optさんが主催するソーシャルアプリコンテストのタイアップセミナー 【人気ソーシャルアプリの作り方 〜 超人気アプリの企画開発者によるパネルディスカッション】に行ってきました。
見所はなんといっても豪華なパネラー陣! 「日本のソーシャルアプリのヒットメーカーが揃い踏み」という感じでした。
写真が荒いのはモバイル撮影のご愛嬌ということで・・
パネラー陣
- 大塚 剛司氏(株式会社ディー・エヌ・エー ソーシャルメディア事業本部 プラットフォーム統括部長)
- 代表作:「怪盗ロワイヤル」
- 国光 宏尚氏(株式会社gumi 代表取締役)
- 代表作:「幕末英雄伝〜もう一つの龍馬伝説」、「キャバウォーズ☆恋してセレブ」、「刑事ハードボイルド」
- 長谷川 敬起氏(株式会社ドリコム エンタメウェブ第2事業部 執行役員)
- 代表作:「ゲームスタジオ物語」、「マイミク村」
- 森田 英克氏(KLabGames株式会社 取締役/エグゼクティブプロデューサー)
- 代表作:「恋してキャバ嬢」
- 吉田 大成氏(グリー株式会社 メディア開発部 副部長/プロデューサー)
- 代表作:「釣り★スタ」、「探検ドリランド」、「モンプラ」
パネラーの経歴詳細について知りたい方はこちらをご覧ください。
聴講者はざっと200人程度。日本を代表するソーシャルアプリのプランナーが集まるとあって会場は大盛況でした。当日はUstreamによる中継(http://ustre.am/koDl)及び、専用のtwitterハッシュタグ#sac2010も用意され、「裏セッション」も大盛況でした。
セミナーの内容
パネルディスカッションではモデレーターのコンテンツワン川井さんより以下のお題が出され、パネラーの方々がそれぞれの意見を展開されました。
アプリの企画について
- 1)着想の仕方については?(ベンチマーク優先? or 独自アイデア優先? またその手法は?)
- 2)企画にGOを出す(開発着手)条件は?
- 3)各社紹介したアプリの開発〜リリースまでの期間は?
- 4)企画のメイン担当やチーム構成は?(企画マン? エンジニア? 両方?)
- 5)課金モデルの要諦について(どのような課金モデルをベースとしているか)
アプリリリース後の運用について
- 6)リピート&継続させるための施策は?
- 7)売上が上がり続ける期間は? そもそもアプリの寿命ってあると考えていますか?
- 8)ユーザークレーム、問い合わせへの対応や、公式コミュニティとの関わりは?
今後の展開について
- 9)今後、リリース予定のアプリはどんな感じのもの?
- 10)今後、脅威を感じる新規参入してくるであろうコンペチターは?
- 11)個人的に気に入っていて、はまっている他社アプリは?
コンテスト参加者以外に、本業のSAPさんも多かったようで聴講側は真剣そのもの。みなさんしきりにメモを取っている姿が印象的でした。私も90分のパネルディスカッションが本当にあっという間でした。
ダイジェスト in パネルディスカッション
90分間で 1)〜11) に関する貴重な意見を聞くことができました。ここではその中でも印象に残ったやりとりをご紹介します。
1)着想の仕方については?
着装時点で鉄板系のゲームや時代のニーズに合ったものを元にアイデアを膨らませていくなど、ある程度マーケットを意識した上で出発することが多いようです。森田さんによると、プロジェクトによるブレスト型のテーマ掘り下げ手法もアリとのこと。
2)企画にGOを出す(開発着手)条件は?
いろいろな意見がありましたが、印象的なものを紹介します。
- その企画にキラリと光るものが感じられるか? それを一言で説明できるか? を重視。(by 大塚さん)
- 企画者がその企画を本当に熱意を持ってやりたいかが重要。(by 国光さん)
- まずモックアップを作成し、(ユーザー目線で)触ってみて楽しそうだったらGO。(by 長谷川さん)
3)各社紹介したアプリの開発〜リリースまでの期間は?
『怪盗ロワイヤル』を筆頭に、パネラーの方々の多くが「開発期間は3〜4ヶ月」と回答。森田さんは「作り込んだので半年かかった」とやや長めな回答。国光さんは「1〜2ヶ月」と比較的短期リリースを行われているようでした。ちなみにテスト期間は(皆さん)1〜2週間とのこと。モデレーターから「短期リリースのコツは?」と聞かれ、「寝ないことです!」という答えには会場から笑いが。
4)企画のメイン担当やチーム構成は?
DeNAさんは(有名な)企画1人、開発1人という体制。「そのユニットの人間関係や人柄によってイニシアチブを持つ方が自然と決まる」とのことです。その他のパネラーの方は概ね企画者主導で、チームリーダーたるプロデューサーと開発ヘッドがチームを統括するスタンダードな体制。唯一GREEさんのみがエンジニア主導という回答でした。またGREEさんは(長年の開発/運用経験からか)ゲームの開発/運用が属人的にならないように、チームで取り組むことを心掛けていらっしゃるようです。
5)課金モデルの要諦について
これについては、細かいテクニック論をはじめ多くの意見が出ましたが印象的だったのは、大塚さん、吉田さんの「ゲーム性が損なわれるから先に課金のことは考えない」という意見と、国光さんの「リリース後に課金ポイントを変更するのはユーザーを裏切る行為になりかねないので、課金ポイントは初めから十分に検討しておくべき」という、やや見解の異なる意見が出たことです。
6)リピート&継続させるための施策は?
