今年もいよいよあと1ヶ月。年のはじめに新型コロナの感染拡大が収束を始めたと思ったら、ウクライナへロシアが侵攻。日本は歴史的な円安を記録するとともにロシアからの原油高騰などもあって物価も上昇。給料は相変わらず低迷しこの30年生活レベルが全く上がらない。政府で言えば大臣の辞任が相次ぐ上に岸田総理の領収書の不適切処理まで明るみに。岸田政権の支持率が30%を切る中、旧統一教会問題解決のための被害者救済新法はいつ成立するのか成立しても問題解決するのか。FIFAサッカーワールドカップ日本xドイツ戦で奇跡的な逆転勝利を収めたのが唯一の嬉しいお知らせの日本。
ということで今回は久々に私の専門でもあるメディアの進化、放送と通信の地殻変動に関する最新事情に注目してみたいと思います。いよいよこのブログを書くにあたって掲げたこのテーマも完結に向かっているようです。
◆W杯ドイツ戦でネットがついに地上波を上回ったか、、、
2016年4月開局のインターネットテレビ局「ABEMA」が、先日行われたFIFAサッカーワールドカップのライブ中継で開局以来の最高視聴数を達成したとの情報が入ってきました。
まず22日に行われたアルゼンチン-サウジアラビア戦が終わって社長の藤田晋氏は「先ほどのアルゼンチンxサウジアラビア戦で、ABEMA史上過去最高視聴数記録を更新しました。皆さま、ご視聴ありがとうございます」とツイッターに投稿。その翌日の日本xドイツ戦でさらにその記録を更新し、開局史上最高となる視聴者数1000万人突破したと発表しました。
「ABEMA」ではこれまでも「亀田興毅に勝ったら1000万円」(2017年5月)では1420万視聴、元SMAPの新しい地図」3人が登場した「72時間ホンネテレビ」では7400万視聴という数値を発表していました。ただこれは延べ視聴者の人数で「亀田興毅・・」では5時間、「72時間・・」ではトータル72時間ののべ人数(同じ視聴者が何度もカウントされている)でした。なので純粋な「視聴者数」となると100万〜200万人と考えられていました。その数値が今回は1000万を超えたということなんです。
そしてこれまでともう一つ違うことがあります。「亀田興毅・・」や「72時間・・」は「ABEMA」独占の配信番組だったの対し、今回の「FIFAサッカーワールドカップライブ中継」はNHKなどの地上波などでも放送されていた非独占配信です。NHKはNHK+でインターネットでも同時配信もしていましたし、視聴者はどれで見ても良かったわけです。そんな状況の中の「最高視聴者数獲得」ということなんです。
これはどんな意味があるのか。実は「ABEMA」での実況解説が本田圭佑氏のツイッターも連携してのものだったということが大きく影響しているという分析になっています。これは他局では見れないものだったとブロガーの徳力基彦氏も解説。また「ABEMA」で見ていると現在の視聴者数がリアルで表示されているため、これが視聴者に臨場感を与えていたことも大きかったのではないかというコメントも多数書かれていました。実際「ABEMA」とNHK(テレビ)の両方で視聴していた知人は「ABEMAの視聴者数の上下がゲームを更に盛り上げる」とツイッターで叫んでいました。
「ABEMA」は「新しい未来のテレビ」というスローガンを掲げています。PCはもとよりスマホやタブレットがあればどこでも動画視聴ができる現在、地上波のチャンネルを含めたライブ動画やオンデマンド動画を視聴するとき、みなさんはどれを一番活用しているでしょうか。少し前まではまだテレビでの視聴がほかを上回っていたと思うのですが、2022年の冬現在、少なくとも私の日常において、TVerで地上波の見逃しを視聴、相撲はほぼNHK+、映画や海外ドラマはNetflixやDisneyチャンネルで、地上波テレビの出番が全くありません。
さらに今回「ABEMA」ではサッカー中継に高画質な4つの視点を選択できるライブ中継を実現。「新しい未来のテレビ」はもう日常になっていると言っても良いかもしれません。
◆民放各社がついに地上波同時生配信を開始、、、
振り返れば今年の4月にこんなニュースがありました。
4月11日からフジテレビやテレビ東京などの在京民放キー局が、テレビ番組を放送と同時にインターネットでも見られるようになったんです。これまでは、地上波での放送が済んでからのオンデマンド配信としてインターネット配信は行われていましたが、これからは電波でもネットでも手段を選ばず、テレビ放送が見られることになります。
ただしすべての番組がいきなり同時配信されるわけではありません。当面は、夜6~7時以降に放送される「ゴールデンタイム」「プライムタイム」と呼ばれる時間帯の番組が対象。同時配信のためのサービスプラットフォームは「TVer」。見逃しも同時配信も利用は無料。またこれまでの地上波放送では、地域によってキー局が異なり放送内容も違っていましたが、居住エリアに依らず、好きな番組をリアルタイムで楽しめることになります。
これは放送業界にとっては画期的なこと。放送も配信も「ひとくくりのメディア」と考えて良いということになったというわけです。
◆NHKが見られないテレビなら視聴料は取られない、、、
さらに放送と通信の地殻変動は活発化していきます。
「NHKをぶっ壊す!」で見事に議員を送り込んだNHK党ですが、見たくない人からも視聴料を取るべきではないという訴えなのですが、だったらNHKが見られないテレビがあればいいわけです。実は今年の7月にはすでに実現していました。
ビデオレンタルショップ大手の「ゲオ」はなんと、NHKが映らないスマートテレビを作って販売をはじめました。NHKが映らないというよりも、そもそも地上波やBSテレビのチューナーが搭載していないというわけです。その代わり、Android TVを搭載したスマートテレビになっていて、YouTubeやNetflix、Amazon PrimeVideo、Disney+などさまざまなネット動画配信サービスに対応。もちろんTVerも見られるので地上波の番組も見ることができます。これでなんとお値段は43V型で3万2780円、50V型が3万8280円!どちらも4K/HDR 10規格対応でテレビとしては破格です。地上波テレビのチューナーがなくなっただけで20万円くらいするテレビが3万円になっちゃうとは驚きです。その上NHKの受信料も支払う必要がなくなります。
このテレビで今回の日本対ドイツ戦はもとより週末の日本対コスタリカ戦も見られます。全く問題ない。問題ありそうなのはこれからの民放。高いCM料金であぐらをかいてきた民放各局はこれからどうしていくんでしょうか。ラジオがRadikoに取って代わってきているように、テレビもTVerなどのサブスク収入で賄う時代になるんでしょうか。それでも面白い番組、新しい番組、新しいスターが生まれるようにしていくことがいまの民放各社に与えられた使命なのではないかと思うのです。