10月23日に発売となりました僕らの拙著「ソーシャルメディア維新〜フェイスブックが塗り替えるインターネット勢力図」もお陰様で上々の滑り出しです。あらためて、このテーマへの急速な関心度の高まりを感じています。
その著書の中でも1章丸々割いて述べているのが「ソーシャルコマース」に関してです。フェイスブックの台頭、その創設者であるマーク・ザッカーバーグの映画(「ソーシャル・ネットワーク」)への注目等と並び、米国グルーポンを筆頭としたソーシャルコマースと呼ばれるベンチャービジネスの急伸が、インターネットやベンチャー周辺に熱をもたらしていることは言うまでもありません。
この「ソーシャルコマース」、本年5月以降は日本でも予想通りの立ち上げラッシュ、早くも乱立水域に入り始めています。 本年中に国内で100サービス程度立ち上がると見ていましたが、おおよそその様な推移だと思います。
そもそも「ソーシャルコマース」とは何であるのか、その定義については諸説混在、何となく定めきれずに言葉がひとり歩きしているのが現状かもしれません。
そこで、「ソーシャルコマース」と称されるものが生まれた(成立した)根底をひも解き、シンプルかつ根源的に定義付けしてみると、
?ソーシャルメディア(そしてその中に存在するソーシャルグラフ)を主体に特定の商品やサービスに関する情報が伝搬される
?その伝搬がPRや集客に帰結した結果として消費者の購買意思決定が促される
?上記?と?のプロセスを通じて特定の商品やサービスに関する話題がソーシャルメディア内で醸成される
ということになると僕は考えます。
もっと平たく言えば、「ソーシャルメディア(ソーシャルグラフ)の影響を強く受けるECの形態」ということになります。
「ソーシャルコマース」は時として「フラッシュマーケティング」などとも称されています。ソーシャルコマースサービス事例として現在目立っている一連のグルーポンモデルの特徴である24時間以内等の時限性、即売性の要素を捉えて“フラッシュ”なマーケティングというところですが、「フラッシュマーケティング」は「ソーシャルコマース」を体現する上での一つのマーケティング形態ではあるものの、「ソーシャルコマース」と「フラッシュマーケティング」は同義ではないと僕は捉えています。それはあくまでも「ソーシャルコマース」を活性化するための一つのマーケティング手法です。
また、現状の「ソーシャルコマース(もしくはフラッシュマーケティング)」はグルーポンモデルの影響もあり、「大幅な割引クーポンを提供するもの」と解釈されている側面が強く、それこそがイコール「ソーシャルコマース」なのだと思い込まれている場合が多い気がします。しかしそれも、「ソーシャルコマース」の上記定義を前提とすると、あくまでもソーシャルコマースの1つの成功パターンとして可視化されたものに過ぎないと思います。
まだ新しい市場で、かつあまりにも急伸的過ぎるがゆえ、「ソーシャルコマース」が秘める可能性に対しては過度な期待と懐疑心が入り混じっている状況かと思いますが、結果的に「ソーシャルコマース」という領域が大きく成長し、次世代のインターネットサービスの中核に位置するものとなる確率は高いと考えています。
ただし現状はそこに至るまでの入り口に過ぎず、「ソーシャルコマース」の本質を良く見据えなければならない時期だと感じています。黎明期において可能性への期待と懐疑の中で乱立し、やがて淘汰とメジャープレイヤーが確立したSNSの市場が時として被ります。
ー 小川 和也
「ソーシャルコマース総論?」へ続く