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毎日新聞「ネット君臨」取材班にインタビューした

2007/02/21 15:29
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佐々木俊尚

現役ジャーナリストが、長年培ってきた取材経験などを通して、IT業界のビジネス動向から事件まで、その真相をえぐり出します。
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 毎日新聞の連載「ネット君臨」について、その後私の取材活動にいくつかの進展があった。時系列から言えば、まず第一に、毎日新聞社から「ネット君臨」座談会に出席するよう求められた。ちなみにこの要請は、Cnetの前回のエントリーをアップロードした前日のことで、前回のエントリーを見て座談会出席の依頼が来たわけではない。ちなみに座談会の内容は、毎日インタラクティブで公開されている。

 第二に、これに合わせて私は取材班に取材を申し込んだ。正確に言えば、毎日新聞社長室広報担当に電話し、その上で質問要旨を書いたファクスを送り、インタビューに応じていただくように申し入れたのである。広報担当者とはその後数回のやりとりがあり、20日に毎日新聞社編集局長応接室で取材が実現した。私としてはネット君臨取材班の花谷寿人デスクやTキャップ、I記者らに対応してもらえればと思っていたのだが、インタビューに応じてくれたのは、同社編集局次長の池田昭氏だった。「ネット君臨」企画の担当局次長である。以下、一時間半にわたったインタビューの内容のダイジェストをここに記しておく。なおこのインタビューに対する感想は、日を改めてアップロードしたいと思っている。

「取材意図は十分に説明しました」

――がんだるふ氏が取材班の取材行為に関して、いくつかの疑問をミクシィ上で提起されていたのは知っていましたか。
池田氏 記事が出てしばらく後、ミクシィ上に(がんだるふ氏の提起が)出ているのを承知しました。
――上記の疑問提起に関連して、がんだるふ氏への取材の際に取材意図、紙面掲載予定などについて取材時に説明されなかった理由は。
池田氏 取材の意図は、われわれとしてはきちんと説明していたという認識を持っています。
――紙面掲載予定については説明していないのでは?
池田氏 取材した時点では、どの時期に掲載するのかについては当然決まっていない。(連載の)複数の回にわたって並行して取材を進めていますから。
――しかし一般的に言って、年間にわたってシリーズで掲載する今回のような連載記事の場合、「正月からスタートする大型連載で掲載する」ということは最低限でも決まっていたわけで、そのことさえ説明されなかったのはまずかったのではないですか?
池田氏 私の方で言えることは、掲載時期等は決まっていなかったということしか言えない。
――がんだるふ氏は、取材意図についても説明がなかったと言っていますが。
池田氏 意図を説明しないと取材にならないでしょう。取材意図が伝わらないまま三時間も取材が続くとは思えないので、十分こちらでは説明したと認識している。それ以外の詳細については、取材相手とのやりとりなので、その内容について佐々木さんにお伝えすることについては控えさせていただきたいと思っています。

「男という表現は、単に性別を表現しただけです」

――「ネット君臨」記事ががんだるふ氏を「男性」ではなく「男」と表現したのは、どのような意図だったのでしょうか。
池田氏 これを佐々木さんはネガティブな表現だとおっしゃるが、これは単に性別を表記しただけで、特別な意図をもって表現したわけではありません。
――ご冗談を。本気でそうおっしゃっているのですか?
池田氏 それは佐々木さんの主観かもしれないですよね。
――通常、相手に対して敬意を持っている場合に「男」と表記するケースは非常に少ないと思いますが。
池田氏 たとえば過去、新聞連載で読んでいただければわかるが、普通に女性について「女」という表記を使ったこともあります。繰り返しになるが、特別な意図を持っていたのではなく、性別を表しただけです。

「取材内容は第三者には明らかにできない」

――がんだるふ氏の疑問提起に対する取材班の対応として、どのようにすべきだとお考えになりましたか。また実際には、どのように対応されたのでしょうか。
池田氏 基本的な見解が違っているのかなということです。
――基本的な見解というのは、どのような意味ですか?
池田氏 それについては言えません。
――どうして言えないのですか。
池田氏 がんだるふさんに対する個別具体的なことなので、それ以上のことを教えるわけにはいかない。
――では一般論として、基本的な見解が相違しているというのはどのような文脈において使われているのですか?
池田氏 一般論としても、それ以上のことは第三者の人についてはお教えできない。新聞記者のモラルとして、取材先との話を佐々木にお答えするというのは控えさせていただきたいと思っています。
――しかし「基本的な見解が違っている」というのはあまりにも曖昧とした表現で、何を説明しているのかという基本的なことさえそれでは理解できません。説明として足りていないのではないですか。
池田氏 基本的にわれわれは取材の意図を説明した上で、取材に入ったという認識を持っている。だから、いまおっしゃられることについて言うと、そういう取材の説明をしているわけだから、彼がおっしゃっていることとわれわれの認識していることが違うのであれば、それは見解の相違であるということです。

