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AR(拡張現実)のビジネス化について

2009/03/03 10:11
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末吉隆彦

リアルとバーチャルの界面がおもしろい、既存領域をひょいとまたいでつながると新しいことが生まれるし、わくわく、どきどきします。そんな人たちと会ったり、体験したネタを紹介していければと思います。
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■ ARビジネスセミナーにて

2/26に、日経コミュニケーション/ITpro主催のAR(Augmented Reality)ビジネスセミナーが開催されました。

基調講演は、東大/ソニーCSL、そしてKoozyt共同創業者である暦本純一さん。HCI(human computer interaction) − 特に実空間指向インターフェース研究領域で世界的に著名な暦本さんが、AR(拡張現実)をキーワードとしたビジネスセミナーの場で、ARの歴史や自身の背景的研究について語られたのは、私個人としても、とても喜ばしく、感慨深い出来事でした。というもの、私が1996年に暦本さんの研究と出会い、一連のARを取り入れたアプリケーション商品化に取り組みはじめ、また、現在のKoozyt設立のきっかけとなったPlaceEngine研究の背景も、まさにARと密接に関係しているからです。そして、ARが今やビジネス領域で語られるキーワードとなってきたとあれば、これは歴史的なイベントとして参加しておかないと!というわけです。(セミナー開催の元となった日経コミュニケーション 2008/11/1号

すでに、こちらに暦本さんの基調講演の速報が載っています。タイトルが「ARは、枯れた技術...」とあるので、「AR全体=枯れた技術?」と誤解を受けるかもしれませんが、講演を聞いた人や本文記事を読めばそうでないとわかるとおり、暦本さんは、AR領域を Context-aware Computing(ユーザーやデバイスの状態をセンシングして、その状況にあわせてふるまうコンピューティング)やユビキタスコンピューティングと同等な広義の意味でコンセプト定義しています。その中で、視覚による情報オーバーレイ手法のARについては、マーカー型(バーコードのようなマーカーを用いて物体や空間を識別)と 非マーカー型(画像や時系列データそのものを特徴解析するなどの手法)に大別しました。ここでコメントしていたのは、「枯れた技術=視覚による情報オーバーレイ手法のマーカー型」ということです。講演では、マーカー型以外にもLED可視光通信とARの可能性やプロジェクションによる情報オーバーレイ手法などについても触れています。

さて、暦本さんに「マーカー型ARを枯れた技術」と言わしめるのは、ご本人の10年以上前からの研究成果と実績が物語っています。

この映像は、私が暦本さんの研究と出会い、これを商品化したい!というきっかけとなったNavicamという研究です。この映像は1996年ですが、研究自体は1994年ごろからだそうで、iモードが登場するはるか前であって、ブロードバンドインターネットはおろかインターネット自体も一般ユーザーにはまだ身近にはなっていない頃です。私は、1996年当時、カメラ一体型ノートPCであるVAIO C1のカメラアプリケーションのネタを来る日も来る日も考えていましたが、この Navicamの存在を知った後、すぐにソニーCSLへ出向き、暦本さんと意見交換する中で、実世界指向ユーザーインターフェイスなる研究領域の存在と、それらが、Virtual Reality (VR)に対比され、ARやMR(Mixed Reality)と呼ばれる技術領域であることを知りました。ほどなく、暦本さんの研究領域をどうやって商品化したらよいか、夜な夜なアイデア交換する毎日が続きました。マーカーを商用展開するため、独自デザインのバーコードを考案しながらCyberCodeと名づけ、試行錯誤を繰り返しました。

 

これが、1998年、初代VAIO C1にバンドルした「CyberCode Finder」というARアプリケーションです。一般消費者の商品に搭載された初めてのARアプリケーション事例と講演では紹介されていましたが、これはあまりにもニッチ(笑)で、当時のVAIO C1開発メンバーも、それと割り切って、自らが楽しくて仕方がない!という感じで開発したのを思い出します。この「CyberCode Finder」アプリケーションは、当時一般に受け入れられるまでには至らなかったものの、暦本さんの研究背景とアプリケーションのインタラクションデザイン(当時デザイン担当だった新島さんやアプリPLだったイハラさんら)が高く評価され、ドイツの「iF Interaction Award 2000 Top3」を受賞しました。

橋本さんの講演で 2007年がARの当たり年だったと評されるように、

- 電脳コイル(ARの世界観がわかりやすく楽しめるアニメ作品)
- ARツールキットを利用した作品の動画投稿の数々
- Eye of the Judgement (PSP用ゲームタイトル)の商品化
- 電脳フィギュアの商品化

