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AppleにあってGoogleにないもの

2003/08/29 10:05
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umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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シリコンバレーのアップルコンピュータ本社・OS開発グループで活躍する木田泰夫さんのインタビューエッセイをフォーサイト誌(新潮社)に書いた。木田さんは「知る人ぞ知る」アップル日本語環境・育ての親である。バイオテクノロジー分野で学者を志していた木田さんが1980年代後半にアップルに入社するという決心をしなかったなら、その後のアップルの日本語環境はずいぶん違ったものになっていた可能性が高い。

僕が勝手にこんなことを書くと、「いやいや、自分の力だけでここまで来たのではないし、僕がやっていなくてもきっと誰かがやっていたでしょう」なんて、飄々とした語り口で、きっと木田さんは言うだろう。いやいや本当に木田さんは素晴らしい人でした。技術者として最高の仕事師であることはもちろんだが、それ以上に「人生の達人」という風が感じられた。人生に対処する姿勢というのかな。いろいろなことを学ばせていただいたインタビューであった。

このエッセイをご紹介したついでに、字数の制限で書ききれなかったことを、いくつか補足しておきたいと思う。

アップルのこれから

木田さんにアップルのこれからについて聞いたとき、彼はこう言った。

「アップルの社員は素晴らしい能力を持った人ばかり。皆、作っているものに誇りを持っている。次にアップルというブランド。そしてこのブランドについてきてくれるユーザがすごく強力。これだけの資産を使ってこれから何もできなかったら、どこかが間違っているんです。アップルはこれからも素晴らしい場所であり続けますよ」

Googleみたいな若いエネルギーを持った上り坂の会社と、今のアップルはどこが違うのでしょう、という僕の質問には、彼はこう答えた。

「Googleの内部についてはよく知りませんが、きっとGoogleにはぜんぜん迷いがないんでしょう。それに比べると、アップルは成熟したエネルギーかな。迷いがあります」

なるほどなぁ、深い言葉だなぁ、と僕は思った。確かにGoogleになくてアップルにあるもの、それは「迷い」なのかもしれない。迷いなきエネルギーから生まれる創造もあれば、迷い抜くことから生まれる創造もある。

「迷い」をいっぱい抱えた中年期の会社からこそ生まれる芸だってあるはずなのだ。

アメリカ企業における個人

木田さんのアメリカ企業観として面白かったのは、こんな言葉だった。

「個人としてそれなりの行動をしていれば、アメリカ企業の中で信頼を勝ち取ることは比較的スムーズにいく。そしていったん理解しあえば、素直に信頼してくれる。信頼を勝ち得ることのプロセスやそれに対する反応がとてもダイレクトなところがアメリカのいいところ。組織的な機構に阻まれて、個人的信頼が仮にあってもことがうまく動かないということがずっと続くのが、日本の問題点かもしれない」

また、アメリカ企業で通用する日本人エンジニアはどんなタイプでしょうか、という僕の質問に、

「性格がちょっととがっていて、はっきりモノを言う人はときどき日本で嫌がられることがある。そういう人はアメリカに合っていますね。ただし、日本で人間関係がうまくいかない人は、アメリカに来てもダメです」

と木田さんは言った。性格がとがっていて技術的な正論を吐いてはっきりモノを言う実力を持つことは大切だが、ちゃんとチームで働けるだけの人間関係構築スキルは持っていなければダメ。これは、アメリカ企業の開発現場を知り尽くした木田さんならではの至言かもしれない。

スティープ・ジョブズがCEOに復帰した頃から、のんびりしていたアップルも意思決定が早くなり、木田さんも、東京に居たのでは埒があかなくなって、シリコンバレー本社のOS開発グループにやってきた。ジョブズがCEOになって何がいちばん変わったのでしょう、という僕の質問に、木田さんはこう答えた。

「アップルのR&Dって怪物みたいなんです。その怪物を、ジョブズ以前の社長は、誰もコントロールできていなかった。ジョブズはR&Dをしっかり掌握しましたね」

さて、木田さんの紹介が長くなってしまったので、今日はフォーサイト・エッセイのほうを読んでいただくとして、英文のほうは、アップル関係の特集記事を2つご紹介して終わりにすることにしよう。

1つはビジネスウィーク。Special Report: Apple’s strategic shiftという特集で、5本の記事からなっている。今のところ無償で読めるようだ。

そしてもう1つは、Infoworldのエンタープライズ市場とアップルの特集。「Apple's playing in the big leagues now」がメインの記事で、興味のある方は、ここからその関連記事へとリンクをたどってみてください。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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