お使いのブラウザは最新版ではありません。最新のブラウザでご覧ください。

CNET Japan ブログ

安易なドメイン放棄が招く、ブランド毀損リスク - (2) SEO目的で狙われる過去の人気ドメイン

2010/04/28 18:23
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

プロフィール

渡辺隆広

日本でSEOを始めた第一人者として知られるアイレップサーチエンジンマーケティング総合研究所 所長の渡辺隆広氏が、競争の激化する検索市場をビジネス、マーケティング、テクノロジーの各方面から掘り下げます。
ブログ管理

最近のエントリー

前回( (1) 有効期限が切れたドメインの再利用実態)の続き。今回は、契約解除されたドメインがSEO(検索エンジン最適化)目的のユーザに狙われる背景について解説します。

ランキングに影響が大きい「リンク」というシグナル

検索エンジンからの集客増をはかる手法の1つとしてSEOがある。SEOは、検索エンジン(というコンピュータ)に対して適切に情報を伝達して、関連するキーワードとの評価を認めてもらうために、サイトのアーキテクチャやコンテンツ、ソースコードのマークアップやリンクを整えていく。いわば、サイトと検索エンジンの親和性を高めるための技術的手法だ。検索エンジンは、インターネット上に存在する無数のサイトの中から、検索クエリに合致する情報を的確に拾い出し、ランク付けするために、様々なシグナル(評価指標)を用いている。たとえばGoogleは200以上ものシグナルを組み合わせて、ページ(サイト)の重要度や関連度を計算している。ただ、その中でもランキングアルゴリズムに比較的影響が大きい要素として、リンクが挙げられる。PageRank(ペイジランク)という名前で広く知られているように、リンクをサイトによる支持投票とみなして、その支持投票をより人気の高いサイトから、より多く集めているサイトほど人気のある、重要なサイトと見なす考え方だ。先述したようにネット上には数百億ものページが存在するため、適切に検索順位を決定するためには個々のページの重要度や信頼度を判断することがきわめて重要となっている。検索エンジンからの集客を計りたいウェブマスターにとって、このリンクをいかに集めるかがカギとなる。しかし本来、リンクとは自分ではなく第三者による言及・評価・推薦などによって得られるものであり、簡単に大量のリンクを獲得するわけにはいかない。とすると、他社との関係性強化を通じた、自然発生的に得られるリンクとは別に、自ら、何らかの手段でリンクを”かき集めてくる”必要があるわけで、それをお金で解決する代表的な例が、有料リンク(Paid Links)だ。そして、最近の日本国内で用いられるようになっているのが中古ドメイン(オールドドメイン、old domain)である。

最初から有利な条件を揃えられる中古ドメイン

ロールプレイングゲーム(RPG)において、スタート時点で主人公が最初に持っている武器は大抵、もっとも弱い武器だ。もし最初からゲーム中盤〜終盤で得られる強力な武器を持って開始したら、ずいぶんと大きなアドバンテージとなる。SEOにおいて、いわば後者のような存在が中古ドメインだ。中古ドメインとは、名前に「中古」とある通り、過去に誰かが利用したことがあるドメインのことだ。毎月(毎日)、何らかの理由で世界中で数多くのドメインが解約され、手放されている。この中には、名も知らぬ個人が趣味的に運営していたサイトもあれば、企業が倒産したための例もあれば、逆に大物政治家やミュージシャンのドメインや、企業の期間限定キャンペーンサイトに利用されていたドメイン、官公庁が主導で行っていたイベント(自然環境保護など)のサイトで利用されていたものもある。開設当時に人気や認知度が高かったものは、当然ながら当時の人気サイトとして、数多くのリンクが張られていることになる。あるいは、最近ならチームマイナス6%やプライバシーマークのように、その取り組み自体がリンクを生み出すたぐいのものであれば、相当な数のリンクを所有しているケースもある。SEOを手早く行いたいウェブマスターが中古ドメインに注目するのは、過去にそこに蓄えられたリンクの存在だ。たとえば、企業Aが過去にある商品ブランドの期間限定キャンペーンのためにドメインXを利用したとしよう。テレビCMやライブイベントなどのマーケティング活動の結果、相応の人気が得られ、サイトも約1万本のリンクを獲得したとする。しかし商品販売が終了し、キャンペーンサイトも不要になったために、ドメインを解約して手放すことになったとしよう。この時、私がその解約を察知して、解約直後に取得してしまうと、もちろん自分で好きなようにサイトが開設できるばかりか、約1万本の被リンクを持つ価値あるサイトとして利用できる。普通は新規(過去に誰も利用していない)ドメインは、検索エンジンにとって被リンク0本の価値しかない。しかし最初からリンク1万本の価値を持つサイトとしてスタートできることは、容易に検索結果の上位に表示できることを意味する。仮に、こうした過去の人気ドメインを100個集めてきて、そのドメイン上に適当に開設して、SEOしたい(検索上位に表示したい)ターゲットとするサイトにリンクを張ってしまえば、労せずして狙い通りのキーワードで上位を獲得できるわけだ。これは一般に検索エンジンのリンク分析アルゴリズムは、同じリンクでも重要度の高いページからのリンクほど、1本あたりのリンクの価値も増すためである。

政治家や映画・アニメ公式ドメインは格好の標的

世の中に出回る中古ドメインのすべてが、過去の人気サイトというわけではない。中には悪意ある攻撃者により、マルウェアやトロイの木馬を配布するために使用されていたドメインもあれば、ブラックハットSEO(不正なSEO)目的で利用されて、すでに検索エンジンから排除されたドメインも出回っている。大した運営がされていなかった、被リンクの少ないドメインも価値があるわけではない。こうしたドメインはSEO的には価値がないため、標的にはならない。言い換えれば、中古ドメインで格好の標的となるのは、政治家や企業、官公庁が運営していたドメインになる。とりわけ映画はプロモーションのためにタイトルごとに独自ドメインで取得される一方で、数年経過すると解約されることが多いため、狙いどころになっている。事実、過去の映画のプロモーションで利用された独自ドメインにアクセスすると、その多くは全く関係のない情報サイトに変貌している。前回の記事で指摘したように、数年前に発売されたPS2などのゲームタイトルの公式サイトや、放映終了したアニメの公式サイトが異なるサイトになっているのも、SEO狙いの人々の存在がある。

検索エンジンの対応は?

中古ドメインを利用したSEOは日本よりもずっと早くから欧米では多用されており、世界的に最大シェアを持つGoogleも対策を行ってきた。検索サービスを提供する事業者としては、ページの重要度を判断する際に、過去の所有者が積み上げた評価を含めたくはない。適切な検索ランキングを決めるためには、あくまで、現在の所有者による、いまのサイトにおけるインターネット上での価値を算出したいと考える。したがって、Googleは複数のシグナルから判断して、過去と所有者・コンテンツが全く異なる場合には評価をリセット(=ゼロにする)という仕組みを持っている。ただ、抜け道もあるため、現実には評価をそのまま引き継いでSEOを有利に進めているウェブマスターも存在する。一方、日本に目を向けるとGoogle以外の検索エンジンは、そこまで優れたスパム排除技術を有しているわけではなく、したがって中古ドメインは有効活用できてしまう。さすがに最近は、一部の明らかにおかしな中古ドメインのサイトは検索結果から排除しているようだが、それは「一部」だ。以上、SEOの観点から、閉鎖された過去のサイト・ドメインが積極的に取得されて、活用されている背景について解説した。次回は、これらを踏まえてどう対処すべきかについて述べる。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
運営事務局に問題を報告

最新ブログエントリー