「どこの誰かすぐにわからなければ、実名ではない」

――がんだるふ氏がネット上でこのペンネームを20年以上にわたって使用していることはご存じだったでしょうか。
池田氏 取材班は、どのぐらいというのはわからないとしても、長期にわたるハンドルネームを使っているというのは承知していました。
――このように長期にわたって使われている通名(ペンネーム)の実名性についてどのようにとらえられていますか。
池田氏 通名と実名は、本質的には異なるものであると考えています。
――通名と匿名は?
池田氏 匿名と通名は、どこでの掲載という問題がある。書かれた側からすれば、どこの誰かがわからなければ、匿名と同じであるし、誰かわからなければ、実名であるとは考えない。
――ではたとえば、鈴木一郎さんという平凡な名前の人物が実名でネット掲示板に書き込み、他人を批判した場合には、それはOKということでしょうか?
池田氏 それはだめでしょう。どこのだれかわからなければだめです。書かれた側がどこの誰であるかわかれば、理解できるけれども、少なくとも、ありふれた名前がどこのだれかわからなければ、それは実名とはいえない。
――では会員制のSNSなどで、アイデンティファイされたペンネームで批判するケースは?
池田氏 それはケースバイケースでしょう。
――たとえばがんだるふ氏はどうなんですか。
池田氏 がんだるふ氏はどこのだれかがわからない。書かれた側がわからなければ、実名とは言えません。
――がんだるふ氏はミクシィの会員で、アイデンティファイは可能だと思いますが。
池田氏 書かれた側がすぐにわからなければ、それは実名ではありません。
――書かれた側がすぐに特定できるというのは、どのようなケースをおっしゃってるのでしょうか? 具体的な実例を言ってみていただけませんか。
池田氏 それは今回の(がんだるふ氏の)ケースに結びついていくので、控えさせてください。
――たとえば住所氏名を書いていれば、実名ということなんでしょうか。
池田氏 それはそちらの判断に任せます。

「匿名言論を否定するつもりはありません」

――匿名による言論活動について、一般論としてどうお考えですか。
池田氏 匿名の言論を否定しているわけではありません。ケースバイケースで、内容によって判断していくといことです。
――「誰が言ったか」という属人的なとらえ方ではなく、「何を言ったか」という本質的なとらえ方をすべきだという意見についてはどう思われますか。
池田氏 それについても、内容によって判断すべきでしょう。
――「内容によって」というのは、具体的にはどのような内容の場合は許され、どのような場合は許されないということですか。
池田氏 ケースバイケースです。
――もう少し具体的におっしゃってください。
池田氏 権力を告発し、その告発者に被害が及ぶ可能性があるケースや、内部告発のケースがそうです。われわれとしては匿名による言論を否定するつもりはないんです。
――しかし内部告発においても、告発する側は正義だと信じ、しかし告発される側は「匿名による誹謗中傷だ」と受け止めるようなこともケースが起きてきますね。線引きをするのは難しいのではないですか。どこで線引きするのでしょう。
池田氏 検証するんです。
――誰が検証するんですか?
池田氏 それを佐々木さんにお答えするわけですか?
―― お願いします。
池田氏 それは控えさせてください。批判が正当な内容なのかどうかについて、われわれは裏付けをした上で取材を進めています。
――たとえば今回の「さくらちゃん」問題における、トリオジャパンの不透明な会計についても裏付けを取られたのでしょうか。
池田氏 その裏付け取材は行い、資料も入手しました。その結果として(ネット君臨の)記事になったのです。
――トリオジャパンの会計が公正なものであるという裏付けを取られたのであれば、それは「さくらちゃん」問題で批判されている両親に対する強力な支援となる内容だと思うのですが、なぜ記事化されなかったのですか。
池田氏 (記事化しないという)そういう判断をしたということです。

「真摯に向き合っているつもりだが……残念ですね」

――取材班の記事が匿名であるのに対し、取材対象に実名を求めるのはバランスを欠いているのではないかと思いますが、どうお考えですか。
池田氏 まず第一に、この記事は毎日新聞の紙面で連載しています。その前提で、連載の最終回に取材に関わった記者の名前はすべて載せています。チーム取材班として複数の記者が関わっているわけですから。
――取材の可視化という問題についてどう受け止めていらっしゃいますか。
池田氏 それは取材の内容によってさまざまであると考えています。取材源の秘匿の問題もありますし。基本的には、取材する側とされる側の信頼関係としか言いようがないと思います。一方で、社会に報道しなければならない事実については、報道していく責任がある。そういうことが、ケースバイケースで起きてくるわけですから、個別問題で判断していくしかないですね。
――がんだるふ氏は「信頼関係がなかった」と指摘していますが。
池田氏 真摯に向き合っているつもりだが、そう認識されていないとしたら、残念ですね。
――なぜ信頼関係ができなかったのだと思いますか。
池田氏 取材の内容を、第三者である佐々木さんにお話ししなければいけないのですか? それをお答えするのは筋違いだと思います。われわれとしてはきちんと相手の了解を得たうえで記事化したと考えています。われわれとの認識の間に差があるということですね。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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