文章を入力するとAIがその文脈を理解して絵を描いてくれるサービスが話題です。
思い起こせばいわゆる深層学習(ディープラーニング)手法が進み、Google DeepMindが開発した囲碁AI「AlphaGo(アルファ碁)」が韓国のプロ棋士イ・セドル氏に圧勝した2016年ころからAIが一気に我々の日常に登場する頻度が増えるようになりました。あれから6年、今やAIが解析した予測は天気予報を始め、あらゆる分野に活用され我々の生活環境を支えるまでに至っています。因みに若干20歳の藤井聡太竜王も自前のAI将棋盤で日々AIが解き明かす手を覚えまくっていると聞きますし、またウクライナのロシア侵攻においては敵国の暗号通信内容を解読したり兵士の身元を特定するなどAIなしには進まない状況だといいます。
ただAIは人間の創作物であり、AIの予測値はあくまでシミュレーションされた計算結果であって、その結果を人間がどのような責務を担えばいいのか、新たな問題も山積しています。最近のAIの話題を事例にAIの現状における課題をピックアップしてみました。
◆楽して文豪に!?文章の続きを書いてくれるAI、、、
Webサービス「AIのべりすと」は、ユーザーが冒頭の文章を数行書くと、その続きをAIが作文してくれるサービスです。例えば「吾輩は猫である。名前はまだない。そんな吾輩は今・・・」と書いてAIにその続きを書くように指示をすると、、、数秒たって「そんな吾輩は今、とある人物を尾行している最中だ。その人物は街中をキョロキョロと落ち着きなく歩き回りながら辺りを見回している。まるで誰かを探しているような動きだ。「…………ふむ」さてどうするか?・・・」と続きが創作されました。これはランダムで二度と同じものは出てきません。さらにボタンを押せばどんどん次の物語が書かれていきます。ちょっと求めているものと違うなと思ったら「リトライ」を押せば、もう一度別の物語が創作されます。
ボタンは「AIに好きに書かせる」のほか「セリフを優先」や「文章優先」を選択できたり、リトライのほかも「アンドゥ(1つ戻す)」や「もとに戻す」なども自由に選択できます。ほかにも「繰り返す言葉を出さない」とか「AIの読み取る文字数を増やす」「この言葉は使わない」さらには「こういうことばを散りばめたい」など細かい設定ができるようになっています。ちなみに利用規約としてここで作られた文章は創作した人のものになるそうです。ここが大事。AIが創作したとはいえ、AIに指示したのは人間なのでその人間が創作者と認識されるとなっていればみなさんも安心して創作に励むことができますね。
◆誤審をストップ!FIFAがオフサイドの判定にAIを採用、、、
スポーツ競技では、人間の審判員だけでは判断しにくいときのために「ビデオ判定」を導入することが多くなってきていますが、国際サッカー連盟(FIFA)は、オフサイド判定においてAI(人工知能)を駆使する新テクノロジーの導入を発表しました。
今回適用されるのは「半自動オフサイド判定システム」と呼ばれるもので、各選手の手と足にセンサーが取り付けられて毎秒50回、最大29個のデータポイントから情報を収集。リアルタイムで選手がオフサイドにあたるかどうかを自動判定できるというものです。スタジアムには10~12個のカメラが新たに設置され、AIが常時、人の動きを監視することになります。AIによるオフサイド情報は警告として送られますが、最終的にはそれを判断するのは審判員や監督など人間に委ねられます。
2021年11月30日にカタールで開幕したアラブカップから試験運用を開始。問題がなければ本編W杯本大会でも採用される見通しだということです。
◆その流れは完ペキン!?北京冬季五輪でAIが大活躍、、、
今年2月に行われた北京2022冬季オリンピックでは日本は「金3銀6銅9」合計18個のメダルを獲得し過去最高となりましたが、競技を支えたテクノロジーもすごかったんです。
まず羽生結弦選手がチャレンジした「4回転アクセル」。成功はしませんでしたが世界で初めて記録に「4回転アクセル」が残りましたよね。でも我々が見ていて本当に4回転回ったのか、前から踏み込むアクセルになっていたのかなど見た目だけでははっきりしないときもあります。それをカバーしていたのが「中国フィギュアスケートAI支援採点システム1.0」というシステム。画像分析とディープラーニング(AI技術)を組み合わせ、動画から判別する人体の骨格や動作から識別して機械的にスコアリングができることはもちろん、選手にアドバイスまでできるそうです。今回さまざまな実績ができたということで、引き続きバージョンアップを行っていくことになったそうです。
同様に短時間に高速回転を行うスキーフリースタイルでもバイドゥ(百度)が開発した「時空定格」テクノロジーが使われたそうです。「時空定格」テクノロジーとは選手の連続した動きを3D空間でフレーム化し、大事な瞬間を360度から確認することができるもの。この技術は夏季オリンピックの飛び込みや卓球の中国代表選手のトレーニングなどにも活用されているそうです。
因みにアメリカ大リーグでもAIを活用した「ロボット審判」の導入を検討中で、早ければ2024年から導入される見込みです。スポーツ判定AIは文章や音楽などの創作物を生み出すAIとは違うため、それほど課題はなさそうですが、本格導入された際に選手から異議申し立てが出たときに審判したのが人間ではないためどんな裁判がされるのか注目が集まっています。
◆AIで描いた絵は創作物なのか、著作権は、、、
