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誰がアップルコンピュータを殺したのか

2003/09/17 10:05
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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Apple Computer History Weblog(1976-1993)というサイトが最近立ち上がって、注目を集め始めている。

8月18日の本欄「成功者達から5400万ドルの寄付を集めたコンピュータの博物館」でご紹介したComputer History Museumが、このサイトを構想し、運営しているらしい。

「Welcome to the Computer History Museum's Apple History Weblog. This site was created to capture your Apple experiences, anecdotes and stories about key events in Apple's history. The Museum's charter is to preserve and present for posterity, the artifacts and stories of the Information Age. Apple Computer played a major role in shaping the direction of technology in the late 20th century and future historians will want to hear from those of you who were actually there.」

このサイトでは、Appleの歴史に関わった人たちの実際の経験を集大成しようとしている。なぜAppleなのか。それはAppleが「the direction of technology in the late 20th century」(20世紀後半における技術の方向性)を決めるのに主要な役割を果たしたからで、将来の歴史家は、実際にそこに居た人たちの肉声を聞きたいと思うことだろう、というのが主旨。

このサイトはBlogの枠組みを使って、Appleの歴史についての証言を集積しようとしているわけである。勝手に書き込めるものではなく、編集者によって採用されたものしかアップされないルールになっているが、今のところ、アップされたストーリーのリストはこんなところである。

プロでない人のためのコンピュータ

その中で今いちばん話題になっているのは、「Who Killed Apple Computer?」(誰がアップルコンピュータを殺したのか?)という文章だ。筆者は、1987年から97年までDirectorレベルの職を歴任したMichael Maceである。

冒頭は、彼のApple観を総括した文章。

「It's great to see so many people excited about the things they accomplished at Apple. The things we did were wonderful, they improved people's lives, and they are worth celebrating.

But I think we should not lose sight of the fact that Apple Computer as a whole was a massive failure. Our fundamental goal, if you remember, was to transform the world by setting people free from bad computer design and stifling corporate dictates. "The Computer for the Rest of Us," we promised.

Today "the rest of us" are a passionate but small personal computing clique. The company is treated as the eccentric uncle of the computer industry -- still interesting, still beloved, but no longer as powerful or dangerous at it once was.」

Appleが達成したことについて多くの人々が興奮するのを見るのは素晴らしい。でも、Appleという会社は全体として巨大な失敗だったという事実に目を背けてはいけない。我々の本当の目標は、人々を、悪いコンピュータデザインと息の詰まるような会社の命令から解放することだったじゃないか。「"The Computer for the Rest of Us,"」というビジョンこそが我々の約束だったじゃないか。でも今日、"the rest of us"(Appleユーザのこと)は情熱的な小集団に過ぎない。Appleはコンピュータ産業における奇抜な先達として扱われ、もちろん依然として面白いし、愛されている。でもいっときそうであったような、力強い存在でも、危険な存在でもない。

「"The Computer for the Rest of Us,"」については若干の解説が必要かもしれない。80年代といえば、まだ、大半の人々にとってPCというのは遠い存在であった時代。当時のAppleのビジョンというのは、「その時点でコンピュータを使っている人たちなんて全人口に対してはほんの一握りだ。そういうほんの一握りの人たちは使うのが難しいプロ用のコンピュータを使ったらいいが、残りの大半の人々(rest of us)が必要とする使いやすくて素晴らしいコンピュータはAppleが作る。だからAppleは残りの大半の人々のためのコンピュータ(Computer for the rest of us)を目指す」というようなものだった。しかし今、誰もがWindowsを使うのが当たり前になってしまい、Appleユーザこそ、rest of usの小集団(残りのほんのわずかな人々)になってしまったじゃないかという、痛烈な皮肉なのである。

アップルの歴史は1993年に終わった?