これに関しては#sac2010に良い書き込みが多数あったので以下に抜粋しました。
- - ”プレイしていない時” の動向が気になるように配慮する
- - 時間経過によるイベントを明確にユーザに認識させ、リピートするための強い動機を持たせる
- - 「リピートするといいことがある」よりも「リピートしないと嫌なことが起こる」の方がいいのかも知れない
- - ユーザーがゲームに来てくれないと、その友達が困るような仕組みを導入する
- - ゲーム性はいつか飽きられるのでソーシャル性で繋ぎ止めれるようにしておく
- - 安定的なゲーム推移の中に不連続要素を確実に入れていく
- - コミュニケーションを如何に簡単に起こせるかがポイント
ここは未来の売上を左右する非常に重要なポイントですね。大変参考になる意見が多く、パネラーさん達がヒットメーカーとして君臨している秘密を垣間見た気がしました。
7)売上が上がり続ける期間は? そもそもアプリの寿命ってあると考えていますか?
ここは非常に重要なパートなので、少し厚めに紹介します。
国光さん
以下の3つの数字が重要。
- 1.DAU
- 2.課金率
- 3.ARPU
PF(プラットフォーマー)はリテンションを取りやすいが、サードパーティーは2.と3.を高めないとキツイ。
長谷川さん
90日と120日後の継続率で(ある程度)判断している。
ここで長谷川さんからPF(プラットフォーマー)たる大塚さんと吉田さんに、「全体的な課金率が上がるということは、課金ユーザーの優位性が薄れるということ。課金率はいたずらに上げ過ぎない方が良いのか?」という質問がありました。
大塚さん、吉田さんからは以下のような回答
- GREEのアプリは一般的なソーシャルゲームよりも課金率が高めだが問題ないと考えている。(by 吉田さん)
- 私見だが課金率50%のアプリもあると考えている。”5%” など一般的に言われる目安にあまりこだわっていない。(by 大塚さん)
吉田さん
『釣りスタ』を例に以下のようなご意見。
- リリースから3年経つが未だに遊ばれているのでそういう意味では寿命は無いのではないか。
- 自分たちで寿命の上限を作らないことが長寿の秘訣。
- どんなステータスのユーザーでも楽しめるよう、ゲーム性に配慮している。
- 安定している時に如何に非連続な成長を起こせるかが重要。(3ヶ月スパンの機能増強やイベントに実施にてこれを実現)
どのアプリも『初速』に代表される「調子のいい時期」はあるものの、無料である以上、常にユーザーが離れるリスクをはらんでおり、ユーザーを楽しませる努力を怠らない姿勢が大切だと感じました。
8)ユーザークレーム、問い合わせへの対応や、公式コミュニティとの関わりは?
基本的にユーザークレームの多くはアプリの不具合の指摘でありこれには迅速に対応すべき。コミュニティなどの意見は拾うもののあまり参考にしない。声の大きいユーザーは特殊なのでそれに流されないように注意する必要がある。(by 国光さん)
当初、「こんなアプリに絶対お金を使わない」 と言っていたユーザーが暫くして、「もう2,000円も使っちゃったよ」と言った例もある。純粋に面白いゲームを作ることに集中すればユーザーさんにもそれは伝わる。(by 森田さん)
9)今後、リリース予定のアプリはどんな感じのもの?
ここは全てのパネラーさんが奥歯に物が詰まったような回答をされていました。ライバルを目の前にしてそりゃそうですよね(笑)
10)今後、脅威を感じる新規参入してくるであろうコンペチターは?
「Zyngaを代表とする海外勢」と答えられた方が多かったです。面白かったのは国光さんのZynga≒黒船と坂本龍馬の比喩。「坂本龍馬がやった凄いことは、海外から武器を仕入れ、その成果を持って薩長を支援したこと。決して黒船勢に寝返るようなことはなかった。黒船に大和魂を売り渡すSAPなどもってのほか!」この発言に#sac2010は大盛り上がりでした。
また、長谷川さんが「昔はgumiってところがインストー数ばっかり多くてDAU少ないアプリをいっぱい出して驚異だったんですよね〜」と国光さんと掛け合う場面も(笑)
11)個人的に気に入っていて、ハマっている他社アプリは?
これは私としても気になる質問でした。注目の結果は、、
- 大塚さん:やきゅつく
- 国光さん:クリノッペ
- 長谷川さん:(名前忘れたけど)Facebookでフリーギフトでお酒をプレゼントし合うアプリ
- 森田さん:ホシツク
- 吉田さん:ゲームスタジオ物語
私もSAPの端くれとしてほとんどプレイしていますが、どれも素晴らしい出来栄えです。
その他多くの貴重な話がありましたが十分にメモれなかったのでこの程度に留まってしまいました。本当はもっと面白い話もあったのですが、、申し訳ありません。
尚、同パネルディスカッションを聴講されていた方で、私の記事に事実と異なる部分を見つけられた方はtwitterで @hisyamada までメッセージを頂ければ幸いです。(速やかに修正致します)。
おまけ
セミナーの終盤で会場から、「GREEさんとDeNAさんは仲が悪いって本当ですか?」の質問が! でもこの質問、実は国光さんが喋りながらツイートしていて、会場にいた知人に(やや無理やり)言わせたものでした(笑) 互いに初対面だった大塚さんと吉田さんは困惑しつつも、「お互い良きライバルなので、これからも切磋琢磨していきましょう」と回答。大人なオチが付きました(笑)
パネルディスカッション後の親睦会でもパネラーのみなさんとご挨拶することができ、非常に有意義な時間を過ごせました。パネラーの方々同様、私も日本のソーシャルアプリビジネスの発展を願って止みません。そんなことを考えれたセミナーでした。
パネラーの皆さん、及び事務局の皆さん、本当にお疲れ様でした。
参考リンク:
http://d.hatena.ne.jp/kaw0909/20100709/1278696820