで300万ドル、3億円程度がアーチストに渡った事になる。iTunesを通じて曲を売っている何百人ものアーチストにとっては、確かに大したことはない金額である。

このTuneRecycler、目的としては「無駄になるダウンロードコード」を寄付してもらい 、それをiTunes Music Store上で ノンメジャー、インディーズレーベルのアーチストの曲の購入にあて、ビッグネームでないアーチストを支援しよう、というものである。運営しているのはDownhillBattleという、メジャーレーベルの儲け第一主義を正し、音楽業界の改革をはかろう、という団体である。

アップル、思いがけもよらぬところで社会活動団体にとって単なる意見表明の場にとどまらない、実効のある手段を提供してしまったようだ。それはそれで、社会的インパクトを与えているので、つくづく興味の種のつきない会社である。

社員データベースとソーシャルネットワーキング

昨日のエントリーで、ソーシャルネットワーキングサービスを取り上げ、「関係性の中身と質の理解がなければ本当の価値はない」と主張し、「より広大なインターネット全体に散らばった情報を、『ある個人の視点から見たソーシャルネットワークの把握』という切り口で解析する仕掛けを提供する、という形でも成立するのではないだろうか。」という発言をしたが、それとちょっと近い印象を受けるTacit Knowledge SystemsのActiveNetというアプリケーションが今号のBusiness 2.0誌で紹介されていた。

記事自体は残念ながら有料購読が必要であるが、このActiveNet、以下のような流れで機能する。

企業のネットワーク上にインストールされたActiveNetのソフトウェアがネットワーク内に保存されている文書、Eメール、プレゼンテーションといった情報をモニターし(個人のPC上のデータにはタッチしないそうである)、社内で「誰が、どんなことについて、どんな知見を持っているか」というプロフィールを作り上げる。

社内のユーザーがActiveNetに対し「この問題について知りたい」というクエリーを発すると、システムが形成されたプロフィールを検索し、その問題について役立つ知見を持っていると「思われる」社員に「こういう人が、こういう問題についてあなたの意見を聞きたいと言っていますが、要請を受けますか」という「招待」を出す。招待された側がそれに応えると、コラボレーションが開始される。

情報探しの効率が高まるだけでなく、情報を作成した本人にとってあまり重要でなく、従ってその存在が喧伝されていないような情報が埋もれてしまわずに、それを必要とし、役立てる事のできる社員に活用される、ということを通じ、組織としての生産性が高まる、という効果も期待できる。

ActiveNet、既に製薬会社のAventisで採用され、新薬の臨床試験の短縮に役立ったそうである。

「何だ、ナレッジマネジメントシステムじゃないか」と思うかもしれないが、いわゆるナレッジマネジメントシステムは、社員がシステムの仕様に従って定型化された形で情報を提供するという「トップダウン」パラダイムである(ビジネスプロセスをシステムに合わせて変更するため、あまり普及が進まない)のに対し、これは自然発生的に、様々な形であちこちに散らばっている情報から社内の「知恵の在処」を検出し、「知恵を求める人」とつなげる、という「ボトムアップ」の仕掛けである。

記事には書かれていないが、このシステムを活用すれば、やがて「誰が、誰に、何を尋ね、どういう出した」という情報が蓄積され、社員間の影響関係も把握でき、本当に役立つ「ネットワーク上の点と線、そして線の性質理解」が可能になるのではないか、という印象を受けた。

Tacit以外にも、こういう企業向けのソーシャルネットワーク的システム、サービスを売っているベンダーはいくつか登場している。面白いものなので、近々また取り上げたい。たぶん、自分のブログの方になると思うが。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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