などが 次々と登場し、マーカー型ARは、誰もがインターネット上で目に触れることができるようになってきました。やはり視覚的にインパクトがあるので、他の人に伝えたい!と広まっていく流れは、とても共感しますし、その源流の研究と商品化に携った身としては、この流れがさらに一層加速すればよいなと思います。

そして、暦本さんの講演に話を戻すと、このインタビュー記事でも述べていますが、非マーカー型のソリューションとして、今後、画像や時系列データの特徴パターンマッチとGPS/PlaceEngineのような位置測位技術が組み合わさることで威力を発揮していくと語った後、最後に、「PlaceEngineのビジネス用途のご用命は、Koozytまで。AR領域で PlaceEngineと連携することで、今後大きな展開に発展していくと思いますよ!」と締めくくっています(東大教授からKoozyt創業者モード!)。

午後の金村さんの講演では、非マーカー型のARに代表されるシーン認識エンジンを「個人」プロジェクトの成果として披露されました。金村さんとは、MA4クウジット賞表彰以来も交流を続け、現在も PlaceEngine連携のSRE試作プロジェクトでコラボレーションしています。この講演では、実際のデモこそなかったのですが、 PlaceEngineなどの位置測位技術との組み合わせによる情報検索コストの削減について語っており、試作評価も良好とのフィードバックをもらっています。

さて、これらARをビジネスの視点で語る上では、如何にビジネスモデル化するのかという議論に移っていくわけで、今回のビジネスセミナーの開催主題となっています。実際にビジネス領域で取り組まれている事例は、こちらのぞれぞれの速報記事でご覧いただくとして、最後のパネルディスカッションの前置きでは、主催者の武部さんが、ARビジネスを既存のビジネスモデルに類似、対比させることで、何か見えてこないだろうか?ということで、マーカー型/非マーカー型に対して、ビジネスモデルを既存のQRコード周辺ビジネスの延長と位置連動サービスの延長という軸でマッピングして議論たたき台を提示しました。なるほど、位置情報は、ユーザー/デバイスコンテキストの最たる1つ、位置情報関連ビジネスから見れば、今後、位置情報サービス(LBS: location based service)は、単なる位置連動から時空間連動、そしてコンテキストアウェアへと発展していくことは周知であるので、「ARビジネス」とあらたまって定義されると「なんだろう!?」となってしまいますが、過度の期待をせずに、既存ビジネスを拡張、後押しする新しいHCI、人とデバイス、環境とのインタラクション技術であるという理解と導入で、ARという技術領域が着実にビジネス領域に浸透していけばよいなと思います。ソーシャルタグサービスだろうと、ネット広告領域だろうと、AR手法が取り入れられるわけです。

主催者の日経コミュニケーション編集長の松本さんとご挨拶、今回のセミナー聴講者は、メーカーさん、そして携帯キャリアさんなどの参加が多かったというこのARビ ジネスセミナー、そういえば、 IVS 小林さんともばったり会いました。ベンチャー/ベンチャーキャピタル業界も注目のようですね。(IVS2008 Fallでは、ARセッションを企画、実現された経緯あり、IVS2009 SpringのLaunchPad出場ベンチャー求む!ということで、こちらに詳細情報があります。 )

■  2/17-19 「セカイカメラ」プレビューにて

ARビジネスセミナーのちょうど1週間前、私は、連日、代々木体育館に 詰めておりました。何をしていたかというと、そこでは、「セカイカメラ」のワールドプレビューが開催され、私たちKoozytは、そこで PlaceEngineを提供し、このイベントの成功に向けて、協力したのです。「セカイカメラ」については、各種ネット記事やブログがアップされて いるので、私は、イベント協力の経緯やKoozytの仕事について簡単に紹介します。

 

... と経緯を説明する際に必要なARつながりの昔話をもう1つ紹介。1998-2000年くらいに、当時のVAIO C1ソフトチームは"ARE(Augment-able Reality Entertainment)"というアプリケーションカテゴリ名称を自ら作って呼称し、先に述べた「CyberCode Finder」だけでなく、一連のAR アプリケーションを自ら企画、開発し、世に出し続けました。私自身、記憶に残るプロジェクトに、やはり初代VAIO C1に搭載した 「Sonicflow」というカメラ画像から手の動きなどを認識し、それによってインタラクティブ音楽を再生、編集するアプリケーションがあります。 ソニーのデザイン永原さんやアプリPLだったフジモリさんらとともに当時商品化したのですが、永原さんつながりで、IAMAS赤松さんと学生の皆さんに協力いただき、Sonicflowの楽曲を提供してもらったという背景があります。

ここに、 1999年当時のSonicflowを用いたIAMASイベントの内容と赤松さんコメントが残ってますね。Sonicflowは、これまた、インタラクティブなメディアアートを一般消費者向けの商品に展開した画期的な試み、アプリケーションだったと私も自負しています!

