北京オリンピックは、ジャンプ混合団体で日本の高梨沙羅を含む5人が失格となって審判員に脅迫文まで届いたり、フィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ選手が昨年末のドーピング検査で陽性反応だったことが発覚して出場停止になるか注目されるなどいろいろありましたが、これらを上回るさまざまな感動を生み出してなんとか無事閉幕できそうです。
そんな中ウクライナをめぐる欧米とロシアの対立はエスカレートするばかり。アフガニスタンやミャンマーも相変わらず揺れ動いたまま。五輪の目的である「世界平和」は全く担保されていません。いつになったら争いはなくなるのか、どうやったらなくなるのか、SDGsも大切ですがこれと同じような「持続可能な平和目標」を世界で掲げてもらいたいものです。
今回はNTTドコモが1月に発表した「人間拡張基盤」を皮切りに、進む人間拡張技術の話題をピックアップしてみました。こうした技術が世界平和につながっていくことを切に願います。
■ドコモが人間の能力を拡張させる基盤を発表、、、
NTTドコモが今年1月17日から19日までの3日間、同社の研究開発や最新技術などの取り組みを紹介するイベント「docomo Open House'22」を開催し、その中でなんと、人間の能力をITで拡張させる「人間拡張基盤」を発表しました。
これは来たるべき6G時代の通信ネットワークに求められるさまざまな技術を活用して人間の能力を6Gネットワークで拡張させようという試み。例えば、脳波を通信ネットワークにつなぐことで、遠隔地でのロボット作業を自宅にいながら考えるだけで操作できるようにしたり、人と人をテレパシーのように以心伝心させてある人の動きを経験値として別の人に伝えることができるようになるそうです。
実際のデモンストレーションでは、一方の人がピアノを弾くと、その人の指の動きがもうひとりの人に伝わって弾けなかったピアノがみるみる弾けるようになったり、プロのウインドサーファーの動きを伝えられたり、6Gネットワークがまるで神経ネットワークになる様子が紹介されたそうです。
こうした研究がすすめば「SFの世界であるようなテレパシーも夢ではなくなる」と世界に先駆けた6Gネットワーク技術を先取りしたいということです。
■僕は死にましぇん!死んだ後も活性化する脳細胞を発見!
「人の死亡判断」は、呼吸停止、瞳孔散大、そして心臓停止の「3兆候」とされていますが、臓器提供の意思がある方の場合は、心臓や臓器が動いていても脳の活動が停止してしまった場合の「脳死」も「死亡判断」のひとつに加えられています。
そんな中2021年3月23日、アメリカ・イリノイ大学シカゴ校の研究チームが医学専門誌「Scientific Reports」に発表した記事によれば、心臓が止まって血液による酸素供給がなくなると、大半の細胞が活動を停止する中、脳の神経系を構成する「グリア細胞」において死後最大24時間にわたって長い腕のようなものを発芽させ活性化する兆候が見られたと発表。死後にグリア細胞を活性化させた遺伝子群は「ゾンビ細胞」と言われ、これまでも人間の体内での存在は確認されてきましたが、脳内にも存在することが明らかになったのは今回が初めてということです。
これまでのヒトの脳研究では、そのほとんどが死後の脳の検査に偏ってきた、すなわち心臓が止まって脳も死んでしまったあとの状態でしかほとんどの研究がされてこなかったため、こうした「ゾンビ細胞」が脳にも存在することが見逃されてきたそうなんです。今回の発見によって心臓が止まってから例えば24時間以内であれば、死にかけている脳を活性化させる方法が発見できれば脳死をまぬがれることができ、生き返らせる(蘇生させる)ことができるようになるかもしれないというわけです。
現在心停止した患者が蘇生する確率はアメリカでは約18%、イギリスでは約16%という記録がありますが、今回の発見で蘇生率が格段に上がる可能性がでてきたというわけです。
■衰えた脳の神経回路を修復する仕組みを発見、、、
そんな「ゾンビ細胞」が脳にもあることをアメリカの研究チームが発見したら、今度は日本の研究チームが脳に関するすごい発見をしたという話題。
国立精神・神経医療研究センターなどの研究グループは、加齢などによって脳の神経細胞(髄鞘:ずいしょう)が衰える過程で「アペリン」と呼ばれるホルモンが減ってくることを突き止め、アペリンを活性化させることで老いた神経細胞の修復が行われることがわかったと2021年3月16日の「ネイチャー・エイジング」誌に掲載されました。
脳の神経細胞(髄鞘:ずいしょう)が衰えるのは加齢ばかりが原因ではなく、多発性硬化症や脳梗塞、アルツハイマーなどでも起きることがわかっており、今回の発見で「アペリン」の働きをさらに詳しく調べることでこうした疾患すべての治療に役立つ治療薬の開発が可能となりそうだということです。研究グループの村松里衣子部長によれば「アペリンは通常脳以外の臓器で作られており、さまざまな脳の疾患が他の臓器に助けられるかもしれないとは非常に興味深いことです」と話しているそうです。
脳などの人間の器官を拡張させて人間を進化させることと、IT技術を人間と同期させて人間を進化させることは同時並行で進んでいます。
(出典)
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■6G時代の新たな提供価値「人間拡張」を実現する基盤を開発(2022/01/17)
https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2022/01/17_00.html
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■イリノイ大学ニュース「‘Zombie’ genes?」(2021/03/23)
https://today.uic.edu/zombie-genes-research-shows-some-genes-come-to-life-in-the-brain-after-death
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■老いた脳の修復力を回復させるメカニズムを発見(2021/03/16)