お使いのブラウザは最新版ではありません。最新のブラウザでご覧ください。

CNET Japan ブログ

一流ジャーナリストに「神」と書かせるGoogleのオーラ

2003/07/01 10:05
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

プロフィール

umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
ブログ管理

最近のエントリー

6月29日(日)のニューヨークタイムズ紙「Op-Ed」欄(社説欄の向かい側の特集ページ)に、「Is Google God?」(Googleは神か?) というトーマス・フリードマンの署名記事が載った。フリードマンは、「レクサスとオリーブの木」「グラウンドゼロ --- アメリカが初めて体験したこと」の著者としても著名な同紙コラムニストで、ITの専門家では全くない。その彼がどうやらGoogle本社(シリコンバレー)を訪問したらしい。

ベテランジャーナリストもショックを受ける

「It is a mind-bending experience.」

そして、それを「圧倒的にショッキングな経験」であったと称している。

Mind-bendingという強い表現には、幻覚性のとか、精神に変調を起こさせる、とかいう意味もある。

特に9月11日以降、90年代の「go-go-globalizing」メンタリティと違って、

「Reading the papers, one senses that many Americans are emotionally withdrawing from the world and that the world is drifting away from America.」

であるアメリカだが、

「The reality, though, is quite different. While you were sleeping after 9/11, not only has the process of technological integration continued, it has actually intensified --- and this will have profound implications.」

ぜんぜん現実は違うじゃないか。皆が9/11のあと眠っている間に、技術のインテグレーションが進んでいたばかりでなく、もっともっと凄いことが起きているじゃないか。

これが、彼が、Google訪問によって受けた啓示である。

タイトルが「Is Google God?」(グーグルは神か?)となっている理由は、あるWi-Fiプロバイダの経営者が、

「"If I can operate Google, I can find anything. And with wireless, it means I will be able to find anything, anywhere, anytime. Which is why I say that Google, combined with Wi-Fi, is a little bit like God. God is wireless, God is everywhere and God sees and knows everything. Throughout history, people connected to God without wires. Now, for many questions in the world, you ask Google, and increasingly, you can do it without wires, too."」

と話したという言葉を引用しているからだ。

この言葉自身は、そのWi-Fiプロバイダの経営者が、半分冗談でしゃべったものだと思う。

しかしそれにしても、フリードマンほどのベテランのジャーナリストが、なぜ「グーグルは神か?」なんていう凄いタイトルの文章を書いたのか、を考えることのほうが面白い。

僕はこう思った。フリードマンは、Googleを訪れて、Google本社が放つエネルギーというかオーラによって、よほど興奮してしまったのだ。シリコンバレーの本当の中心で何が起きているかに免疫のない彼は特に。

Google社員にみなぎる自信

実は僕もたまたま、先週の金曜日、Google本社を初めて訪ねる機会を得た。

僕はフリードマンと違って、シリコンバレーに住んでいるし、シリコンバレーで勢いのある会社の凄さというのは理解しているし、Googleが何をやっているかもフリードマンより深くよく知っている。その僕でさえ、Googleの本社の玄関を開けたとたんに、Googleが放射しているエネルギーを体感して、目がくらむような思いがしたもの。

何がそのエネルギーやオーラの源泉なのか。

それはGoogleに働く人々ひとりひとりの、みなぎる自信とか、溢れる充実感とか、興奮し切っている目とか、Googleのメンバーであることによって感じている誇りとか、そういうものの総体が、ぼやっと玄関を開けた外部の人間に対して、異様な力として作用してくるからだ。その力は、会社のありとあらゆるところから溢れ出てくる。たとえば、さりげなく置いてあるオブジェや家具やガジェットの1つ1つまでこだわりとストーリーがあり、皆が寄ってたかってGoogleというブランドにマッチした居住空間のあり方を試行錯誤し、その独特な世界を作り上げようとする「エネルギーの過剰性」のようなものが感じられる。全く違うステージの存在になることを目指しているゆえに、優秀な連中が仕事に没頭しているだけの「そこそこ成功しそうな(IPOくらい行きそうな)ベンチャー」とも、異質な雰囲気を漲らせているのだ。

