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イノベートアメリカ・米国の次世代技術戦略--Part3:人材とMOT

2005/10/26 09:32
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 前回に引き続き、「パルミサーノレポート」についてです。今回はMOTと関連性が大きく、同レポートでも最初に提言がなされている「人材」について説明します。

 同レポートは「ヤングレポート」と同様、非常に具体的な提言内容まで示されているといえます。提言項目によっては数値目標を設定しています。特に「人材」についてはMOTの観点からも注目するべきポイントがあります。以前の「ヤングレポート」で「人材」は「新技術の創造」「資本」に続く第3の分野でしたが、今回のレポートでは「人材」を提言のトップ項目にし、「イノベーションにとって最も重要な要素」としていることが特徴的といえます。「人材」の内容は以下の通りです。

1、多様性に富み革新的で熟練した労働力の創出のための国家的イノベーション教育の戦略構築
 この提言分野ではまず、科学技術専攻の学生を支援するための仕組みとして、民間による奨学金制度の創設や学生に出資する企業や投資家への税控除、連邦政府の研究所が5,000人の大学院生に対し特別奨学金基金を創設するなど、学生に対する資金的な援助をあげています。さらに、9.11の後、海外からの優秀な技術者が減少したことに対する対策として、科学技術専門の修士コースPSM(Professional Science Masters)の設立や、優秀な学生を米国の大学に進学させるために、入管制度の改革や卒業後米国内での就労許可を与えることを挙げています。

2、次世代のイノベーターの育成
 大学だけではなく、高校生以下の教育機関においても、イノベーションを作り出す人材の育成をするために、問題解決型の教育を行い創造的志向やイノベーションスキルを啓発する早い段階での教育や、学生基礎研究と応用の間を橋渡しできる人材(MOT人材)を作り出すためのイノベーションを学ぶ機会や企業家と中小企業のマネージャーに向けた支援を実施するとしています。

3、グローバルな経済のなかで成功するための労働者に対する支援
 健康保険や年金のポータビリティを高める、技術や貿易によって職を失った労働者の支援をするなど、技術を持った人が仕事に集中できるようにする支援を行います。

 人材に関する提言は、9.11の航空機自爆テロ以降、米国の技術を支えてきた海外からの優秀な人材の流入が減少したことや、国内人材のイノベーション教育やエンジニア教育に遅れをとったことによる、労働力の質的低下が懸念から出たものが多いようです。提言では人材のグローバル化により、自国の労働者がどのようなポジショニングをとるべきなのか明確にしたうえで、それに対する具体的なアクションを提示しています。

 他の項目(投資、インフラストラクチャー)についても特筆すべき点がいくつかあるので、紹介します。

・連邦政府機関のR&D予算の3%を、ハイリスクな基礎研究を推進する「イノベーション促進」助成金に配分することによって、研究開発を後押しする。

・国防総省の科学技術予算の少なくとも20%を長期基礎研究に振り向けることで、国防総省の基礎研究に対する役割を拡大する。

・今後5年間で10箇所の「イノベーション強化地域(Innovation Hot Spots)」を創設する。

・National Innovation 賞を創設して、優れたイノベーションを表彰する。

 前述したように、MOTの観点から注目すべき点は「人材」に関する提言の部分だといえます。国際競争というマクロな環境の中で、米国の労働者がどのようなポジションを取るべきか、それに対して米国の各機関がどのような支援をするべきか明確に提言しています。研究と実用化の間を橋渡しできるような人材の教育をするという部分にも関係しますが、PSM(Professional Science Masters)を全州立大学に創設するという提言があります。このPSMは工学と経済学を同時に修了する修士号ですが、MBA卒業生を多く生み出してきた今までの米国と違い、ファイナンスなどのビジネス分野からだけではなく、技術者に経営知識をつけさせることにより、橋渡しをさせること考えているようです。

 日本においてMOT人材はどのような役割を持つべきなのでしょうか。

 以前に本ブログで日本の国際競争力(IMD)について述べました。その中で「技術開発、特許取得をしたものがビジネスに結びついていない」としました。技術開発投資や特許数において日本は上位にもかかわらず、ビジネスの効率性は60カ国中37位、企業家精神の広がりについては最下位の60位というのが、その理由です。日本においてはビジネスから見た技術というリソースの利用方法を考えることができる人材、「技術のわかる経営者」を育てるべきだという意見が最近多くなってきています。
このことは米国がPSMにより育成しようとしている、「経営のわかる技術者」とは逆の人材育成であるといえます。

 MOTのポジショニングについては意見が分かれる部分ではありますが、今後日本独自のMOT人材育成についての議論は、数回にわたり紹介した「パルミサーノレポート」により更に活発になっていくと考えられます。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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