音楽制作AIという分野もさまざまなツールが登場。古くは「また逢う日まで」や「私の彼は左利き」など数々のヒット曲を生み出した筒美京平氏もそのヒットメロディを生み出すのに当時のパソコンを活用していたと言われていますが、現在、ヒットプロデューサー玉井健二氏がてがける「FIMMIGRM(フィミグラム)」や自動作曲AIと言われる「Amadeus Code AI」などを活用したAI創作楽曲が次々生み出されています。
そしていままさにネットをAI絵画ブームに押し上げている「描画AI」。そもそもAIのディープラーニングを大きく進化させた手法にひとつに「敵対的生成ネットワーク=Genera tive Adversarial Networks=GAN」というものがあるんです。これは例えば犬というお題から「犬」らしい絵を作り出す「贋作士AI」とそれを見破る「鑑定士AI」が競争を繰り返すことで本物そっくりの「犬」の絵ができあがるというもの。これを活用した世界初のAIが描いた「肖像画」はオークションで43万ドルで落札されました。
これがいまや誰でもネット上で簡単に使えるサービスになりつつあります。今年はじめに話題となったのがAIお絵かきサイト「craiyon」。これは文章から画像を生成するAIシステム「DALL・E(ダリー)」をさらに簡単に使えるようにしたものでした。
誰もがさまざまな文章を入力して思い思いの絵を創作していたところ、さらにこのサービスを上回るクオリティを出せるオンライン描画AIが登場しました。これが「ミッドジャーニー(Midjourney)」。
使い方は簡単、「Discord」という汎用SNSサービスに登録したら「Midjourney」サイトからログインし直すと画像生成するための「NEWCOMER ROOMS」が選択できるようになります。これを選択したら「/imagine・・・」と自分が描いてみたい絵に関係するキーワードや文章を「英語」で入力してみてください。
例えば「Ultraman is eating sushi at the sushi bar (ウルトラマンがお寿司屋さんで寿司を食べている)」と入力するとAIが学習したさまざまなイメージを組み合わせて4つの絵に仕上げてくれます。ゴッホ風とか現代アート風とか絵のタッチなども指定することもできます。
できあがった4つの候補の絵から一番気に入った絵を選んで、そのバリエーションをさらに作成したり、絵の精密度をアップさせたりできます。それを何度か繰り返すうちに自分のイメージぴったりの絵ができあがるというわけです。
作ってみた「寿司バーで寿司を食べるウルトラマン」
ここから集中と選択を繰り返すと素晴らしい画像ができあがります、、、
こうしたリアルなAI創作物が作成できるようになってくると次の問題が出てきます。この絵は創作物として認められるのか、そして創作者は誰なのか。いまのところ「Midjourney」には「ユーザーの権利」として「本サービスを利用して作成したすべての資産を所有する」とあります。画像は創作者のものです。ただし「サービス側が自由に使うことがあることがあります」となっているのでAIを所有するサービス側も自由に使わせてもらいますよというところは注意が必要です。勝手にNFTなどにして売ってしまうわけには、いまのところできないかもしれません。
いまのところ「AIで生成された画像に著作権を付与する可能性は低い」けれど「AIが生成した画像に人間が手を加えて制作した作品なら著作権が認められる」可能性があるというのが一般的な見解だそうです。そういえばEVの自動運転で人身事故を起こしたとき、運転手はどんな責任があるかという問題が頭をよぎります。現在確定はされていませんが、運転手の責任はなく、自動車(AI)メーカーの責任になる可能性が高いそうです。
これを「描画AI」に照らし合わせると、盛り上がれば盛り上がるほどAIの製作メーカーも権利を主張することになりそうです。AIと人間が共存する社会がすぐそこまで来ています。
参考:craiyonで作成した「寿司バーで寿司を食べるウルトラマン」
こちらのほうが一発勝負ならクオリティ高い画像ができます。
(出典)
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■AIのべりすとβ2.0
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■半自動オフサイド判定システム
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■中国フィギュアスケートAI支援採点システム1.0
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■AIが創作した世界初の肖像画
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■FIMMIGRM
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■Amadeus Code
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■craiyon
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■Discord公式サイト
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■Midjourney公式サイト