というわけで、時を経て、赤松さんと再会、昨年「ロケーション・アンプ for 山手線」プロジェクトでコラボを実現 しました。その後、赤松さんつながりで、頓知・設立前の井口さんを紹介いただくことになるのですが、TechCrunch50ではじめて、「セカイカメラ」を知り、傍目で眺めているだけだったのですが、昨年末に、今回のroomsイベントを手伝ってくれないか?と、お2人からお話をいただき、PlaceEngineビジネスのKoozytにとっては、屋内施設で、しかも有期のイベント利用、経験とノウハウをためる大チャンス!ということで今回のイベントへの参加と協力が実現しました。

このイベントにて、Koozytは、ソフトバンクテレコムさんと協力して、Wi-Fi アクセスポイント(AP)を臨時に増設、配置し、屋内施設やイベント、キャンペーン向けに特化したPlaceEngineソリューションを実現、提供しました。具体的には、代々木体育館にAPをトータル25か所程度、臨時に設置(Wi-Fiインターネット接続用のAPと、位置測位専用のAPを含む)しました。 PlaceEngineは、APに接続する必要はなく、そのビーコン信号を利用しますので、位置測位専用のAPは、電源に接続するだけでよいのです。

 

下記は、PSP「みんなの地図3」上に搭載されているPlaceEngineで測位した結果。実際に歩いた軌跡(体育館の真ん中を左右に横断)に対して、上下に ばらついていることがわかります。

 

 これに対して、今回提供した屋内施設に特化したPlaceEngineソリューションでは、ほぼ歩く軌跡上を 連続的に推定し、位置測位精度は、電波密度に依存しますが、約3mから5m程度を実現しています。

イベント開催中、井口さん/赤松さんによる「セカイカメラ」トークが毎日行われたのですが、その中で、PlaceEngineの屋内施設、イベント・キャンペーン向けソリューションと今後の展開を紹介させていただきました。PlaceEngineソリューションを用いることによって、今回のようなイベント会場のみならず、美術館やショッピングセンター、駅構内などの既存施設において、市販のAPや無線LAN端末を用いるだけで、最先端の位置連動サービス (LBS: Location Based Service)やARサービスを提供可能な場所や空間に早変わりできるわけです!

 

 さて、「セカイカメラ」は、そのデモ映像からカメラ画像に対して情報をオーバーレイするARアプリケーションとして認知されていますが、roomsでのプレビュー版デモは、PlaceEngineによる位置測位により関連する情報を検索し、あたかも空中に情報タグが浮いているかのようにオーバーレイ表示したり、貼りつけたりすることのできる機能(加速度センサーとの組み合わせで、視覚効果が工夫されている)が中心でした。方向検知などは、iPhoneではできないので、オーバーレイする情報と方向は、指で合わせるわけですが、方位センサーなどが搭載のプラットフォームであれば、もちろん実装できるでしょう。(Android版の試作は、楽屋裏や打ち上げ会場で見せてもらいました)
プレビュー版での機能制約はいろいろあるとは思うのですが、やはりカメラオーバーレイと操作スタイル(かざすだけ)の目新しさもあり、来場者(もともとアパレル、ファッション業界のトレードショーですので、プレス以外はその方面の方々)の様子を見る限り、皆さん興味津々、そのコンセプトは十分に伝わっていたようです。今後、「ソーシャルタグ」系のビジネスモデル、特に企業オフィシャルなタグによる広告モデルを考えているとのことで、私としても、BtoBで特定の屋内施設やイベント・キャンペーンで 「PlaceEngine」ソリューションをタイアップできることを期待しています。

 

LBS やARサービスが日常生活に浸透する形で、ライフスタイル化するためには、リアルな場所・空間とネットサービスをつなぐ基盤技術がますます重要になってくるでしょう。そこでは、「位置」は、ユーザー・デバイスを認識する one of コンテキストに過ぎず、将来的には、リアルワールドをリアルタイムにデジタル化するセンシング技術と、意味・解析技術が地球規模で並行して背後で稼働しつづけ、そっとリアルワールドを後押しするような世界になっていくのではないでしょうか。

いずれにせよ、ちょうど時を同じく出会えたARのビジネス化フェーズを目の当たりにし楽しみにしている今日この頃、私としては、「空」(バーチャル)と「実」(リアル)をつなぐ技術で社会に貢献したいというビジョンに向けて一つ一つ事例を積み上げていきたいと思っています。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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