「Web3.0」というキーワードに注目が集まっています。ウエブサイトを個人が誰でも作って発信できるようになった時代を「Web1.0」、続いて発信だけではなくtwitterなどSNSを通じてコミュニケーションできるようになった「Web2.0」時代を通過し、これから期待の「Web3.0」ではどんなイノベーションが起きるのか。一言でいうとそれは「情報や権力の分散化」だと言われています。
これまでの「Web2.0」では情報経路はすべてGoogleやInstagram(Facebook)、twitterなどのIT企業を通して行われています。イーロン・マスク氏がtwitter社を買収して「言論の自由」を取り戻すのかということでも話題になりましたが、巨大企業が情報の送受信の責任を担っている以上、社会に対する責任が企業に集中していることが「Web2.0」の課題でした。これが「ブロックチェーン」などの「分散型情報技術」の普及によって変わろうとしているというわけです。
「Web3.0」になることで「情報や権力の分散化」が行われ、セキュリティレベルが向上、国境を超えた個人同士のコミュニケーションもより安全になり、個人と企業の取引も仲介業者が必要なく安全にできるようになります。これまでインターネットに接続する以上個人情報の漏洩から免れる方法がほぼなかったところが「Web3.0」ではこの問題が一気に解決する可能性を秘めているというわけです。
最近のニュースからそんな「Web3.0」の事例を学んでみたいと思います。
◆イーロン・マスクを超えた自民党の新たな挑戦!?
テスラのイーロン・マスク氏が従業員に週40時間の出社を求めたうえで「もし姿を見せなければ、あなたが辞職したとみなす」と、リモートワークが普及する今らしくない発言をしたと話題ですが、自民党は青年局が開催するさまざまな会議や研修会に出席することを促進させる要素のひとつとして、なんと「NFT(ノンファンジブルトークン)」を発行すると発表しました。「NFT」とは複製ができないトークン=しるしがついたデジタルデータ。これは青年局の活動を通じてNFTやメタバースなどに触れることでいまのうちにWeb3.0に慣れていただくことが目的なんだそうですが、一体どういうことなんでしょう。
青年局に言わせれば、さまざまな勉強会や研修会を開催しているにも関わらず、忙しさにかまけてなかなか参加者が増えないという実情があるようなんです。そこで今話題のNFTを出席した議員に配布することにしたんだそうです。NFT=トークンもらってどうするんだ!?という議員の発言が聞こえて来そうですが、実際のNFTアートや動画などが何億円にもなって取引されているというニュースを黙って見て見ぬふりしているつもりですかというわけです。
研修会ごとの議員の出席トークンをNFTマーケットに出す、それも一人ひとりイラストなども施されていればこれをコレクションするマニアが現れるかもしれません。するとこんなトークンでももしかしたら高値で売り買いされるかもしれないというわけです。これで儲けるかどうかは別として、この一連の動きに直接関わることができれば、今後の「Web3.0」に国がどう対処していけばいいかもいろいろアイデアが出てくるかもしれない、、、こう考えればイーロン・マスクを超えた行為とも評価できるかもしれません。NFTはいまや宝の山、それがわかれば出席率も上がりNFTが一体何なのかも勉強できるというわけです。
国会のデジタル化が進まない原因が議員のITリテラシーの低さを語る人が多い中、こうした動きが効果をあげて台湾のデジタル大臣のオードリー・タン氏やウクライナの最年少副首相兼デジタル相のアレックス・ボルニャコフさんらを凌ぐ政府の方々が登場することを心から待ち望んでいます。
◆NFTが卒業証書に、、、
デザイン専門学校バンタンは3月15日に実施した卒業式・修了式で、国内初であるNFT化された卒業証書を授与したことを発表しました。
通常、卒業証書は紙に印刷された証書に自分の名前が手書きなどで書かれたもので、校長先生などから手渡しされたりするものですが、デザインやアートの世界では、こうした唯一無二の作品をデジタルで扱う場合、NFT化することが始まっていることから、こうしたデジタルの世界を体感するためにも、卒業証書を渡すところにNFTマーケットを選んだということです。
今回の卒業証書には世界で活躍中のアートディレクター岡田喜則さんのデザインが採用され、そこに自分の名前が入っている唯一無二の卒業証書。生徒が作ったアート作品とともにNFTマーケット上に卒業証書がアート作品として並び、もしかするとその生徒の将来性を買って何億円にもなる卒業証書が出るかもしれないというわけです。
今後は卒業証書に限らず、卒業写真、卒業論文、卒業研究などもNFT化されて高額な値段がつくようになるかもしれません。「Web3.0」になることで身の回りのもののデジタル化がさらに進むということにつながっていきそうです。
◆鹿島建設がコンクリートの製造にブロックチェーン採用、、、
先日のcnetジャパンブログでお伝えしたように、ウクライナのデジタル改革省は「ロシアのウクライナ侵攻」に関する様々な記録をNFT化して「Meta History: Museum of War」ギャラリーとして一般公開しています。これは唯一無二のデジタルデータとしてネット上に残り後世永遠に伝えていくものになります。
そんな使い方がある一方、ビルなどの建設に欠かせない「コンクリート」の品質管理に「ブロックチェーン」技術が採用されたというニュースもあります。
大手ゼネコン鹿島建設がブロックチェーンを活用し、コンクリートの製造・運搬におけるCO2排出量を見える化するプラットフォームを開発したと発表しました。コンクリートの製造に関わるCO2排出量を記録することで「地球温暖化対策」を推進できる環境配慮型コンクリートが提供できるとともに、製造から品質管理にいたるまでの工程が「ブロックチェーン技術」で記録されます。
この製造プラットフォームを使うことで、参加企業間での同一情報を共有し、複数の企業によるCO2排出量の重複計上も防止できることを目指しているということです。近年コンクリートの老朽化の見逃しやずさんな取り扱いでマンションや家屋が倒壊するなどの事件が相次いでいます。ブロックチェーン技術がこんなところに応用され始めています。「Web3.0」はこれからの時代の「安心安全の象徴」なのではないかと実感しています。
(出典)
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■自由民主党NFT発行(2022/05/27)
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■【バンタングループ】国内初!NFT化された卒業証書を発行(2022/03/15)
https://vantan.jp/information/press/detail.php?e_id=7570&year=2022
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■コンクリートの製造・運搬におけるCO2排出量を見える化(2022/03/29)