この雰囲気は、経験してみないとなかなかわからないのだが、15年前くらいのアップルもまさしくそうだったし、7-8年前のネットスケープがそうだった。自分たちが世界を変えようとしているんだ、という意識は、若くて優秀でアンビシャスな連中の目をらんらんと輝かせる。とにかくアドレナリンが大量に放出されるのだ。

Googleでは、「料理の鉄人」アメリカ版で優勝したシェフをはじめ料理人20名をフルタイムの従業員として雇い(ストックオプションも与え)、社員全員(いまは800人から1000人の間)に、無料でランチとディナーを、毎日毎日、提供している。僕が行ったのはたまたま金曜のランチだったこともあって、庭でバーベキューパーティをやっていた。バンドが入り、昼なのにビールも自由に飲めた(冷静に見れば、自分をコントロールできるのがGoogleの社員だよね、というGoogleブランドを象徴するための空間演出でもあろう)。CEOのエリック・シュミットが、遠くでうろうろしながら席を探すシーンが見えたりもした(冷静に見れば、フラットな組織というGoogleブランドを象徴するための空間演出でもあろう)。

会社全体は、まさに学生寮のような雰囲気で、家に帰らずに会社で生活する社員も多いらしい。家に帰らないことが前提になっているからというのでもないのだろうが、社内で犬を飼うことも自由である。だから社内を歩き回ると、昼寝をしている犬に何匹も出会った。実物などそうそう見る機会のない「話題のセグウェイ」でGoogle社内を走り回るギークが居たり(僕も初めてセグウェイに乗せてもらった)、とにかく、Googleで僕と同じようなものを見たに違いないフリードマン(いや、たぶんもっと凄い演出で、催眠術をかけられたのかもしれないな)からすれば、まさしく異様な体験だったのだと思う。

だから、受付の横の壁に、次々に映し出される、いまリアルタイムで世界中の人たちがサーチしている言葉(サンプリングされた各国語)を見て、フリードマンは、

「You can actually sit in front of a monitor and watch a sample of
everything that everyone in the world is searching for.」

と感動してしまったのだ。

成熟化と大企業からの追撃という課題

余談になるが、本連載6月5日の「ハイテク業界の再編を予想して投資活動を活発化させるバイアウト・ファンド」でご紹介したバイアウト・ファンド、シルバーレイク・パートナーズのパートナー、Roger McNameeとも、先週会って話をする機会があった。Rogerは21年間の投資経験を中で、さまざまな会社の盛衰を見続けてきたシリコンバレーの重鎮の1人である。

もちろんGoogleにも詳しく、CEOのエリック・シュミットとも旧知のRogerは、

「Googleもこれから、これまでの天才的エンジニアばかりではなく、今とは違うタイプの連中もたくさん雇って会社を成長させていかなければならないからなぁ。大変になるのはこれからだけれど、そういう新しい挑戦もきっと乗り切っていくよ。10年に一度の凄い会社だからな。こういう会社は、あるようで、なかなかないんだ」

と言っていた。これからマイクロソフトがGoogleを猛追するのではないか、というような記事がちらほらと出る昨今だが、Googleはいまやシリコンバレーのアイコン。シリコンバレーの連中の多くが、心中で、Googleがネットスケープの二の舞にならぬよう、応援したいという気持ちを持っているのである。僕のこの原稿も、そういう点を割り引いて読んでもらったらいいと思う。こういう雰囲気の会社の勢いは、そう簡単に止められない。だからGoogleはあるところまでは疾走していくに違いない。そして、Googleが、10年以上永続的に凄い会社(例、インテル)で居続けられるか、アップルやネットスケープのようにある時期から失速するのか、その正念場が、たぶん2年後くらいに訪れるのではないかと思う。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
運営事務局に問題を報告

最新ブログエントリー