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被災地で何が起きているのか、そしてNPOはそこでどんな活動をしているのか

2011/03/19 00:00
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佐々木俊尚

現役ジャーナリストが、長年培ってきた取材経験などを通して、IT業界のビジネス動向から事件まで、その真相をえぐり出します。
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 本日、NPO日本ユニバーサルデザイン研究機構(日本ユニバ)の神田の事務所に出向き、代表の横尾良笑(よこお・よしえ)さんにインタビュー取材してきました。


http://www.npo-uniken.org/

 以下、横尾さんからうかがった話です。

(1)「島々」に残されている人々

 被災地の状況は、想像を絶しています。まず第一に、自衛隊や救助隊、警察などの当局がすべての避難所を把握しているのではないということ。「避難所」というと学校や体育館、公民館などをイメージする人が多いと思いますが、必ずしもそうではありません。

 海辺まで平野部が広がっている宮城県の沿岸では、工場や住宅、商店などが広がっていた市街地に津波が押し寄せ、地震による地盤沈下の影響もあって、水が引かずに浸水したままになってしまっています。この結果、被災地では広大な海が広がり、その海の中にぽつんぽつんと浸水しなかった場所が「島」のようにあちこちに残されているような状況。そしてこれらの無数の「島々」に、被災者が残されています。彼らの一部は潰れなかった誰かの家に集まり、別の一部は潰れなかった居酒屋の店舗内で助けを待っています。

 これらも「避難所」なのです。しかしこれらの避難所は、陸路ではたどり着けません。ヘリコプターなどで上空から調査発見するしかありませんが、寒さで死にかけた人たちが建物内に残っている場合には見つけることもままなりません。

 日本ユニバでは震災直後、ボランティアの方が提供してくれた民間ヘリで現地に入り、こうした島々に残されている人々を発見し、自衛隊に連絡するなどの活動を行っています。しかしまだ充分ではありません。

(2)被災者の生命の危機とは

 このように自衛隊や救助隊など当局の救援にまだつながっておらず、取り残されている人たちにとっての最大の危機とは何か。

 ツイッターでは「餓死した」といった情報も流れていますが、人間はそんな簡単には餓死しません。たとえば断食施設では1週間ぐらいの断食はごく普通です。何も食べなくても、おおむね1か月ぐらいは大丈夫でしょう(栄養チューブで生命維持されているような高齢者は危険性がありますが)。震災発生からまだ1週間しか経っていないことを考えれば、餓死したという情報の大半は誤報であると考えた方が良いと思われます。

 また水も生命維持には大切で、不足すれば脱水症状を起こします。しかし今回の震災では気温がきわめて低いため、脱水症状を起こしているケースもほとんどないのではないかと考えられます。

 実際に被災地に入って確認したことは、津波で震災直後に溺死した人たちを除けば、避難所で亡くなっている死因の大半は凍死です。津波で衣類が濡れ、摂氏マイナス3度といった状況が続けば、多くの人は凍死します。この凍死をどう防ぐか。このために乾いた着替えと燃料が非常に重要なのです。

(3)日本ユニバはどのように情報収集しているのか

 東京から物資を運ぶボランティアの車両は、現地で物資を卸した後、周辺で「避難所で困窮しているところはないか」「孤立している可能性の場所は」といった情報を収集しています。そして情報収集の後、周辺に残されている高齢者や入院患者などを東京に運ぶ活動をしています。「モノを運び、ヒトを乗せて帰ってくる」のが基本です。

 さらにツイッターで流れている「○○で孤立しているようです! 助けてください」「○○小学校の避難所に食糧がありません」といった情報についても、できる限り追いかけて調査確認を続けています。

 まず第一に、その避難所に直接電話を入れる。電話が繋がらなければ、該当の自治体に。その自治体で情報が得られなければ、隣接する街の避難所に。それでもわからなければ、現地に入ったボランティアが実際に現地を訪れてみる。

 ただ「困窮している」といっても、さまざまなレベルがあります。ある避難所からは「困窮している」という連絡をもらったので、確認しました。聞いてみると、震災直後は1日におにぎり1個だったが、今は3食食べられていると。もちろんそれだって平和な状況と比較すれば充分に「困窮」なのですが、生命の危険があるわけではありません。人によって「困窮」の感覚が異なっているということです。

 そこで「3食食べている」という避難所に対しては、「避難所以外への配給もされていますか?」と質問します。

 「避難所以外へは配給はしていません」
 「避難所以外で配給が必要な人がいる場所を探し当てていますか?」
 「探し当てられていませんが、歩いてそうした場所を探している人がいて、彼は『すごい困ってるところがある』と言ってました」
 「じゃあその人を教えてください」

 そうしてその人を捜し当て、情報を確認する。そういう作業を続けています。

 実のところ、ツイッターでの「○○で孤立しているようです! 助けてください」「○○小学校の避難所に食糧がありません」といった情報は、デマというわけではありませんが、大半が思い違いや誤解などで発生した情報のようです。電話確認してみると、ほとんどはそのような事実はありませんでした。たとえば「○○小学校で食糧難」とツイートされている小学校に電話してみると、「うちには避難の人は来ていませんよ」と言われたりしています。

(4)NPOの役割は自衛隊とどう違うのか

 自衛隊の役割は、圧倒的多数の人をなんとか生き残らせること。つまり100人がそこに取り残されていれば、そのうち99人をなんとか助けるのが彼らの役割です。

 日本ユニバがいま被災地で行っているのは、98人は自衛隊にお任せして、残りの2人を助けるということ。

 たとえば100人の被災者がいて、彼らが飢えに苦しんでいるとします。自衛隊はまずそこにお握りを持ってきて配給します。それによって98人は生き残ることができる。でも残りの2人は病気の高齢者と赤ちゃんで、高齢者は栄養チューブでしか生命を維持できず、赤ちゃんはミルク缶が必要です。お握りだと、この2人は助からないかもしれない。でも自衛隊はこの2人のためにではなく、圧倒的多数の98人を助けることを優先しなければならない。これは残酷な選択肢ですが、必要な選択肢です

 そして私たちが自衛隊がカバーできない残りの2人を助けるため、オムツやミルク缶や薬剤などさまざまな生命維持アイテムを現地に運んでいます。オムツは感染症を防ぐなどの点で重要なアイテムです。

(5)非被災地の私たちになにができるか 

 現在、日本ユニバには直接持ち込みや宅配便などで大量の救援物資が集まっています。しかし残念なことに、現地の燃料事情が非常に悪いことから、充分な輸送体制を確立できていません。毎日10台前後のトラックや乗用車を東京から被災地へと送り出していますが、それでも充分ではありません。このため救援物資はキャパシティオーバーの状態になってしまっています。これ以上救援物資が届いても処理できないため、東京都など他の救援物資受付場所に持っていってほしいということです。

http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2011/03/20l3hd00.htm

 ただし、軽油やガソリン、灯油についてはこの限りではありません。またガソリンを携行できる金属タンクも。これらについては積極的に受け入れています。

 また日本ユニバの事務所での救援物資仕分け作業など、東京でボランティア協力できる可能性はあります。とりあえず明日(20日)については、3人の救援物資仕分けボランティアを募集しています。もしやってみたい方があれば、午前10時に東京都千代田区神田錦町3-21ちよだプラットフォーム1階の仕分け場所に出向いてみてください。

 また21日以降も、ボランティアの求人はあると思います。Facebookページの日本ユニバ震災対策チームを確認するといいと思います。

http://www.facebook.com/nucct?sk=wall




 

 

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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