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iPodはハードウェアビジネスの常識を越えるのか

2004/01/21 09:21
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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New York Timesの大物記者John Markoffが、アップルのiPodをめぐって書いた「Can Hardware Rise Above Software?」の冒頭は、

「LEAVE it to Steven P. Jobs to sell the razors and give away the blades.」

である。かみそりはただ同然で売って、かみそりの刃で儲ける。プリンタの消耗品ビジネスを代表に、コモディティ化したハードウェア事業のビジネスモデルを考えるときには、必ず出てくる古典的な「かみそり(razors)とかみそりの刃(blades)」の話。その逆をジョブズはやっているというのが、この冒頭の真意。つまり、iTunesの音楽配信では儲けが出ないけれど、iPodで儲けるビジネスモデルだと。まぁ、これは一時的な現象である可能性もあると思うが、Markoffの記事を読んでみよう。

Markoffはまず、マイクロソフトのXboxを例に出す。

「A notable example has been Microsoft's money-losing Xbox video game business. By hemorrhaging money on each video game console (razor) sold and hoping someday to make it up on game software (razor blades), Microsoft's home and entertainment division reported losses of almost $1 billion last year」

今のXboxをこういう文脈で置くことにはやや抵抗を感じるなぁ。確立した事業モデルとしてプリンタと消耗品の例を出すほうが正しいと思う。余談になるが、以前セガの北米事業をやっていた方に失敗の原因について伺う機会があったが、彼はただシンプルに「ハードを売れば売るほど損するというバカなビジネスモデルをバブル期に調子に乗って採択したからです」と言っていたのを思い出す。ここまではイントロ。

常識に挑むiPod

本題はiPodとiTunes。ジョブズは「かみそり(razors)とかみそりの刃(blades)」の常識に挑んでいるとMarkoffは言う。

「Now, along comes Mr. Jobs, the chief executive of Apple Computer, who once again is standing the common wisdom on its head. For its fiscal first quarter of 2004, Apple sold nearly 750,000 of its palm-sized iPod digital music players (razors) for an average price of $400, while selling 30 million songs (blades) for about 99 cents each. While Mr. Jobs has repeatedly said that Apple makes little or no profit from each song downloaded, the company said last week that its iPod sales were crucial to Apple's financial resurgence.」

アップルの第1四半期(10-12月)の結果。平均400ドルで75万台のiPodを売り、99セントで3000万曲を売ったが、iTunesからの儲けはほとんどなかなく、iPodこそアップルの収益性に貢献している。

「Mr. Jobs's next big thing is buttressed by mounting evidence of a post-PC era in which silicon, not software, will be king. That is likely to bring wrenching changes in the technology world, largely dominated by Microsoft for the last decade. Under Microsoft's hegemony, hardware became a low-cost commodity. Now it may be software's turn.」

ジョブズの次の大仕事は、ポストPC時代には、ソフトではなくてシリコン(ハード)がキングである証拠を示すことだ。それができれば、過去10年のマイクロソフト支配に終止符が打たれる。マイクロソフトが覇権を取った時代には、ハードは低コスト・コモディティになった。次はソフトがそうなる番だ。

MarkoffはアップルのiPodのビジネスモデルから、次世代の産業構造を俯瞰できるのではないかという仮説を持っているのである。

この記事で引用されているEE Timesの記事「Silicon, not just software, key to pervasive media」はここで読める。

1月にラスベガスで開かれたConsumer Electronics Showを取材しての半導体産業側からみた総括記事である。

ハードウェア事業の常識とは

しかし、Markoffの記事に対するTechdirtのコメントのほうが明解で、僕はこちらを支持したい。

「It had become common wisdom over the past few years in the technology world that hardware was a commodity business - and unless you were a Dell and could figure out some way to produce the hardware cheaper, you couldn't make any money.」

これがハードウェア事業の最近の常識だが、

「However, along comes Apple, and they appear to have figured out a way to make money off of hardware. They're selling their iPods like crazy - partly due to the "loss leader" sales of songs from iTunes. In other words, the digital product (the songs) has become the commodity, while the hardware is where the margins are. This shouldn't be a surprise really.」

どうもアップルは、ハードから儲けを出す方法を見つけ出したらしい。iTunesをロス・リーダーとして、iPodを売りまくっている。言い換えれば、デジタルプロダクト(音楽)がコモディティになり、ハードこそマージンが出る場所。でもこれはそんなに驚くべきことではないのだ。

「For all the talk of commodities, it always comes down to marketing and perceived value.」

「Steve Jobs does this via marketing. There are plenty of products that are cheaper than the iPod and are equally functional - but the iPod has been able to keep selling at a higher price by being better at the little things - increasing its perceived value, and increasing their ability to keep selling iPods. It's an understanding of the entire package of what they're selling that lets them do this. Rather than focusing on how to profit off of every little piece of the pie, they're focusing on what they know they can outperform the competition with - and making sure that the rest is sold at about cost. There's nothing magic about it - it's just good marketing.」

コモディティ・ビジネスにおいて、マーケティングとPerceived valueが大事なのは当たり前の話で、ジョブズはきちんとそれをやっているだけなのだ、というのが、TechDirtの指摘の要点であり、僕もその通りだと思う。

iPodとiTunesのどちらで儲けを出すかについての議論は、事業がまだスタートしたばかりの段階なので、とてもとても時期尚早である。

また、このビジネスモデルの途中経過を見て、それを産業全体に俯瞰できるかどうか(Markoffの視点)も大いに疑問だと思う。

コモディティビジネスの成功要因

ただ、ポストPC時代について、ハードもソフトもコモディティしていく時代における成功要因とは何なのかについては、今日ご紹介したような問題意識を持って考え続ける必要がある重要テーマなのだ。コモディティ化時代のハード事業の戦略について、これまでとは少し違った動きが色々あるのは事実で、このあたりに興味のある方は、「技術のコモディティ化を象徴するインスタントカンパニーの登場」、「日本とあまりにも違う家電に対する米国の認識」も合わせてご参照ください。

最後に、やはりコモディティ・ハードといえば、相変わらずバイブルはデルである。

AlwaysOnには、マイケル・デルの肉声(2003年11月のGurleyによって行なわれたインタビュー)が全6回連載の形で掲載され始めている。その第1回が「The Dell Pony Has Two Tricks」である。「The Dell Pony Has Two Tricks」というタイトルは、HPのフィオリーナによる「Dell is a great company but a one-trick pony.」(デルは偉大な会社だが芸が一つしかないPonyだ)発言に呼応したもの。今のところ、第3回まで掲載されているが、その中では第1回がそこそこ面白く、第2回と第3回はあまり面白くない。第4回以降はAlwaysOnのホームにいずれ掲載されると思いますので、興味のある方はそちらをどうぞ。また、Sotte Voce「Interview with an Innovator」には、この第1回部分の簡単な解説が、Clayton Christensenの新著「The Innovator's Solution」との関連で述べられているので、そちらもあわせてご参照ください。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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