新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の猛威も収束が見えないまま、2月4日北京オリンピックが開幕。スピードスケート日本代表のヘッドコーチが現地で陽性反応が出て隔離されたり、日本人選手の中からも陽性者が出たり(その後陰性となり選手村へ)不安が募りますが、東京オリンピック以上の厳格な「バブル方式」がとられるなど異例の厳戒態勢での開幕だそうです。また中国のウイグル自治区における人権問題を理由に参加をボイコットした国や選手もいる今回の冬季五輪ですが、何か本来の五輪の目的である「世界平和」から遠ざかっている感じがしてなりません。無事に17日間の日程が進むことを祈ります。
そんな中前々回からお伝えしているように、昨年末に岸田首相は「宇宙開発戦略本部会議」の中で日本の宇宙事業に向けた基本方針を打ち出しました。12月8日にはZOZO創業者の前澤友作さんが日本人の民間人で初めてISS国際宇宙ステーションまで到達し12日間の滞在を果たし、日本も本格的な宇宙事業に国を上げて乗り出そうという状況。今回も引き続き今年を担う宇宙の話題を紹介します。
■まるでSF!?レーザーで動画や写真を宇宙から送信できる!?
民間宇宙旅行が始まる中、NASA(アメリカ航空宇宙局)は昨年12月7日、「レーザー通信中継実証装置」搭載の人工衛星を積んだロケットの打ち上げに成功したと発表、この人工衛星でなんと、レーザー光を使った通信実験を行うことになります。
現在人工衛星と地上の連絡手段は、あたりまえですが、電波を使った通信システムになります。これに対して今回搭載された「レーザー通信中継システム」では赤外線レーザーを使って通信を行うということで、インターネットがダイヤルアップから光回線に変わるくらい劇的な通信速度の向上が見込まれるそうです。
ご存知のように透明なファイバー素材の中に光を飛ばして通信を行ういわゆる「光通信」は我々の生活にはなくてはならない通信手段のひとつですが、この光通信をファイバーなしで空中を飛ばす「光無線通信」にしようとするといきなり思う先に到達させるのが難しくなるという性質があるんです。SF小説や映画ではレーザービームで何百メートルも先の的を燃やしたりする場面が出てきますが、的に集中させるのがとてもむずかしいのです。今回の実験はそれを技術でついに克服させるというわけです。
まだ実験段階だそうですが、このレーザー光無線通信が使えるようになれば、地上とISS国際宇宙ステーションまでの約3万5千メートルを毎秒1.2ギガバイトのスピードでデータを送信可能、つまり現在の5Gレベルの通信が3万5千メートル離れていても中継点なしに伝えられるようになるというわけです。
ちなみに現在火星にある探査車パーセべランスから発信される電波だと完全な火星地図の送信に要するのに9週間かかるそうなんですが、これが赤外線レーザー通信になればわずか9日で届けられるようになるそうです。実際に宇宙ミッションの支援を開始できるようになるまでには2年間の試験や実験が必要だということですが、火星に人類が到達する2033年ころには数分で連絡が取れるようになるかもしれませんね。
■人工網膜を宇宙で製造する理由って何!?
失明した方に再び光を感じ、ものが見えるようにするための「人工網膜」の研究や製造は世界中で行われていますが、厚みが髪の毛ほどしかない薄くて小さな場所に無数の視覚細胞がきれいに並んでいる必要があるため製造には限りない精密性が必要とされているそうなんです。そんな技術を容易にする試みとして国際宇宙ステーション(ISS)の活用に挑戦している企業がいます。アメリカのバイオテクノロジー会社「ラムダビジョン(LambdaVision)」です。
「ラムダビジョン」は「バクテリオロドプシン」という光に反応する微生物を人工網膜上に正確に並べるためには微小重力環境下が最適だと考え、なんと昨年12月21日、SpaceXのロケット「Falcon9」に載せてISS(国際宇宙ステーション)に届けることに成功。現在ISS内にて人工網膜の製造実験が行われているということです。これで人工網膜がうまく製造できたら、宇宙(ISS)が製造拠点になるというわけです。
現在網膜の変性疾患で失明したり視力を失った方はアメリカで約10万人、世界ではなんと150万人とのこと。多くの患者さんを救うためには宇宙事業の拡大も要素の一つなんですね。
■前澤氏も刺激!?最年長記録!スタートレックのカーク船長が宇宙へ!?
昨年7月20日、宇宙船「ニュー・シェパード」による初の有人宇宙飛行を成功させた、アマゾン創設者のジェフ・ベゾス氏率いる「ブルー・オリジン」ですが、今後も「ニュー・シェパード」を活用した宇宙旅行を随時実施していくと発表していました。
そんな中10月12日に2度目の「ニュー・シェパード」打ち上げでそこになんと初代「スタートレック」の船長を演じたアメリカの俳優であるウィリアム・シャトナーさん(90)が搭乗しました。「ニュー・シェパード」での宇宙旅行は、前回同様、6人乗りのクルーカプセルを地上約100キロの宇宙空間まで上昇させ、カプセル部分だけ残して発射部分は自動的に発射基地に戻り、カプセルはその後宇宙空間で無重力状態を約3分間体験したのち、自然落下してパラシュートで地上に帰還するというもの。料金は一人当たり約20万ドル(約2200万円)。
7月の初飛行でもかつて宇宙飛行士の訓練を受けたパイロット女性のウォリー・ファンクさん(82)が搭乗して高齢者記録を更新しましたが、シャトナーさんの搭乗で最年長記録がさらに更新したことになります。
一方ロシアでは昨年10月5日、ソユーズ宇宙船「MS―19」の打ち上げに成功。この宇宙船の乗組員には、ロシアの人気女優のユリヤ・ペレシリドさんと監督のクリム・シペンコさんが参加。女優のペレシリドさんと監督のシペンコさんは、約4ヶ月の訓練を受けてソユーズ船に搭乗し、ISS国際宇宙ステーションに到着後12日間滞在。その間に世界初の宇宙空間による映画撮影を実行し、その後帰還にも成功。映画のタイトルは「Challenge(挑戦(仮))」ということで、女性医師が宇宙で様々な試練に遭遇するというストーリーだということです。そういえば以前からトム・クルーズさんによる宇宙ロケも発表されていましたが、残念ながら先を越されてしまったようです。
ところで前澤友作さんは、昨年は宇宙に行けたので今年はその逆の深海に潜ると冒険心を覗かせていますが、今年も有名人や大富豪がどんどん宇宙に行って宇宙事業の発展を盛り上げてくれることを期待します。
(出典)
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■NASAのレーザー通信技術衛星の打ち上げ(2021/12/14)
https://www.sed.co.jp/contents/news-list/2021/12/1214-1.html
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■NASA’s Laser Communications Tech, Science Experiment Safely in Space(Dec 8, 2021)
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■ラムダビジョン(LambdaVision)