前記事の「レコチョクに学ぶ『成功する無料会員ビジネス』の仕組み」では月額制有料サイトが新たに無料会員組織を作る場合のポイントについて書きました。今回はそれをもう少し具体的に掘り下げたいと思います。
前回のおさらい
既に有料会員組織を構築してしまった後に無料会員組織を作る場合に注意すべき点は、以下の2点でした。
- 無料会員に与えるベネフィット打ち出せるか?
- 有料会員ならではのベネフィット打ち出せるか?
未入会のユーザにそれなりのベネフィットを感じさせなければ無料会員(=無料ユーザ)にすらなってもらえないが、ベネフィットを与えすぎると既存の有料会員(=有料ユーザ)が無料に流出してしまうという非常にデリケートな課題に対応する必要があります。
この課題に対する解を式で表すと以下のようになります。
- 未登録ユーザのベネフィット < 無料ユーザのベネフィット < 有料ユーザのベネフィット … 公式1
まあ当たり前の話ですね。。
でもこの公式は実は間違っています。いえ、十分でないと言うべきでしょうか。実は正しい公式は以下なのです。
- 未登録ユーザのベネフィット ⊆ 無料ユーザのベネフィット ⊆ 有料ユーザのベネフィット … 公式2
上位概念のユーザは下位概念のユーザのベネフィットを包含すべきなのです。これは言い方を変えれば、下位概念のユーザには上位ユーザの一部のベネフィットを制限付きで公開すべきということです。
この概念は『フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略』にも記載されている、「フリーミアム」の考え方と同じです。
必要なのは絶妙なバランス
フリーミアムは「有料課金ユーザが無料ユーザを支える」という考え方ですが、最も大事なのは無料ユーザに公開するベネフィットをどのポイントまで制限するかです。上述したように無料ユーザにも一定のベネフィットを与えなければ入会すらままならないため、ここは非常に重要なポイントです。一般的には無料ユーザの場合以下を制限することによって有料会員のベネフィットを担保しているようです。
- 使用可能な機能
- 使用可能なデータの種別
- 使用可能なデータの量
- または上記の複合
そのやり方は提供サービスによって様々ですがいずれにせよ絶妙なバランスが求められます。そしてこの時肝に銘じるべきキーワードは、
- 有料ユーザには優越感を
- 無料ユーザには物足りなさを
です。
アンチパターン
上記で無料ユーザを囲い込むときの成功則を説明しましたが、逆に陥りがちな失敗例について説明します。
無料会員ならではのベネフィットを提供してしまう
公式2を誤って1と解釈してしまったために発生する典型的な間違いです。そしてこれは有料と無料の垣根を複雑にする最もやってはいけないことの1つです。このようにすると、有料ユーザは有料であるメリットがわかりづらくなり、無料ユーザは有料ユーザになるメリットがわかりづらくなります。つまり仕組みが複雑になるだけで何もいいことが無いのです。
このパターンにハマると有料→無料への流失と、無料→有料への移動困難が同時に発生します。
有料ユーザが無料会員登録できてしまう
既存の有料会員を動かすようなことは絶対にしてはいけません。有料ユーザに「無料会員にも登録しなくちゃ」と思わせたり、またそれが可能なシステムを提供してしまう時点で、その囲い込み戦術は有料会員の流出を生んでいます。
しかしこれは意外に陥りがちなワナです。無料→有料 の順番でサービスを構築した場合、ほとんどの場合このような発想にはならないのですが、有料→無料でサービスを構築する場合は意外とやってしまいがちなのです。
まとめ
上記で書かれている成功則は世の中の一般的なサービスで既に行われているため、実はほとんどの方が感覚的に知っています。しかしその原理原則を完全に消化しきれていないため、細かい部分で展開を誤り、「ちょっと微妙なサービス」になってしまうことも少なくありません。無料会員の囲い込みの原則はシンプルです。以下の公式を基本に物事を考えれば、そう外さないと思います。
- 未登録ユーザのベネフィット ⊆ 無料ユーザのベネフィット ⊆ 有料ユーザのベネフィット
次回は囲い込んだ無料会員を有料会員に変化させるための戦術について書きたいと思います。