前回はプロセス関連図の作成過程とその効果について説明しました。今回は予告を変更し、ある意味PMP受験の最難関と言っても過言ではない受験申請手続きについて説明します。PMPについてご存知ない方はこちらの記事をご覧下さい。
まずは受験申請のための知識を獲得しよう
最近の資格取得の受験申請はWebで行うことが普通ですが、PMP試験も同様で(通常は)Webで行います。紙ベースでの受験申請も可能らしいのですが私は経験がないので、ここではWebでの受験申請のみを説明したいと思います。PMPの受験申請はPMI本部のWebサイトから行います。既にPMIの会員になっているのであれば、その時に発行されたアカウントとパスワードを使用して同Webサイトにloginし、当該ページからPMPの受験申請を行うのみです。PMP試験自体はPMIの会員でなくても受けることができますが、会員登録しておいた方が後々何かと都合が良いのでこのタイミングで会員登録することをお勧めします。
Webベースでの受験申請手順については PM info web のサイトにスクリーンショット付きで詳細に説明されていますので、そちらを参考に申請すればよいでしょう。ただし同ページを参照するにはメンバー登録(無料)が必要なので事前に登録しておいて下さい。いきなりですがここで非常に重要なアドバイスをしておきます。皆さん、PMPの受験を決意し時点で上記のPM info webのページに必ず目を通しておいて下さい。なぜならPMPの受験申請はかなり面倒であり、事前の準備にかなりの労力を要します。この理由については後述しますが受験申請直前になって、「えー こんなことしないといけないの?!」とならないためにも必ず同ページを読んでおくことをお勧めします。
受験申請情報の管理はWebサイトで行う
以前の記事で、PMPの受験には一定期間以上のプロジェクトマネジメント経験が必要であることを説明しました。
受験資格は「過去8年間に4500時間以上(高卒は7500時間)かつ、3年以上(高卒は5年)のプロジェクトマネジメント経験を持つこと」と規定されています。
この情報(以後『PM履歴』と呼称)はPMP受験申請時にWebを使って登録していくことになりますが、実は一気に登録を済ます必要はありません。登録したPM履歴は自分のPMIアカウントと紐付けられ、入力の度にサイトのデータベースに保存されます。当初私はPM履歴は申請時点で一気に登録する必要があると思い込んでいましたがそうではありませんでした。考えてみると4500時間もあるPM履歴を一気に入力するのはかなり辛い作業です。事実私は全ての情報を入力するのに4時間を費やしました。
「4時間も掛かるのか?!」と驚かれる方もいるかと思いますが、PM履歴を正確かつ詳細に登録しようとすると4時間程度は掛かるのです。そもそも4500時間のPM経験は、月に100時間PMとして稼動したとしても3.75年は必要とします。しかしよく考えてみると、3,4年前の自分の仕事の詳細を覚えている人はほとんどいません。会社で日報を付ける義務がある方などはそれを引っ張り出してくればなんとかなりますが個人的、会社的に稼動管理を厳格にしていない場合は、思い出すのにかなり記憶の糸を手繰り寄せるなければなりません。またPM履歴が転職前後の合算である場合などは稼動記録を参照することすらできません。よってPMP受験申請時の重要なポイントとして、「PM履歴の棚卸しをしておくべき」というものがあります。
PM履歴の棚卸し
これまでPM履歴としては「4500時間のPM経験があればいい」と説明してきましたが、実はPM履歴にはもっと細かい条件が存在するのです。まずは以下にその条件を列挙してみます。
- PM履歴の対象となるPM経験は申し込みから8年間以内とする
- PM履歴の時間は150h/月程度で計算する
- 期間内のプロジェクトの重複は不可
- PM履歴を合算した結果、5つのプロセス郡全てを網羅していること
- ただし個々のプロジェクト内では活動期間が0のプロセス郡があっても良い
ここで言う「5つのプロセスグループ」とはPMBOKで規定されている、
- 立ち上げプロセス郡
- 計画プロセス郡
- 実行プロセス郡
- 監視・コントロールプロセス郡
- 終結プロセス郡
のことです。 4,5は分かりにくいので補足しておくと、「PM履歴全体として5つのプロセス郡全てを経験する必要があるが、個々のプロジェクトで見ると経験していないプロセス郡があってもいい」ということです。つまり「初めてPMとしてアサインされたプロジェクトでは立ち上げには関わらなかったけれど、その後のプロジェクトでは全ての工程を任されるようになり、最近のプロジェクトでは立ち上げにしか関与していない」のような関わり方であっても問題ないということです。また3.の「期間の重複不可」は意外と要注意で、「実際にPM経験の棚卸しをしてみたら多くのプロジェクトの期間が被っており、4500時間の条件を満たしていない」というケースも考えられます。そうならないように自分のPM履歴の棚卸しを行っておくことは非常に重要なのです。
受験申請で最も面倒なこと
それはズバリ、PM履歴の個々のプロジェクについて以下の情報を申請する必要があるということです。
- 開始年月日と終了年月日
- どのプロセス郡に何時間携わったか
- 英語でのプロジェクトの概要説明
1. はそもそも、自分の経験したプロジェクトがいつ始まっていつ終わったかを日付ベースで覚えている人はいないのではないでしょうか。私の場合は会社の工数管理システムを使用してプロジェクトの終了期間を調べましたが、プロジェクト履歴を管理している部署に同情報の閲覧を依頼する必要があり、手配に時間が掛かったものです。2. もかなり曲者で、そもそもPMPを取る前のプロジェクトの工数をPMBOKのプロセスベースで管理していることなどまずあり得ません。こちらも会社のプロジェクト履歴を引っ張り出し、「このプロジェクトのこの工程はPMBOKのこのプロセスに該当して〜」などかなり細かく対応付けていった事を覚えています。3.も生粋の日本人である私にとってはかなり骨の折れる作業で、Google翻訳にはかなりお世話になりました。
断言しておきますが、これら3つの情報をいきなり思い出して入力することは不可能です。まずは入力に先立ってPM履歴の棚卸しをする事は必須です。私の場合はこのようなExcel表を作成して棚卸しを行いました。受験申請情報としてはかなり細かく整理されており、我ながら上手くできたと自画自賛しています。
これらについてはPMPの受験対策講座で説明がある場合もありますが、通常は「受験者は知っていて当然のこと」として扱われているため詳細な説明がなされることはありません。しかしこの受験申請はPMP受験に当たり以外にコスト(=労力)が掛かる工程であるため非常に重要です。受験直前になって慌てないためにも、またPMPの受験者たるものPMP受験をプロジェクトと見立て、計画的に取り組みたいタスクです。
次回予告
次回は大詰めを迎えた私の受験勉強についてご紹介します。ここまで読んで下さった方々に感謝します。