前回に続き、私がcnet Japanブログで2022年(昨年)1月から12月までにさまざまな情報から独自の目線で紹介してきた100記事を中心に「2022年のトレンド」を象徴するできごとを、ここで紹介しきれなかった記事も含めてピックアップしてみたいと思います。
昨年1年間に私がラジオ放送やその他のメディアで紹介するために書いた記事は全部でちょうど100記事。その内訳はおおよ以下の分類(図を参照)
- AI(人工知能)関連:19件
- NFT/メタバース、放送通信、コミュニケーション関連:17件
- 宇宙関連:14件
- バイオ関連:16件
- ロボット・ドローン・流通関連:13件
- その他:21件
前回は、AI(人工知能)関連、NFT/メタバース、放送通信関連をご紹介したので、今回は宇宙関連、バイオ関連の象徴的なできごとをピックアップしたいと思います。
◆2022年は宇宙新時代の幕開け、、、
昨年の宇宙関連の話題といえば、いよいよアポロ11号が月面に着陸した1969年7月20日から53年を経てふたたび月面着陸を試みる「アルテミス計画」がスタートした記念すべき年です。ブログではそれに先立ちさまざまな宇宙関連記事を紹介させていただきました。
22年09月09日のcnet Japanブログ
https://japan.cnet.com/blog/natsuhiko_tsuchiya/2022/09/08/entry_30030161/
では
◆宇宙で長期活動する際に酸素はどのように供給しているのか、、、
についてNASAは、8月31日、火星探査車「パーサビアランス」に搭載された酸素資源活用実験機「MOXIE」を使い、火星で二酸化炭素を主成分とする大気から酸素をつくる実験が成功したと発表したことを紹介しました。また、
22年10月26日のcnet Japanブログ
https://japan.cnet.com/blog/natsuhiko_tsuchiya/2022/10/25/entry_30030164/
では、
◆米大学が月の砂で植物栽培に成功、世界初、、、
◆宇宙ステーションにヒルトンホテルが建設される、、
◆電力をワイヤレス伝送する宇宙太陽光発電プロジェクト。試作機がまもなく軌道へ
などの記事を紹介。特に宇宙ステーション建設にヒルトンホテルが関わるというニュースは宇宙が民間にどんどん近づいていることを象徴する話題だったと思います。ここで紹介しきれなかった話題として改めて2022年を象徴する「宇宙関連の話題」を紹介します。
◆アポロ計画以来の月面探査「アルテミス計画」第1弾が無事打ち上げ成功!!
NASAは11月16日、米アポロ計画以来、約半世紀ぶりに人類を月面に送る国際月探査「アルテミス計画」の最初のミッションとして新型の巨大ロケット「SLS(スペース・ローンチ・システム)」初号機を米フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げ成功しました。これには月の周回軌道に到達する「オリオン宇宙船」が搭載されているほか、JAXAが投入した月面着陸を予定している「オモテナシ」と「エクレウス」2基など世界各国の小型探査機も搭載されているんです。
ところがロケット発射後宇宙空間に分離はできたものの、「オモテナシ」のほうが途中から通信が途絶え、今現在も操作不能の状態が続いているそう。「オモテナシ」は世界最小の「月面着陸機」でその大きさたるや「大きめの靴箱ほどのサイズ」だそう。11月21~22日にかけ、月の赤道周辺に時速180キロ・メートルで降りる計画なんだそうですが、充電もされぬまま内蔵された機器も十分に起動していない様子ですが予定通りの軌道は飛行しているということでこのまま22日未明ごろの月着陸を目指すそうです。
当時JAXAプロジェクトチームが太陽電池が太陽の方向を向くよう姿勢制御の指令を送信中でこれがうまくいけば内蔵機器が起動でき月着陸も可能となるとしていたものの、結果操作不能となってしまいました。因みにもうひとつの「エクレウス」のほうは問題なく月に向かって進んでおり、1年半かけ、地球から見て月の反対側の重力バランスが安定している地点に着陸させる計画。
そんな中、日本のispace社が計画している月面探査プログラム「HAKUTO-R」の打ち上げもスペースXの「ファルコン9」で11月28日に打ち上げが成功。現在順調にミッションを進めています。このファルコン9にはペイロードと呼ばれるさまざまな搭載物があり、その中にはタカラトミーらが開発した月面探査ロボット「SORA-Q(LEV-2)」やサカナクションの「SORATO」(HAKUTO応援歌)の楽曲音源を収録したミュージックディスクなども含まれています。
◆2022年はバイオでも象徴する話題が続出、、、
つづいて2022年のバイオ関連を象徴する話題としては、このcnet Japanブログでは
22年08月05日のcnet Japanブログ
https://japan.cnet.com/blog/natsuhiko_tsuchiya/2022/08/04/entry_30030159/
の中で
◆韓国で人間の脳細胞に似た新型素子を開発、、、
22年09月09日のcnet Japanブログ
https://japan.cnet.com/blog/natsuhiko_tsuchiya/2022/09/08/entry_30030161/
では
◆遺伝子操作で多くの炭素を取り込む樹木を開発、、、
などを紹介してきました。いづれもドラえもんの世界のような夢の技術の実現でしたね。
そんな中、1年を象徴するバイオ関連の話題としてはこれしかないでしょう。
◆世界初!人間に豚の心臓を移植、、、
アメリカ・メリーランド大学は2022年1月10日、重い心臓病の男性に、免疫拒絶が起きないよう遺伝子操作したブタの心臓を移植したと発表しました。これまで脳死状態の人に豚の腎臓を移植することに成功したという例はありましたが、生きた人間に移植した例は世界で初めてだそうです。
豚の臓器は以前からも臓器の大きさ,繁殖力,臓器の解剖学的類似性などから人間への移植が研究がなされてきましたが、異種移植だと拒絶反応が大きくまた内在するレトロウイルスが人間にどう影響するのかなど課題が多く、成功に至った例はありませんでした。執刀したメリーランド大学のバートリー・グリフィス博士は、今回の手術に先立って、過去5年間かけて豚の心臓を猿に移植する実験を50回ほど行っていたといいます。その経験から拒絶反応を起こす要因を遺伝子操作で取り除くことに成功。今回の移植に至ったということです。手術を受けたデービッド・ベネットさん(57歳)は「死ぬか、この移植手術を受けるかどちらかだった。私は生きたい。いちかばちかなのは分かっているが、これが私に残された最後の選択だった」と話したということです。
因みにこの手術ののち、デービッド・ベネットさんはなんとNFLのスーパーボウルを観戦までするほど元気を取り戻したんだそうです。ただその後3月に病状が急変して帰らぬ人となりました。アメリカの統計によれば、現在臓器提供を待つ患者は全米で11万人に達し、毎年6千人以上が臓器移植を受けられずに死亡しているそうです。このまま問題が起きずこの手術に成功との結論が出れば、慢性的な移植用臓器不足問題の解決に多いに役立つことになります。
以上2022年を象徴する話題を私が書いてきた100記事の中からピックアップしてご紹介してきました。
さて「CNET Japan ブログ」ですが、今月1月末でCNET Japanでのお役目を終え、クローズすることになったとのことです。私が2010年6月から記事を執筆してきたこの「放送と通信の地殻変動」も、次回の1回を残して1月末で終了いたします。ご愛顧いただいた皆さんに感謝します。執筆活動は今後もどこかで続けていこうかと思っておりますので見かけた際はどうぞよろしくおねがいします。