FIFAサッカーワールドカップでのブラボーなサムライジャパンの面々の活躍、凄かったですね。ご存知のようにABEMAではワールドカップの全64試合の無料生中継を行い(現在も継続中)、前回も書きましたが、日本対ドイツ戦で視聴者数1000万人を超え、続くコスタリカ戦では1400万人、スペイン戦では1700万人、そしてベスト8を賭けてのクロアチア戦ではなんと入場制限ありで2300万人を突破。テレビとABEMAの視聴者比率でもテレビの1.6倍がネット視聴に流れ込んだと発表しました。まるでGoogle DeepMind社の「AlphaGo」が韓国のイ・セドル氏を破った(2016年)ときのような時代の進化を感じますね。まさに「放送と通信の地殻変動」を仕掛け続けてきた我々にとってついに来たかという感じです。
こうなってくると放送と通信の境目がなくなり、視聴方法の変化による法改正などさまざまな変革が必要になってきます。蒸気機関車の発明で町と町がつながり(第1次産業革命)、電気や自動車、飛行機の発明で国と国がつながり(第2次産業革命)、インターネットで人がつながり(第3次産業革命)、そして第4次産業革命と呼ばれるこれからは、あらゆるものがインターネットにつながって機械同士も会話ができるようになる。この時代にメディアはどうあるべきなのか。電波を扱う特別な権限を与えられたテレビ局やラジオ局のような大掛かりな組織が今後も複数必要なのか。WEB3やDAOといった考え方もメディアに取り入れるべきなのか。もう少しみなさんと考えていきたいと思っています。
そんな中、AIは一足先に変革が起こり始めています。AIが完全に人間を超えるシンギュラリティは2025年と言われていますが、それを待つまでもなくAIを扱う上でのガイドラインや法改正は着々と進行中。今回は最近の話題からAIのこれからを考えます。
◆AI人工知能で養殖した幻の「スマガツオ」が食べられる・・・
ついにAI人工知能が日常生活を豊かにし始めています。回転寿司チェーン「くら寿司」は、AI人工知能を活用して全身トロともいわれる幻の高級魚「スマガツオ」をスマート養殖で育て上げ、12月2日(金)より全国の「くら寿司」で販売を開始。「スマガツオ」の全国展開は回転寿司チェーンで初。一貫165円で12月15日までの限定販売だそうです。
スマはインド洋や太平洋の熱帯・亜熱帯域に広く分布する南方系の魚類で、天然の水揚げ量は極めて少なく、大都市の市場にはほとんど出荷されない幻の高級魚と言われているそうです。そんな魚をなぜ養殖できたのかというと、いけすに取り付けたカメラから餌やりのタイミングやどんな餌に食いつくのかをAIで解析。これによって出荷できるまで数年かかっていたのがわずか半年で成長させることに成功したということなんだそう。
「スマガツオ」は味は確かに「カツオ」だが、中トロみたいに口溶けが良くてこれまで味わったことのない「幻」の体験ができると大人気。「くら寿司」はこれまでにもエサに柑橘類のオイルや皮などをまぜて生臭さを消すことに成功した「みかんぶり」や「みかんサーモン」などの「フルーティーフィッシュ」でも大成功を収めているだけにこの「スマガツオ」は注目。AIを活用した農産物・水産物の養殖や品種改良は極めて重要な分野なだけにガイドラインの整備も必要になりそうです。
◆ついにAIで創作した小説の「文学賞」が発表された・・・
画像生成AIが登場してAIが芸術の分野とどう接していくか問われていますが、そんな中10月31日、都内で「第1回AIのべりすと文学賞」の授賞式が行われ、最優秀作品として高島雄哉氏による「798ゴーストオークション」が受賞、賞金50万円が贈られました。同作品は「AIのべりすと」という文章生成AIサービスを活用して作成され、AIがアート界を支配する近未来を描いた作品に仕上がっているといいます。主催者は音楽雑誌「ロッキング・オン」の創刊メンバーで、株式会社デジタルメディア研究所所長の橘川幸夫氏。
「AIのべりすと」はクリエイターのSta氏がGoogleツールなどを活用して開発した数行の文章を入力するだけで小説らしい文章が自動生成できるもの。だれでも登録して利用できる文章生成AIで、昨年公開され現在約30万人の登録者がいるそうです。
「第1回AIのべりすと文学賞」は今年の2月から6月に募集され、「AR三兄弟」の川田十夢さんや、アニメプロデューサーの竹内宏彰さん、作家の田口ランディさんなどが審査し、389作品の応募作品の中から最優秀作品(大賞)などが選ばれたということです。
