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ソフトウェアのコモディティー化

2006/06/01 16:51
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 先日セキュリティ業界に大きなインパクトを与えるだろうニュースがありました。
 ソースネクスト社のアンチウイルス製品に関してのニュースです。
今回はこの記事を題材に、ソフトウェア業界における製品のコモディティー化と差別化戦略に関する考え方について書きたいと思います。

アンチウイルス製品市場
 はじめに現在のアンチウイルスソフトウェア市場状況について説明します。
 色々な調査機関で、企業と家庭にあるPCへのアンチウイルスソフトウェア導入率に関する調査をしています。それらの調査によると、企業においては90%代後半、家庭においては70%代後半のPCにアンチウイルスソフトウェアが導入されています。企業向けはほぼ飽和状態で、メーカは既存顧客を維持し、ソフトウェア使用更新によりビジネスの多くを成り立たせています。一方家庭向けは、これだけウイルスが騒がれているにも関わらず導入がなかなか進んでいないのが現状です。

 次に同市場の競合状況です。ニッチ市場や完全競争市場になりやすいミドルウェア市場において珍しく、大手3社(トレンドマイクロ、シマンテック、マカフィー)で80%以上のシェアを持っているという状況です。いずれのメーカもブランドが確立していることもあり、他社が大きなシェアを獲得することが難しくなっています。

 アンチウイルスベンダの収益の多くは新規ライセンス販売と更新費用です。しかし、ライセンス売り切りのビジネスではなく年間使用料というライセンス形態で、年間定額のサービスビジネスのような収益モデルです。この収益モデルもパッケージソフトウェアライセンスのビジネスでは少ないモデルです。

 この市場は寡占状態になっていますが、このままお互いのシェアが大きく変動することなく続くのでしょうか。競合の出現により大きく変わる可能性があります。

 この市場においての脅威として一番に出てくるのが、マイクロソフトの参入があげられます。  
 

 同社は以前よりアンチウイルスベンダの買収をするなどセキュリティ対策に関する取り組みへの強化をしていましたが、いよいよ参入といったところでしょうか。
脅威となりうるもう一社は今回のブログで取り上げているソースネクスト社です。これについてはもう少し詳細に書きたいと思います。

ソースネクストの戦略
 同社サイトを見ると、同社のソフトウェアビジネスにおける戦略は明確です。ソフトウェアのコモディティー化が同社の戦略です。
 今回のアンチウイルスソフトは同社のコモディティー製品群の中核を占めると考えられます。

 セキュリティの場合、安いと悪かろうというイメージがつくため、低価格による市場浸透戦略が難しいという話もあります。その低価格によるマイナスイメージをなくすためには、安心感に訴える企業もしくは製品のブランドイメージを向上させる必要があります。

 ソースネクストはアンチウイルス市場の特徴である、
 ・更新(年間契約)ビジネス
 ・ブランドへの信頼
 ・コンシューマでの導入率が低い
 のポイントをついた戦略を打ってきたと考えられます。

ソフトウェアのコモディティー化
 では今回のソースネクストのコモディティー化戦略はソフトウェア業界をマーケティング的な観点から分析した場合、どのようなことが言えるのでしょうか。
 通常製品のコモディティー化とは、機能差別化をとることができず価格競争に陥っている状況と捕らえることができます。機能差別化を行う最大の目的は利益の獲得です。しかし例外もあり、生産方法に関する差別化を行うことにより、コストを下げ利益を上げている企業もあります。当然設備投資が大きくなるので、規模の経済が働くような製品になります。デルコンピュータがその例です。

 デルコンピュータのようなビジネスモデルを持てない企業は価格競争というマイナススパイラルに陥ってしまうことになります。今回はデルコンピュータに関する内容ではないので割愛しますが、同社の場合単なる直販というモデルだけではない戦略があり成功しています。

 こういったコモディティー化による価格競争による状況から抜け出すのは容易ではありません。売上を上げるために価格を下げるだけではなく、販売ボリュームを増やすために膨大なコストを広告宣伝に投入する必要が出てきます。

 アンチウイルスソフトウェアというミドルウェアがコモディティー化していると考えると、今後どうなることが考えられるのでしょうか。ひとつはOS等のプラットフォームからみて必須の機能となったソフトウェアは有償無償に関わらず、プラットフォームに吸収されるということです。以前PCにTCP/IPで通信する機能を持たせるためのソフトウェアが販売されていました。しかし今ではTPC/IPを使ったネットワークへの接続は当然の機能となり、その機能はOSに吸収されました。もうひとつは、価格競争の激化です。ちなみに価格競争の激化には単に価格を下げるのではなく、ライセンシング方法を変えるという方法も含まれます。すでにご紹介したとおり、すでにプラットフォームへの吸収や価格競争は起きています。

 こういったことから抜け出すためのキーワードの一つとして、「戦いの軸を変える」という発想が重要になります。PCの戦いにおいてなぜデルコンピュータが優位に立っているか、ムーアの法則により同スペック製品の価格下落スピードが速い市場で、同社はPCを販売することが彼らのビジネスと考えていない可能性があります。顧客視点で、顧客の求める価値とはなにかを視点を変えたり広げたりして考え直し、「戦いの軸を変える」もしくは「バトルフィールドを変える」必要があると考えます。
アンチウイルス各社は今後異なる軸からのアプローチによるビジネスを再検討する必要が出てくるでしょう。

 今回の場合、ソースネクストはセキュリティベンダーとしてこの市場に注力しているのではありません。コモディティー化が可能なソフトウェア製品を販売している企業としてセキュリティ市場に力を入れているのです。これも軸を変えた戦略であると考えられます。

 今後ソフトウェアビジネスはインターネットのさらなる普及と進化、それにともなうサービス化の波にさらされ、大きく変化することが考えられます。そのとき重要なのは、自社のビジネスから一歩引いた視点から、「戦いの軸を変える」もしくは「バトルフィールドを変える」ことを検討してみることだと考えます。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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