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ソフトウェアエンジニアのオープンソースへの相反する感情

2003/10/06 10:05
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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廃刊になったRed Herringがウェブ上で復活した。フランスのDASARという会社(元ル・モンド紙のシリコンバレー特派員・Alex Vieux氏の会社)がRed Herringブランドを買って再スタートしたというわけである。CNET Japan山岸編集長のBlog(及びコメント)をご参照。

今日は、Red Herring復活を祝して、JavaのJames Goslingのインタビューをご紹介しておこう。Red Herringのすべての記事を読むには登録が必要だが、いまのところ無償である。

「What are your thoughts on open source?」(オープンソースについてのお考えを)

という最後の質問に対するGoslingの答えが面白い。

オープンソース・エンジニアの本業は?

米国ソフトウェアエンジニアのオープンソースに対するアンビバレントな感じがよく出ている。

「I'm a big fan. The big question for me about the whole open source thing is: how can you be a professional engineer and still make your mortgage payments? Maybe by consulting. We do our real job for free and then earn our money by being consultants. But that feels kind of odd, and it sets up all kinds of weird conflicts.」(僕はオープンソースの大ファンだ。でも、このオープンソース全体についての大きな問題はね、どうやってプロのエンジニアとして仕事をしながら、住宅ローンを支払っていくかということだよ。まあ、コンサルティングってことかなぁ。本当の仕事(real job)をフリーでやって、コンサルタントになってカネを稼ぐってことか。それも変な気がするよなぁ。本当に奇妙なコンフリクトだ。)

余談だが、アンビバレントな感情の対象という意味では、Googleもそう。本欄9月26日「Amazonの参入でますます加熱する検索市場」で、Nutchというオープンソースのサーチエンジンをご紹介したが、「An Open Source Search Engine」の中でNutchとGoogleについて語るMitch Kaporの言葉も、アンビバレントな感情が表れていた。

「"I love Google," Kapor says, "but this will push search to places that are not immediately obvious. In terms of research and innovation, there is a clear need for an open platform for search."」

Goslingの冒頭の「I'm a big fan.」に相当するMitchの言葉が「I love Google.」で、その後に、でもすべてがオープンになっているNutch(Googleは検索アルゴリズムがオープンでない)は研究のための素晴らしいプラットフォームになると支援表明をしている。Googleは大好きだけれど、Nutchを支援するというアンビバレントな感じである。GoslingもMitchも、オープンソースやGoogleを愛しているゆえに、その愛する対象の抱えている社会的な問題点を語る場合には、どうしても、こういう表現の仕方になるのである。

オープンソース活動と収入の関係

さて本題に戻って、ソフトウェアの最前線がオープンソース・プロジェクトにどんどん移行していったとき、プロのソフトウェア技術者の生活が、

「We do our real job for free and then earn our money by being consultants.」

となるというGoslingの見立ては実に現実的である。「being consultant」のところは、日本ならば「どこかの会社に勤めて仕事する」というふうに置き換えてもいいのかもしれない。

こうした大きな流れを見据えた上で、オープンソース・プログラマーに雇用を生むという新しい試みをしているのがMitch Kaporである。

本欄7月24日「オープンソース開発組織の新潮流」でご紹介したNPO(非営利組織)「Open Source Applications Foundation(OSAF)」は、いまOutlookキラーのChandlerの開発に専念している。

Mitch Kapor自身が500万ドルの私財を投じて作ったこのNPOは、ちょっと見た限りでは、普通の会社とまったく変わらない。

実は先週、縁があってサンフランシスコにMitch Kaporを訪ね、かなり長い時間、彼と話をしたのであるが、Mitchほどソフトウェア産業の未来やオープンソースについて考え抜いている人は居ないとつくづく感心した。

ソフトウェアベンチャーの時代はもう終わった

彼は、マイクロソフトやオラクルが絶滅するということはあり得ないけれど、ソフトウェアベンチャーを起こすという時代は、オープンソースの登場とともに終結した、という仮説を持っているのである。

ベンチャーの代わりにNPO(非営利組織)が最先端ソフトウェア開発の中心的役割を担い、資金源はベンチャーキャピタルのリスクマネーではなく、富裕層や財団や大企業からの寄付で調達するという考え方なのである。ソフトウェア技術者はNPOがフルタイムで雇用する。ストックオプションなどはないが、一流の技術者には一流のサラリーが支払われる。NPOだからといって、安月給でしか雇用できないなんて制約はまったくないからだ。

9月30日のMitchのBlogによれば、彼自身が投じた500万ドルに加えて、275万ドルの資金調達に成功したことがアナウンスされている。

「The Andrew W. Mellon Foundation and the 25 university members of the Common Solutions Group (CSG) have agreed to provide OSAF a total of $2.75 million in grants. These funds will allow OSAF to extend the functionality of the Chandler software application to meet the information technology needs of higher education.」

興味のある方は、このBlogからリンクをたどって、どういう主旨で財団や大学コンソーシアムがMitchのNPOに資金を出したのかがわかると思います。

OSAFの求人欄を見てみれば、

HR Director (posted 7/10/2003)
E-mail Specialist (posted 3/18/2003)
Security Developer (posted 1/30/2003)

という職種の求人が出ている。営利組織ではないが大掛かりなNPOであるから、人事担当部長だって必要なわけである。もちろん口コミでの採用が中心なので、ジョブがオープンになっていなくても常時、活発な採用が続けられている。

オープンソース・プロジェクト立ち上げの新しいスタイル

ゼロから大掛かりなオープンソース・プロジェクトを立ち上げるときの最大の難問は、ネット上に公開する前の最初の作品(ある程度まとまったソフトウェア)を誰がどれだけ時間をかけて作るか、という問題である。LinuxだってApacheだって、わずかなコアメンバーでかなり長い期間じっくりと最初の開発が行なわれている。何もないところから不特定多数が関与してオープンソース・プロジェクトが生まれたわけではない。

Chandlerは、オープンソース・プロジェクトをいかにブートストラップするかという難問を、大型NPOという組織で、NPO正社員プログラマーを雇用するという形で、解こうとしているのである。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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