主催者の橘川幸夫氏によれば「インターネットに頼り切った物書きは薄っぺらいものになってしまう」と前置きした上で「ネットとリアルをうまく組み合わせて(途中省略)人間と情報システムの新しい関係によって、私たちの新しい世界を開いていきたい。」と話しています。
因みに応募作品は10代から70代まで幅広い世代から多岐のジャンルに渡り、受賞作には小説だけでなく短歌も選ばれたそうです。今後「AIのべりすと文学賞 作品集」として書籍化する計画ということです。
◆人間はAIの創作物か人間の創作物かを見分ける力はない、、、
因みにこうしたAI生成作品を人間が見分けられるかを問うた実験が京都で行われ「不可能」という結果だったそうです。京都大学の研究チームは「人間はAIが作った俳句と人間が作った俳句を見分けられない」という研究結果を発表しました。
京都大学の「人と社会の未来研究院」の上田祥行講師らの研究チームは、AIが作成した俳句からAIが無作為に選んだ20句、人間3人が選んだ20句、そして小林一茶や高浜虚子ら俳人の作品40句から、一般男女385人にどれが「美を感じる」かなど7段階評価をしてもらった結果、人間が選んだAI俳句が4.56点で最も美しいと評価。つづいて俳人の作品(4.15)、AIが無作為に選んだ俳句(4.14)となったそうです。さらにその句が人間が作ったものかAIが作ったものかを問いた結果は「見分けることはできない」人がほとんどだったということです。
上田祥行講師は「意外な結果が出たが、AI俳句の質が高かったことに加え、俳句は文字数が少なく、一見して意味が通らなくてもイメージを膨らませて鑑賞したからでは、、、。」と分析しているということです。AIが作った絵画なども含め人間が見分けることはほとんど不可能なレベルに達している昨今、AIはあくまでペンや絵筆や校正ツールなどと同じ「ツール」のひとつとみなすのかどうかが焦点となりそうです。どちらにせよ人間の創作意欲をAIが摘んでしまうようにならないことを祈るばかりです。
◆文章生成AIを小論文提出に使った学生は悪なのか、、、
しかしながら文章生成AIに関しては、祈るなど、おちおちしていられない事件が勃発です。ある中学校ではこうしたn文章作成ツールを生徒が使って小論文を作成。いったんは受理されましたがその後AIが創作したものと判明し、これを提出物として扱うのか否かで議論が始まっています。
そもそも読書感想文やテーマによる小論文などは、作者が何らかの情報源を組み合わせて文章を作り出す事が多いもの。決して良い作成方法とは言えないものの、そもそも文章の作成のためにさまざまな情報収集を行うことは日常的に行う行為でもあります。これをAIは模倣していると言ってしまえばそれほど酷い話でもないように感じてきます。ただ人間が情報収集すれば本人に何らかの記憶が残りますがAIにやらせてしまえばまったく作者の記憶には残らない。ただそれも昔は歩いて情報収集していたことが、今では検索して収集することがあたりまえの時代。検索プラス文章化をAIにやらせて何が悪いといった考えもあるでしょう。
小論文の作成や読書感想文の作成の目的は、生徒の文章作成力を高めるために行うものと考えれば、ネット検索は許すにせよ、AIに書かせてしまっては生徒の文章作成力を高めることにはつながらないのではないかというわけです。でもそれも別の見方をすれば、少なくともさまざまな言葉や情報をAIに与えない限り勝手に文章が作成されるわけではないので、重要なキーワードや文脈(コンテクスト)が発想できるのであれば、辞書やネットの情報を駆使して文章を紡いでいくこととあまり変わりないとも言えるのです。
未だこの問題は未解決のようですが「文章生成AI」や「画像生成AI」は限りなく我々の日常ツールとなっていっていくことは間違いありません。こちらも正しいガイドラインを早急にみんなで作っていくことが望まれます。
(出典)
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■スマガツオ:prtimes
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■第1回AIのべりすと文学賞
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■AIのべりすと
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■人間作俳句とAI作俳句の美しさを比較した心理実験(京都大学)