HD DVDおよびBlu-ray陣営から対応プレーヤーや録画機が出揃い始め、またPLAYSTATION 3の発売も間近に迫った今日この頃。「どっちのフォーマットを選ぼうか」とお悩みのみなさんには、ちょっと嬉しいはずの発表があったので紹介したい。
Reutersの報道によると、New Medium Enterprises(NME)という英国企業が、HD DVDとBlu-rayの映像を1枚のディスクに記録する上で障害になっていた製造工程上の問題を解決する技術を開発したという。
ディスクを多層化し、そこに両フォーマットの映像を収めることをねらった技術はこれまでも存在していたが、ただしその大半は歩留まりの点で商用レベルに達していなかった。ところが、NMEの開発した技術を使えば、両フォーマットの映像を収めた再生専用の多層式DVDが1枚あたり約9セントと、既存のDVD(MPEG-2映像を収めた再生専用の一層式ディスク:製造コストは6セント)とそれほど遜色のないコストで製造できるようになる。ちなみに、これまでに登場していた次世代フォーマット対応の(書き込み可能な多層式)ディスクの製造技術では、標準的な一層式DVDに比べて、3〜5倍もコストがかかっていたが、これは主に歩留まりが50パーセントに満たなかったからだという。
この発表に先立つ19日には、Warner Brothersで働くエンジニアらが、3層式のディスク--それぞれの層には、CDもしくは標準的なDVD、Blu-ray、HD DVDのデータが収められる--に関する特許を申請していることが明らかになっていた。この特許について、NMEのCTOを務めるEugene Levich氏は、「2つの特許は補完しあえるもの」と述べており、またNMEにはWarner Home Video出身のJames Cardwell氏が先月取締役として参加している。
なお、NMEの技術を利用した最初のプロトタイプ製造ラインは、2007年前半に稼働予定だという。
さらに、NMEは最大で10の層を持てる書き込み可能なDVDディスクと、それを利用するためのプレーヤーも開発し、これらの技術を大手の家電メーカーにライセンスしていく意向だと、Reutersは伝えている。
坂和敏(編集部)