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イノベートアメリカ・米国の次世代技術戦略--Part2:パルミサーノレポート概要

2005/10/02 12:22
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 前回は主に「パルミサーノレポート」以前に提言された報告書、特に1985年の「ヤングレポート」に関して説明をしました。
今回は引き続き、「イノベートアメリカ(パルミサーノレポート)」の紹介をします。

提言の背景
 2003年10月、競争力評議会の中に国際技術革新戦略(National Innovation Initiative)が設置されました。その委員長としてIBM社のCEOであるサミュエル・パルミサーノ氏とジョージア工科大学のワイン・クロウ学長が委員長として就任しました。そのことから、作成された「イノベートアメリカ」という報告書は別名「パルミサーノレポート」と呼ばれています。このレポートは2004年12月の国家技術革新サミットで発表されました。

 1985年の「ヤングレポート」から20年近くが経過し、国際競争力環境も大きく変化したというのが、今回のレポートが作成された理由であると考えられます。「パルミサーノレポート」では、現在の米国の競争力について、
「米国の繁栄の源は想像力に富んだ経済力であり、プロダクティブイノベーションにおいて米国は間違いなくNo.1といえる。しかし、現在、米国の土台が揺らいでいる。例えば、双子の赤字問題が挙げられよう。ここで最も大切なのは経済成長の実現である。そしてイノベーションこそが経済成長の原動力となる。イノベーションによる経済成長を実現するためにも、我々の現状と将来を理解し、戦略を立てることが必要である」
と、現在起きているギャップを明確にした上で戦略転換の必要性があるとしています。

 さらに現在の米国においてイノベーション戦略を立てる上で重要な要素とはなにか、本レポートではいくつかのポイントを挙げています。

・イノベーションの新しい形態
イノベーションを起こし、米国が先導的地位を維持するための環境は以前と変化しているとしています。その変化とは、「加速度的な広がり」、「多分野横断的、技術複合的なものになっている」、「科学者やエンジニア、製造者とユーザの 強力関係が必要になっている」、「グローバル化している」等としています。

・競争の激化
 以前のレポートでは、国の競争力比較では日本などを対象としていましたが、「パルミサーノレポート」ではインド、韓国、中国などエマージングタイガースといわれる「新興イノベーション地域」を対象としています。エマージングタイガースは単に労働力が安いことを利用した国際競争力だけではなく、科学技術に関する教育に力を注ぐなど、イノベーションに向けた国家戦略をとっているとしています。下表は、その裏づけとして挙げられた、新興各国が米国で取得した特許数の比較です。

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新興各国が米国で取得した特許数(1993年、2003年)

 さらに重要な要素のひとつとして、「イノベーションのエコシステム(Innovation Ecosystem)」を示し、イノベーションは線形的、機械的な現象ではないとしています。要するに、ある決まった流れがあって作られるものではなく、経済社会で存在する多くの要素間で発生する相互作用によるものであるとしています。

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イノベーションのエコシステム
出典:米競争力評議会資料、藤末健三氏 日経BizTech No.8 「イノベートアメリカの読み解き方」より筆者作成

 上記の3つの要素に加え、9.11テロの影響もありアジア圏からの優秀な人材の流入が減少したことも、今回の報告書が作成された背景にあります。

パスサミーノレポート

 最初に「パルミサーノレポート」では、イノベーションを「社会的経済価値の創造につながる発明と洞察力(the Intersection of Invention and Insight)」と定義しています。この定義のポイントは技術の発明が経済価値に繋がってこそイノベーションであるとしていることです。本レポートでは、この定義と現在米国が置かれている状況を踏まえ、非常に具体的な提言を行っています。その提言は、「人材」、「投資」、「インフラストラクチャー」の3つからなっています。

1、人材
 i) 多様性に富み革新的で熟練した労働力の創出のために国家的イノベーション教育の戦略を構築すること
 ii)次世代のイノベーターを育てること
 iii)グローバルな競争にさらされる労働者に対する支援策を講じること

2、投資
 i)先進的・分野横断的な研究を活性化させること
 ii)アントレプレナーシップのある経済主体を増加させること
 iii)リスクを積極的にとった長期的投資を強化すること

3、インフラストラクチャー
 i)イノベーションを通じた成長戦略について国家的なコンセンサルを醸成すること
 ii)知的財産権に関する制度を整備すること
 iii)規格の統一等米国の生産能力強化のインフラを整えること
 iv)医療分野をモデルとしてイノベーションのためのインフラ整備をケーススタディ的に行うこと

 今回のレポートの特徴的は、最初に「人材」について述べている点です。このことは「ヤングレポート」と比較して、「より長期的な視野に立った戦略であると言えます。
次回はさらに、「パルミサーノレポート」について、特にMOTと関係の深い「人材」について説明したいと思います。

参考資料
日本政策投資銀行 「産業競争力強化に向けた米国動向と日本の課題」

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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