お使いのブラウザは最新版ではありません。最新のブラウザでご覧ください。

CNET Japan ブログ

Wi-Fiと音楽配信が米国で盛り上がる二つの理由

2003/10/21 10:05
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

プロフィール

umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
ブログ管理

最近のエントリー

本欄10月14日「日本とあまりにも違う家電に対する米国の認識」では、コンシューマーエレクトロニクス製品に対する日本とアメリカの違いを題材としたが、今日は違う角度から、Wi-FiとOnline Musicを取り上げて、日米の違いについて考察してみよう。

「日米の違い」と思わず紋切り型の表現をしてしまったが、よく考えてみると、世界中でアメリカだけが特殊で異質であるゆえに、日米が違うのは当たり前、とも言えるので、「アメリカの異質さ」が今日のテーマだと言い換えてもいい。

Bill Joyの後を継いでSunのCTOになったGreg Papadopoulosの「Creating a truly 'open' wireless network」を読んでみよう。

「Not only can wireless signals now penetrate buildings, handsets are smaller, they have color displays, the batteries last longer, and some phones even take pictures.

Despite the real value (and impressive engineering) in all those developments, people aren't really satisfied. Could a clearly inferior technology that's known as Wi-Fi change all that?」

がこの文章の書き出しである。「携帯端末は素晴らしいものになった(ビルの中でも使える、端末は小さくなり、カラーディスプレイもつき、電池だって寿命が伸び、写真だって撮れる端末もある)というのに人々(アメリカ人)はまだ本当には満足していない。Wi-Fiという明らかに劣った技術が、この状況を打破できるのだろうか。」と書く。ご存知のように、アメリカは携帯文化について明らかに後進国なのである。

「But these "hot spots," as they're called, can't match the reliability of the wireless phone networks. Indeed, anyone who has set up a Wi-Fi network at home knows the frustration of inexplicable losses in coverage, even at short range.」

じゃあWi-Fiの現状はといえば、まだまだその内実はお寒い限り。

「What makes Wi-Fi so interesting is not the current state of the technology or the fact that people can send e-mail while sipping cappuccino. It is its potential as an open wireless network--and by that I mean open to innovation.」

Wi-Fiは未熟でもオープンだからイノベーションの可能性がある

しかし、Papadopoulosは、こう書く。Wi-Fiが面白いのは、Wi-Fi技術やWi-Fi利用形態の現在の状態が面白いからなのではなく、オープンワイヤレス・ネットワークを作り得る可能性ゆえだ、そのオープンという意味は「open to innovation」という意味だ、と。

「Innovations happen when people have the opportunity to add value; the number one proof point being the Internet.」(イノベーションというものは、人々が(イノベーションを生みたいと思う不特定多数の誰もが)付加価値をつけることができる可能性を持ったときにこそ起こるのだ。インターネットがその最大の証拠である。)

この文章こそが、冒頭で「アメリカこそ異質」と書いたことの第一のポイントである「オープン・イノベーション信仰」である。Wi-Fiはオープン・イノベーションを生み出し得るプラットフォーム候補、という意味で、アメリカはWi-Fiと親和性が高いのである。

「But there are technical drawbacks that must be overcome, including poor reliability and less-than-optimal connection speeds. (Sounds just like the early days of the Net, doesn't it?) Worse, you can't easily roam from one network to another.」

そう書いた上で、しかしこういう技術的欠点があると、こんな文章が続く。信頼性がだめでスピードがダメでローミングが簡単にできない。「おい、全部ダメなんじゃないかよ」とすぐ突っ込まれてしまいそうなこれだけの「現在の欠点」よりも、「オープン・イノベーションを生み出し得る可能性、筋の良さ」のほうに希少性ゆえの価値を感ずるのが、「アメリカの異質さ」なのである。わかっている欠点というのは、産業全体でワァーっと解決に向けて努力すれば何とかなるが、本質的な筋の良さというのは後からどうしようもない、という風に考えるからなのであろう。

「Despite these imposing hurdles, I'm still excited about Wi-Fi's potential. I'm convinced that people are going to do voice over IP (VoIP) through Wi-Fi networks.」

いずれはWi-Fiネットワーク上で人々がVoIPを使うに違いない、そういうWi-Fiの可能性に自分は興奮しているのだ、とPapadopoulosは言う。

既存秩序の崩壊をよしとする指向性

ここに、もう一つの「アメリカの異質さ」が垣間見られる。それは、「既存秩序の崩壊をよしとする指向性」である。「Wi-Fiネットワーク上のVoIP」というのは、ざっくり言えば、通信キャリア否定論である。米国IT産業には、これまでも明らかに「既存秩序の崩壊をよしとする指向性」があり、それゆえに世界を席捲してきたという歴史があるのだ。

本連載を始めてまもなく書いた4月7日「ハリウッド対シリコンバレー、「ステイシスト」と「ダイナミスト」の激しい戦い」をまだお読みになっていない新しい読者の方には、ぜひこれを、この文脈で読んでいただきたいと思う。「Hollywood Stasists vs. Valley Dynamists」というTech Central Stationに掲載されたコラムを題材に書いたもの。ハリウッド対シリコンバレーの対立から、アメリカの、いやアメリカIT産業やシリコンバレーの異質さを感じていただけるかと思う。

さて、もう一つの題材が、Online Music。Online Musicも、こんなに盛り上がっているのは、アメリカだけだろう。アメリカだけが過剰に持つ「既存秩序の崩壊をよしとする指向性」ゆえのことである。

音楽配信の流れは止まらない

ニューヨークタイムズの10月12日(日曜版)Arts & Leisure面のトップ記事が、「What Price Music?」でOnline Music特集であった。AppleがiTunesサービスを開始し、1曲99セントという「新しい常識」を作ってからわずか半年だが、いまや、BuyMusic(79セントから1.19ドル)、MusicMatch(99セント)、Napster 2.0(99セント)、RealOne Rhapsody(79セント)が凌ぎを削り、月ぎめ固定料金のAOL MusicNetやeMusicも競争している。ここまで来ると、もう過去には戻れない。

本欄10月14日「日本とあまりにも違う家電に対する米国の認識」で、各国で「内需の質」が異なるという問題を提起したが、「日米の違い」や「アメリカの異質さ」の源泉にある二つの要因、「オープン・イノベーション信仰」と「既存秩序の崩壊をよしとする指向性」こそが、アメリカをアメリカたらしめる、いや、米国IT産業(シリコンバレーと言ってもいい)を米国IT産業(シリコンバレー)たらしめる特質なのである。よって、この特質と親和性の強い新製品や新サービスは、「アメリカの内需が他国の内需よりも良い」と言え、「アメリカ発世界」へのグローバル展開の可能性を多く含んでいるのである。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
運営事務局に問題を報告

最新ブログエントリー