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電子書籍の未来についての一考察【後編】- 小川和也( @ogawakazuhiro )

2010/09/23 18:53
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「電子書籍の未来についての一考察【前編】」で、電子書籍の可能性を開花させるための重要なポイントは「書籍が電子化されることの必然性」をユーザーに体感してもらうことだと述べました。この後編ではその点について考察を続けてみたいと思います。

電子書籍は、ダウンロードしてすぐ読めること、所蔵スペースが不要であること、書籍の低価格化、アクセシビリティ等のいくつかの特質だけをもっても、将来的に普及する可能性がないとはいえません。ただしそれらが紙の書籍を凌駕し、すぐに取って代わってしまうだけの強いインパクトになり得るかというと、前編でも述べた通り微妙だと感じています。その程度のインパクトで取って代わられるには、現在の紙の書籍が社会で受け入れられてきた歴史と背景は薄っぺらくもありません。

それでもなお書籍が電子化され、電子書籍リーダーで読まれることが一般的になるためには、先の「書籍が電子化されることの必然性」がいくつも顕在化してくる必要があると考えます。つまり、闇雲なデジタル信仰的思考のもとで、単に紙をデジタルに置き換えただけで電子書籍市場が成立するほど人間の志向選択も安直ではないということです。

例えば、電子書籍の先行例として頻繁に挙げられる「電子教科書」、即ち教育利用の領域については、その必然性を叶える一つの解になり得るかもしれません。この領域に関しては賛否両論や課題も様々あるとは思いますが、教材がインターネットと繋がることで情報収集や知識の連鎖性(僕が学生時分に、ある単語の意味を調べるために英語の辞書を引いた際、その単語を含んだ例文やその単語の周囲にある単語も併せてチェックすることが知識増幅に役に立った記憶がありますが、その類いの連鎖性の発展形)を容易くします。さらに電子教科書であれば、自己学習用にテストを内包させたり、音声や動画などを付随させることで、幼児教育から高等教育におけるまで、紙の教科書では実現の難しかった学習効果を付加させることが可能です。この学習効果が広く認知され汎用化すると、やがてある種の“必然性”となり得ます。

この手の“必然性”の解は多岐に渡ると思いますが、今回は「ソーシャル化」という観点にフォーカスして述べてみたいと思います。

そもそも電子書籍のソーシャル化を定義づけるにも一筋縄とはいきませんが、ここでは「インターネットやWebに基づく技術を用いて、書籍を媒介として人と人が何らかの繋がりを享受すること」を前提として考察を進めます。

書籍を媒介として人と人が何らかの繋がりを享受することは、実際既に具現化され始めています。Amazon Kindleの最新版に「ポピュラーハイライト」という機能がありますが、これなどはその端的な事例です。 「ハイライト」は、紙の本で言えば蛍光ペンなどのマーカーを引くように、重要だったり気になった箇所に印を付けておけることに当たりますが、この「ポピュラーハイライト」はそのデータを他のユーザーと共有できる機能です。この機能を稼働させた状況で書籍を読んでいると、ある特定の箇所を何人ハイライトしているかが表示されます。書籍を友人や図書館から借りたりすると、マーカーが引かれてある箇所は得てして重要性や関心度を示していたりすることから妙に気になったりするものですが、これが電子書籍になるとリアルタイムかつ多数の読者と共有することができます。さらにこのKindleには文書に書き込みができる「ノート」機能が追加されており、これが発展しノートがオープン・共有化すれば、ある文書を基点に様々な肉付け的知識や感想も共有することができます。読書は一人で楽しむのと同時に、感想や知識を人と共有することがつきものという性質を持ち、これは読書においては根源的な性質であると思います。Kindleのこれら機能は電子書籍のソーシャル化の一端に過ぎないかもしれませんが、これらが発展し、書籍(読書)を基点とした人と人の様々なつながりが演出されれば、書籍(読書)における新たな価値創造をもたらす可能性があります。電子書籍特有の何かが書籍(読書)が持つ可能性に新しい道を開くとすれば、それはまさに書籍が電子化されることの“必然性”に値すると考えます。ちょっと土台は違いますが、ゲームがソーシャル化したことにより新たなゲーム市場が生まれ、それが巨大化している現象などにもヒントが含まれているような気がします。

さらに、電子書籍のメリットの一つとして、印刷・在庫・流通コストがかからないことで絶版を減らせることを前編で挙げましたが、電子書籍であれば絶版を回避できる書籍があったり、書店では置かれることが難しい趣向性の高い書籍などが電子書籍化されることにより、書籍の多様性を紙の書籍以上に確保することが可能です。ソーシャルメディアが発達し、人と人との情報伝搬量が従前以上にボリュームが増えると、この種のマイナーな書籍にも人の言及がなされ、スポットがあたることも起こり得ます。先の電子書籍のソーシャル化とは観点が違いますが、派生してソーシャルメディアの発達という点から電子書籍の可能性を考えた場合、従来書籍として生存ができなかったものをソーシャルメディア時代が電子書籍という形で生存させることができるのではないかという視点も生じます。これも一種の書籍が電子化されることの“必然性” に繋がって行くのかもしれません。- 小川 和也 

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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