そしてMichaelは、PCのOSの進歩は1993年に止まってしまったと書く。

「Why? Because they don't have to change. Because there's no effective competition. Because Apple failed.」

それはOSに競争が存在しなかったから。つまりAppleが失敗してしまったからだ。

ところで、このサイト全体のタイトルは、Apple Computer History Weblog(1976-1993)となっており、歴史は1993年で終わりみたいな表現になっているが、1993年がAppleの歴史の終わりという認識が、Apple関係者の中ではあるのだろうか(そのあたりの経緯を僕はよく知らない)。

そしてその失敗の理由を、

「I did it. I killed Apple Computer.

Of course you helped too, if you worked there. Sure, we were assisted by a number of feckless executives, and by venal behavior at Microsoft. But more than anything else, Apple -- the old Apple we knew and loved, the one we're celebrating here -- was destroyed by its own diseased and dysfunctional culture.」

当時Appleに勤めていた社員全員が作り上げた「病にかかった機能不全のカルチャー」によってAppleは破壊されてしまったのだと結論付ける。

アップルが失敗した原因

そして、次の文章がポイントである。

「The story of Apple from the late 1980s to the late 1990s is, in my opinion, a story of individual brilliance and group stupidity. From the moment I joined the company in 1987, I was amazed by the energy and intelligence of the people around me. Never in my career have I worked with brighter, more interesting, more capable people. Probably I never will again. And yet, despite all our braininess, as a team we were the Keystone Kops of computing.」

1980年代後半から1990年代後半のAppleの物語は、「a story of individual brilliance and group stupidity」光り輝く個人がグループとしてはおそろしくバカになるという物語であった。個々にはエネルギーと才能に満ちた素晴らしい個人が、チームとしてはどじで間抜けな警官になってしまったという歴史だ。

そして、「What went wrong?」(何がうまくいかなかったのか)で始まる節は、いろいろな問題点が具体的に指摘されており、それが最後の節「Lessons learned」で、べからず集の教訓の形でまとめられている。

「(1) Because cooperation is essential to success, you have to welcome the ideas of others, search for their good parts, and find ways to build a common agenda.」

協力こそが成功の本質なのだから、あなたは他人のアイデアを喜んで受け入れ、その良い部分を見出し、共通のアジェンダを構築する道を探さなければならない。

「(2) Because unity is more important than perfection, you need to support and carry out the decisions of your management, even when you disagree with them.」

結束は完璧よりも重要なのだから、あなたは、たとえ同意できない内容であれ、マネジメントが決めたことをサポートし実行する必要がある。

「(3) Because no one can do it all, it's important to work cooperatively with other parts of your organization, even if you think you could do some things better yourself.」

誰も全部などできっこないのだから、たとえ、あなたが自分のほうが絶対にうまくできると思っても、組織の他部門と一緒に協力して働くことが重要だ。

「(4) Because no single company can change the industry, you have to team with other companies to share the opportunities, and help them understand the vision and excitement.」

たった1つの会社で産業全体を変えることなんてできないのだから、他の会社と機会をシェアすべくチームを構成し、彼らがビジョンと興奮を理解する手助けをしなければならない。

「(5) You must banish the words "moron" and "brain-dead" from business conversations (no matter how applicable they may be).」

ビジネスの会話の中から、たとえその言葉がどれほど適切であっても、「moron」(まぬけ、バカ、阿呆)とか「brain-dead」(役立たず、無能、脳死状態)といった人をバカにするような言葉を追放しなければならない。

「Sounds pretty basic, but I think it was lack of those basics, more than anything else, that killed Apple.」

当たり前の話に聞こえるでしょう。でも、こうした基本の欠如こそが、Appleを殺したのだと、Michaelはこう締めくくる。

この5つの「べからず集」は、いつの世のベンチャーにも当てはまる警句であろう。

優秀な連中ばかりが集まってできあがる組織というのは、つぼにはまると実に魅力的な輝きを発散する一方、案外もろく自壊することも多い。その差はどこに起因するのか。このテーマについては、また違う角度から、継続して考えていきたいと思う。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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