先日、『無印良品が大切にしているたった一つの考え方』なる本を読みました。今日はこの本で得たことについて書きたいと思います。
現代は提案型ビジネスが大事
昨今「このモノ余りの時代にあっては提案型のビジネスであることが大事」と言われています。提案型とはこれまでに無かったライフスタイル、価値観等を消費者に商品・サービスを通じて提案する事です。今の時代モノが無かった昔とは違いモノが溢れているので、「純粋な消費欲や保持欲だけで購買に至ることは少ない」という考え方から、この「提案型」が考え出されました。
確かに巷でヒットしている物を見渡すと、提案に基づいているものが多く、スペックの良さのみで勝負してい商品は少なくなって来ている印象を受けます。そういう意味では無印良品も幾つかある提案型の企業の1つといえます。
提案って何?
ただしこの提案が曲者です。「提案」というと聞こえは良いのですが、 中には提案の仮面を被った「押し付け」であることも少なくありません。では「提案」と「押し付けは」どう違うのでしょうか?言葉の意味はさておき、私はこの2つの違いを以下のように見ています。
- 提案:自由度が多く、ユーザに選択肢が残されている
- 押し付け: ユーザに自由度がなく、それに従うしかない
この2つの違いは消費者にとって非常に大きな意味を持ちます。
例えば以前ある健康食品メーカーが、「ランチダイエット」なる提案をして商品を売り出そうとしましたが、これは2に該当します。ユーザには選択肢はなく、ランチダイエットに最適な商品をランチダイエットのためにお購入するしかありません。
しかし無印の「その次があるバスタオル」。これは1に該当します。 なぜならユーザに選択肢が残されているからです。一般的にユーザは企業に良い提案をしてもらうと嬉しいかというとそうではありません。あくまで「自分で選んだ、考えた」という感覚を必要とします。これはライフスタイルにこだわりがある人ほど顕著なようです。
ただし無印の製品にも2は存在します。 直角靴下などはこれに該当します。
例えば売れている掃除機のルンバ。これは2に該当しますので自由度はありません。ユーザは受け入れるしかないのです。なので私の予想ではルンバは今後、機能強化するしか生き残る道はないと思います。もちろん2の提案であってもユーザに与えるベネフィットが著しく高い場合は受け入れられると思います。なので別に2が悪いというわけではなく、「2で勝負するならとことんベネフィットを追求すべき」というのが私の考えです。
無印の製品
私は特にムジ好きという訳ではありませんが、無印良品は常に「ユーザを自由にしようとしている」点で非常に評価しています。物の機能を見直し、無駄をそぎ落とすことによってその物はある目的に特化したシンプルなデザインとなります。そしてシンプルな物はユーザに組み合わせや利用ケースの自由を与えます。
ソフトウェア等でも同じことが言えますね。
これが無印が1を大事にする企業であることの本質だと思います。
我々がここから学ばなければならないのは、単に「提案型ビジネス」を唱えるだけではなく、
- それはどんなタイプ提案か?
- 少なくとも1なのか2なのか?
を自問することだと思います。 私は少し前まで開発者でしたが、ある製品に機能をいっぱい付加し、「さあこれでユーザも満足だろう」と半ば自己満足に陥っていました。しかし今ではそれは中途半端な2であったことを痛感しています。そして(少なくともソフトウェアの世界で)本当に大切であったのは1であったということもわかってきました。
今は1の提案が出来る人間になりたいと思っています。